村上春樹『アフターダーク』あらすじ|損なわれたエリと危ういマリを、朝の光が救う。

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作品の背景

『アフダーダーク』は、村上春樹の11作目の長編小説。カメラの目を通して決して干渉することはできずに、ただ観察するという視点を取っている。1995年1月に起こった阪神淡路大震災や3月のオウム真理教による地下鉄サリン事件を通してこれまでの<デタッチメント>から<コミットメント>へ視点が変わったとされる。この作品は、アフダーダークという夜の闇を通して、昼間には想像の及ばない深海のような闇の世界を描く。それは『アンダーグラウンド』のインタビューにより現実感の生活の表裏にあるものとして描かれている。<異界>と、そこに潜む<邪悪>は『ねじまき鳥クロニクル』の綿谷ノボルや『海辺のカフカ』のジョニー・ウォーカーの流れをくみ<悪の系譜>として白川という男に引き継がれている。またカオルやコオロギは物語を柔らかくする『海辺のカフカ』の星野青年の流れを組む。さらに「アルファヴィル」が境界となり、ここに引き寄せられる壊れ損なわれた人々や中国の娼婦や組織など反社会的な題材となっている。美しい姉のエリと、アフターダークのなか危険に晒されるマリ。そしてひと夜の試練を乗り越えたマリが家につき姉のエリを求めることで<あちら側>の世界から<こちら側>の世界に戻ってくる姉妹の物語として読んだ。阪神淡路大震災やオウム事件の記憶を通じて、人工的な構造物として蠢く巨大都市にまさに突然の裂け目となって表れる<異界>を不気味なほどに伝える内容になっている。そして<こちら側>にエリを取り戻し、マリの危険を回避させた朝の光が印象的で、愛情の大切さを伝えている。

発表時期

2004年(平成16年)9月、講談社より刊行された。2006年9月、講談社文庫として文庫化。村上春樹は、当時55歳。「ニューヨーク・タイムズ」のブックレビューにおける「2007年注目の本」の小説部門に英訳版が選出された。