芥川龍之介『杜子春』解説|金持ちでも仙人でもない、正直な暮らし。

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解説

杜子春の人間としての成長を、金銭、身体、魂の三位一体で説く。

杜子春の人間としての成長は、若さゆえに都会の中で生きること、そして金だけがすべてだと思い込み、金を使い果たし死のうと思います。

鉄冠子に大金持ちにしてもらいますが、金では満たされないものを知り、同時に、人間に愛想を尽かし厭世的になり、俗世を超越する仙人を目指します。

しかし地獄で苦しみながらも、杜子春を守ろうとする母親の思いに触れたときに金よりも名誉よりも愛情のかけがえの無さに気づきます。

杜子春は母の愛情によって魂を震わされ呼び起されます。

鉄冠子は、杜子春にお金を与え豪奢とは何かを教え、仙人の修行で恐れへの勇気や身体の刻苦を経験させ、そして肉体が朽ちても最も大切なものは善なる魂であることを確認させます。

杜子春は、大金持ちになりぜいたくに暮らす虚しさ、また世離れして思いやりやいたわりの心を失うよりも、愛することの大切さを忘れず、人間として正直に暮らすという生活を選びます。

芥川は、子供たちが徳のある生き方を学ぶことを願っています。

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作品の背景

芥川龍之介の作品を、初期、中期、晩年の3つにわけると「杜子春」は初期の作品になります。大正7年に『鼻』で漱石に絶賛されその後、新聞や雑誌からの依頼が多くなります。このころに鈴木三重吉がはじめた童話雑誌『赤い鳥』の創刊号に『蜘蛛の糸』を寄稿しはじめての児童文学にかかわります。

以後、大正9年に「杜子春」を発表します。李復言の『続玄怪録』及び牛僧孺編の『玄怪録』双方に収録されたとされる伝奇小説『杜子春』を童話化したもので、内容は題材とは大きく異なり2/3以上は芥川自身の創作となっています。

発表時期

1920 (大正9) 年7月、童話雑誌『赤い鳥』に発表された児童向けの短編小説。中国の伝奇小説『杜子春伝』を素材とした作品で、『蜘蛛の糸』と並ぶ有名な童話小説である。芥川龍之介は当時28歳。大正7年2月に結婚、3月大坂毎日新聞の社友となり鎌倉に居を移し、妻と伯母を呼び新生活に入る。この年に『地獄変』『蜘蛛の糸』『奉教人の死』『枯野抄』を発表。大正8年に海軍機関学校を辞し大阪毎日新聞社の社員として専業作家となり、大正9年3月に長男、比呂志誕生。名付け親は菊池寛である。作家として充実していく時期の作品です。