フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー/華麗なるギャツビー』あらすじ|狂騒の時代、幻を追い続けた男がいた。

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第一次世界大戦後のアメリカ、狂騒の1920年代。夢を追い続け、一人の女性を愛し続けた男がいた。彼の名はジェイ・ギャツビー。活況に沸くジャズ・エイジに儚く消え去った悲愴の物語のなかに、自身の人生を投影したスコット・フィッツジェラルドの最高傑作。

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登場人物

ジェイ・ギャツビー
主人公で若くして巨万の富を築き、日夜パーティを催す謎の男。デイジーに一途な愛を抱く。

ニック・キャラウェイ
物語の語り手。自分だけが正義と良識を持つと考えており、ギャツビーの唯一の友人となる。

デイジー・ブキャナン
良家の子女で、昔はギャツビーの恋人で現在はトムの妻。天真爛漫な美人だが世俗的な女性。

トム・ブキャナン
上流階級の家に生まれる。利己的で傲慢な男で、デイジーと暮らす傍らマートルと浮気する。

ジョーダン・ベイカー
デイジーの友人でプロゴルファー。媚びない美女でニックと仲良くなるが、尊大で不正直。

ジョージ・B・ウィルソン
マートルの夫。労働者階級で灰色の谷で車の修理工場を経営する、覇気はないが真面目な男。

マートル・ウィルソン
ジョージの妻。華やかな生活に憧れており、肉感的な魅力でトムとの不倫を楽しんでいる。

あらすじ

物語はニック・キャラウェイを語り手として展開される。舞台はアメリカ、狂騒の20年代である。ニックは中西部の裕福な家柄の出身でイエール大学を卒業し戦争に従軍する。故郷へ帰ってきて孤独を覚えた彼は、東部へ行って証券の仕事を勉強しようと思い立つ。

ニックはニューヨーク州郊外のロング・アイランドのウェスト・エッグに住む。家の右隣はギャツビーの豪邸だった。その壮麗な屋敷では週末に豪華なパーティが催され社交界の話題になっていた。

対岸には高級住宅地イースト・エッグがあり白亜の瀟洒な邸宅が並ぶ富裕層のエリアだった。そこに住むトム・ブキャナン夫妻。トムとニックは大学時代からの知り会いで、デイジーはニックの再従弟またいとこの子供にあたる。夫妻は息を呑むような派手な生活をしていた。

夕食に招かれていくと、見るからに態度が偉そうで傍若無人な印象のトムと、美しく天真爛漫なデイジーと友人のプロゴルファーのジョーダンがいた。ジョーダンは「ギャツビーはご存知?」と訊ねてきた。デイジーはトムが愛人を囲っていることを知っていた。ニックはデイジーの取るべき道は、どう考えても子供を両脇に抱えて、すぐにでも家を飛び出すことだと思う。

ウェスト・エッグの自宅に戻ると、男が両手を暗い海に向けて差し出す姿が見えた。伸ばされた腕の先には桟橋の先端の燈台の緑の灯火がある。声をかけようと考えたが、男は一人でいることに満ち足りているようだった。それがギャツビーではないかと思った。

ウェスト・エッグとニューヨークの真ん中の荒れ果てた一画に「灰の谷間」がある。ここに眼科医の看板があり、その広告看板にはT・J・エックルバーグ博士の青く巨大な眼が浮かび上がっている。ここに住む車の修理工場ガレージを営むジョージは真面目な男だが、この妻のマートルこそがトムの愛人だ。

ニックはある日の午後、トムにニューヨークまで同行させられマートルを紹介され、三人でマートルの妹のキャサリンのアパートに行く。ここでもキャサリンは「ギャツビーのパーティに行った?」と訊ねる。ギャツビーはウィルヘルム皇帝の甥だとか従兄弟という噂話をする。マートルはジョージとの結婚は間違いだったと語り「人は永遠に生きられない」とトムとの不倫を楽しんでいる。

ある日、ニックのもとにギャツビーの署名入りの招待状が来てパーティに招かれる。そこには億万長者や映画女優や芸能人や政治家やギャングなど多くのセレブや有名人が集っていた。ある者はギャツビーを殺し屋だと言い、ある者は戦争中、ドイツのスパイだと言い、いやアメリカの軍隊にいたからそれはあり得ないという。

ロマンティックな憶測がかきたてられるが、誰もギャツビーについて正確なことを知らなかった。

ステージの演奏が途切れたとき、庭園で「顔に見覚えがあります」と話しかけてきた男がいた。ジェイ・ギャツビーだった。人に永遠の安堵を与えかねない稀な微笑みだった。エレガントだが粗暴さのうかがえる三十歳を少し超えた若い男だった。ギャツビーは礼儀正しく安心と信頼感をもたらした。

その後、何故か親しくされ水上飛行機に乗ったり、パーティも2回行った。そしてギャツビーはニックの家を訪れ昼食を共にしにニューヨークに向かう。車中、ギャツビーは自身について話をした。裕福な家に生まれオックスフォードで教育を受け、ヨーロッパで生活を送ったという。そして戦争が起こり、武勲で勲章を授与されたと語る。

ニックはギャツビーの頼みを聞く。ギャツビーは、テイラー基地の将校の時代にデイジーを見初め、その後五年間、彼女を思い続けている。そこでニックがデイジーを家に招き、ギャツビーは再会させてもらい、その後、自身の屋敷へデイジーを招待したいという考えを聞き、そのように計らうことにした。

ニックの家はデイジーを迎えるために、ギャツビーによって綺麗に刈られた芝と部屋いっぱいの花が飾られた。雨のなかデイジーは現れる。緊張する二人だったが、やがて打ち解け見つめ合い、キャツビーは幸福感に満ちていた。そして屋敷へ向かう。

美しい庭園や屋敷のさまざまな調度品や誂えにデイジーは陶酔する。ギャツビーは色とりどりのシャツを階下のデイジーに舞い散らす。それはギャツビーが夢にまでみた行為だった。

感激のなかデイジーは、ギャツビーとのひとときを懐かしむ。ある土曜の夜、ギャツビーのパーティにデイジーとトムは現れ、二人はたくさんのセレブを見る。ギャツビーはデイジーとフォックストロットを踊る。トムはギャツビーの素性を怪訝けげんに思う。ギャツビーは、デイジーがトムに向かって「あなたを愛したことはただ一度もない」と言ってほしかった。

ニックは、ギャツビーが何かを回復したがっていると思った。

それからデイジーは頻繁にギャツビーと逢瀬を重ねる。ある日、デイジーから皆が昼食の誘いを受ける。その日は最高に暑い一日だった。ギャツビーはここでデイジーに「トムを愛したことがないこと」を明言させて、関係を絶とうとさせる。トムにジョージから電話がかかり、マートルと勘違いしたデイジーはこれ見よがしにギャツビーにキスをする。暑さに耐えきれずニューヨークへ行こうとデイジーが提案する。トムはデイジーの変化を察し全員でニューヨークに向かう。

デイジーとギャツビーがトムの青いクーペに乗り、トムとジョーダンとニックがギャツビーの黄色のロールスロイスに乗る。「オックスフォード出だと!」。車中、ギャツビーの身辺調査をしたトムが嘲笑う。途中、灰の谷を通りガソリンスタンドで給油するが、ジョージはマートルと共に西海岸に引っ越すという。広告看板のT・J・エックルバーグ博士の眼が、神のように睥睨する。

ニューヨークのホテルの部屋でも諍いは続き、トムは悪意を持ってタフにギャツビーに対して、貧しい出自やギャングの仕事を経て富と地位を獲得したことを暴く。ギャッツビーは貧しい時分にデイジーを失ったが、彼女は今でも自分を愛していると対抗する。

トムへの最後通牒を強要されるデイジーは「トムを愛したことはない」と言うが、すかさずトムはこれまでの幸せな思い出をデイジーに確認する。たまりかねたデイジーは、「ギャツビーもトムもそれぞれに好きな時があった」として混乱し取り乱してしまう。

デイジーとギャツビーの二人が先に部屋を出て、一緒にギャツビーの車でロング・アイランドに向かい、気分を紛らわすためハンドルを握るデイジーだったが、突然、飛び出してきたマートルを轢き殺してしまう。

心配するギャツビーはデイジーをイースト・エッグの自宅に戻し庭から見守るが、デイジーが静寂を取り戻したことを確認しウェスト・エッグの自宅に帰る。マートルを殺された夫のジョージはトムの家に現れる。トムにギャツビーが犯人だと言い含められたジョージは、ギャツビーの家に向かいプールでデイジーの電話を待つギャツビーめがけ銃を放ち殺害する。そしてジョージも自殺する。

あれほどに栄華を誇ったギャツビーの葬儀には友人や知り合いはニックのほかは誰一人も顔を見せなかった。デイジーからは弔電も供花もなかった。来たのはただ遠くに住む老いぼれた父親だけだった。やがてニックは東部を後にして西部に帰っていく。

Bitly

※ブログ文中の章の表記は、中央公論新社<グレート・ギャツビー>スコット・フィッツジェラルド 村上春樹訳から