映画『愛を読むひと』あらすじと解説/ここが見どころ!

解説>なぜハンナは突然、マイケルの前から姿を消したのか。そしてなぜハンナは不利な証言をしたのか。隠し通さねばならないもうひとつのナチスの迫害の記憶。ケイト・ウィンスレット演じるハンナが、ひとり罪を負い死を選ぶ、その真実を知る朗読者。

登場人物

ハンナ・シュミッツ(ケイト・ウィンスレット)
路面電車の車掌をするハンナは、忽然とマイケルの前から消えある日法廷にいた。
少年時代のマイケル(ダフィット・クロス)
15歳の時、21歳年上のハンナと出会い恋におち、朗読を聞かせ過ごした夏の思い出。
マイケル・ベルク(レイフ・ファインズ)
大人になったマイケル、弁護士となり収容所のハンナに朗読のテープを送り続ける。
ロール(ブルーノ・ガンツ)
ハイデルベルグ大学の法科の教授、学生時代のマイケルに真実を語ることを薦める。
イラーナ・マーサー(アレクサンドラ・マリア・ララ)
教会の火災で唯一、命が助かった収容所の親子の娘で、現在はニューヨークに住む。

あらすじ(ネタバレあり)

1995年、ドイツ、ベルリン。

弁護士のマイケルは朝早く起き恋人の朝食を用意をする。今日は娘と会い過去を話す日だ。妻と離婚し一人の生活を送りながら遠い日を思い出す。それはまだマイケルが15歳の時のひと夏の出来事だった。

マイケルは気分が悪くなり、21歳年上の女性に助けられ恋に落ちる。

1958年、西ドイツ、ノイシュタット。

学校から帰る途中に気分が悪くなったマイケルは、土砂降りの雨の中、電車を降りる。建物の物陰でたまらず嘔吐するマイケルに、ひとりの女性が声をかける。マイケルは女性に介添えされ何とか我が家に戻ることができた。医師にみせ15歳のマイケルは猩紅熱しょうこうねつと診断され数か月、寝たきりの療養となる。

3か月後、回復したマイケルは助けてくれた女性のアパートへお礼に行く。女性の独り住まいを始めて訪問するマイケル、彼女の着替えをみて驚いて部屋を飛び出してしまう。

ある日、マイケルは女性が路面電車の車掌の仕事をしていることを知る。マイケルは勇気を出してアパートへ訪れる、ちょうどそのとき仕事を終えたアパートへ戻ってきた彼女と会う。

女性はマイケルに石炭2杯をバケツにむことを頼み、炭だらけになったマイケルを微笑みながら風呂に入れる。最初は恥ずかしがるマイケルだが、美しい女性といることを喜ぶ。

そして女性は風呂上がりのマイケルと肉体関係を持つ。マイケルにとって初めての経験だった。

家でのマイケルは女性との記憶で食事も進まず、家族に不審がられる。マイケルの家は裕福で、両親、兄弟姉妹ともに厳格な家庭だった。 学校に戻ったマイケルだが、授業が終わると一目散に女性のアパートへ訪れる。そして3回目の訪問で初めて女性の名前を聞くことができた。

彼女の名前はハンナ。マイケルは彼女のために本を朗読する。

名前を告げることを少しためらったが、女性は答えた。彼女の名前は「ハンナ」。

何度も関係を持ちながらやがて二人は打ち解けていく。ハンナはマイケルの語学の勉強に興味を持つ。ラテン語やギリシア語、いろいろな言葉を勉強している。そしてドイツ語で物語をハンナに話す。

ハンナはマイケルに「あなたは朗読が上手だ」と言う。

ハンナはマイケルに朗読をさせる。最初の一冊はホメロスの「オデュッセイ」。それから「犬を連れた奥さん」「ハックルベリー・フィンの冒険」と次々に。物語に涙したり、大笑いしたり、怒ったり、無邪気にじゃれあったり。マイケルとハンナは朗読を通じてお互いの気持ちを深めていく。

ある日、マイケルはサイクリングの1泊旅行をハンナに提案する。

二人は楽しくひと時を過ごしレストランでひと休みするが、ハンナはメニューを見ずにマイケルに注文を任せる。教会に讃美歌が聞こえると、いつかハンナは席に座り、静かに思いにふけり涙ぐむ。

マイケルはそんな美しく無垢なハンナに一層、心を惹かれていきます。

マイケルの誕生日の翌日、ハンナは突然何も言わず姿を消した。

それから毎日のようにマイケルはハンナとともに過ごす。

ある日ハンナは勤務態度を評価されて事務職に昇進との話を上司から言い渡されます。

その日はマイケルの誕生日でもありました。友達が計画してくれたパーティを断り、いつものようにハンナのもとへ行くマイケルですが、ハンナはなぜか苛立ち悩んでいるようです。マイケルも訳が分からず、二人は喧嘩になってしまいます。

それでもハンナはマイケルの身体をきれいに洗い、そして “戦争と平和” の本をマイケルに朗読させ愛し合います。そして「友達の待っているパーティに行きなさい」と言いマイケルを送り出します。

それからハンナは部屋の荷物をまとめアパートを出て行きます。マイケルが友達のパーティからハンナのアパートへ戻ると、ハンナはいなくなっていて部屋には何もありません。突然、一人残されたマイケルは途方にくれ家に戻ります。

大学生のマイケルは法廷で、ナチ親衛隊の被告のハンナと再会します。

1966年、ハイデルベルグ大学法科

マイケルは22歳の大学生になっていました。法科のロール教授はカールヤスパースの「ドイツ人の罪の意識」をテーマに講義をします。

ある日、マイケルはゼミの研究としてナチス戦犯の裁判、フランクフルト・アウシュビッツ裁判を傍聴します。そしてその被告席にハンナの姿を見つけます。

裁判官が被告人を読み上げます。ハンナ・シュミッツ1922年10月21日生まれ。出身はハーマンシュタット、現在の年齢は43歳。1943年にナチ親衛隊(SS)に入隊。

裁判官はハンナに事実の確認をし、ハンナはそれに答えます。

ハンナはSSに入隊した動機を問われ「看守の仕事があると聞いて応募した、最初は1年、アウシュビッツに勤務して、その後、クラクフの収容所に移る。44年の死の行進にも参加した。」と答えます。

学校に戻りゼミの講義でロール教授は「社会を動かしているのは道徳ではなく “法” だと説きます。そしてアウシュビッツで働いたというだけは罪にならない。アウシュビッツでは8000人が働き、有罪判決を受けたものは19人、そのうち殺人罪は6人。殺人罪は意図を実証しなければならない。」と言います。

問題は “悪いことか?” ではなく “合法だったか?” 。それも現行法ではなく当時の法が基準になると講義します。

ハンナは、役割としてSS親衛隊の任務を全うしただけだった。

法廷ではアウシュビッツ収容所の元囚人のひとりイラーナ・マーサーが書いた本が紹介されます。その本には “選別プロセス” のことが記されています。それは毎月60人の囚人が選別されてアウシュビッツに送り返されたのでした。

裁判官が「他の5人の被告人たちは、その選別に無関係だったと言っている。あなたは関わったのか?」と訊ねます。ハンナは「はい」と答えます。そして「その基準は?」と問われ「看守は6人だったので1人が10人選びました」と続けます。

ところが他の看守5人は全員が関与を否定をします。

裁判官は「選ばれた囚人が、殺されることをわかっていたはずだ」と問うと、ハンナは「新しい囚人が次々に送られてきて、古い囚人を送り出さねば収容しきれません」と答えます。

「選別プロセス」では働けなくなった囚人をアウシュビッツに送り返す。証人のマーサーが法廷の被告席にいる当時の看守たちを見渡し、ひとりひとり6名を指さしていきます。

そしてハンナだけは気に入った若い娘に、食べ物とベッドを与えて朗読をさせたと証言を加えます。

そして「死の行進」の話に移ります。44年の冬に収容所が閉鎖され移動することになり、雪の中で半数が死んだ。ある日、教会で泊まることになるが、夜中に空襲があって教会が被爆。教会が燃えはじめ、皆は叫びながら外へ向かったが、外から鍵がかけられ中にいた者はマーサー親子以外は全員、焼け死んだのでした。

裁判所での傍聴のあと、ロール教授のゼミでは教授と生徒達とのディスカスが続きます。

ハンナはひとり、殺人の罪を着せられ無期懲役の判決を言い渡される。

裁判官は被告人全員に「なぜ、鍵を開けなかった?」と訊ねます。ハンナは「簡単な答えです、私たちは看守で囚人を監視するのが仕事なのに彼らを逃がすなんて」と答えます。

「逃がしたら処罰を受けるから?」と確認する裁判官に、ハンナは「秩序を守るためです、村に囚人を放ったらどうなるでしょうか?」と答えます。

「あなたは囚人を逃がすよりも殺すほうが良いと判断したのですね」と裁判官は言います。

そして他の看守5人は鍵を開けないことの判断は、ハンナが一人でやったと口を揃えます。皆、少しでも心象を良くしようと罪をハンナひとりにかぶせようとしているのでした。

報告書は皆で書いたというハンナに対して、他の被告たちは「報告書はハンナひとりが書いた」と口を揃えて嘘をつきます。

裁判官は筆跡鑑定を求めます。

傍聴するマイケルは思い出します。ハンナの部屋でいつも朗読をさせられたことも、サイクリング旅行のときにカフェでメニューを見なかったことも、そして車掌から事務職に昇進した時に突然姿を消したことも、すべてこの理由からだとわかりました。

そしてハンナは報告書は自分が書いたことを認めます。

マイケルはロール教授に「被告のある事実を知っていて、それは有利な事実であり、そのことで判決が変わる。ただし問題は、被告はそれを明かされたくないことだ」と相談します。

「なぜか?」と問うロール教授に、マイケルは「恥だから」と言います。

それでもロール教授はマイケルにハンナに会い確認することを薦めます。マイケルはハンナに面会に行きますが、結局は、会わずに帰ってしまいます。

マイケルには、ハンナに真実を語ることを薦めることはできませんでした。

そして判決の日、被告の5人は共犯と幇助ほうじょの罪で4年と3か月の懲役刑、そしてハンナには殺人罪が言い渡され無期懲役となります。

マイケルは収容所へ朗読のテープを送り、ハンナは文字を学んでいく。

1976年、西ドイツ、ノイシュタット

マイケルはノイシュタットの生家に帰り妻と別れることを母親に報告します。そして自分のありし日の部屋で “オデュッセイア” を見つけ、懐かしさにふけりながら朗読をしてみます。

そしてマイケルは朗読をテープに録音してハンナに送ることを考えます。収容所でハンナは、マイケルが朗読した “オデュッセイア” を聞きます。

来る日も来る日も、マイケルは朗読をしたテープを送ります。来る日も来る日も、ハンナはテープを聞きます。やがてハンナは収容所の図書室から本を借りて、マイケルのテープの声に合わせて文字を覚え始めます。

1980年、西ベルリン

ある日、マイケルがアパートに戻ると手紙が届いていました。

そこには「Thanks for latest kid, I really liked it」と初めてハンナが書いた文字がありました。

そしてハンナはマイケルにいろいろな朗読をお願いします。それから届いた本の意見や思いを文字で綴るようになり、二人は手紙を通してやりとりするようになります。

1988年、西ベルリン

ある日、収容所から電話がかかってきます。「ハンナ・シュミットがもうすぐ釈放される予定だが、友達がいなくてあなたしか連絡先がない」と担当官が言います。収監されて20年以上が経っていました。

外に出るには仕事と住まいが必要になり、マイケルはハンナのために用意をします。

そしてマイケルは収容所に行き、ハンナと再会します。

マイケルはハンナに過去のことをどう思うかを訊ねます。するとハンナは「どう感じようと考えようと死者は生き返らない」と答えます。マイケルは「学んだことは?」と訊ねるとハンナは「字を学んだ」と答えます。

「来週、迎えに来る」とマイケルは言い残して、収容所を後にします。

ハンナは自殺し、遺志を託されたマイケルは思い出に終止符を打つ。

ハンナは独房に戻りテーブルの上に本を重ね、そして首を吊り自殺します。

収容所の担当官はハンナからマイケルへの遺書のメッセージを確認します。そこには「古い紅茶の缶と自身の貯めた7000マルクを、火事で生き残った娘さんに送ってほしい」というものでした。そして「マイケルによろしく」と綴ってありました。

マイケルはハンナの遺志によりニューヨークに赴き、“死の行進の唯一の生存者” のイラーナ・マーサーを訪ねます。

マイケルはマーサーにハンナがずっと非識字者であったことを告白します。

そして15歳の時にひと夏の間、知り合った女性であったことを話します。するとマーサーは「彼女はあなたの人生を変えたことを知っていたの?」と訊ねます。

マイケルはハンナが文字を覚え収容所で自身の犯した事実を知ったことを伝えますが、マーサーは「収容所はセラピーか、あるいは一種の大学か」と問いかけます。そして「彼女への許しが欲しいの、自分の気持ちを軽くしたいの」と続けます。そして「カタルシスが欲しいのならば、芝居に行くか本を読んで、収容所なんか忘れて」あそこは「何も生まれない所よ」と言います。

マイケルは紅茶の缶と中に入ったお金をマーサーに渡します。

マーサーは缶だけを受け取ります、それは収容所で誰かに盗まれたマーサーの宝物入れでした。お金は要らないと言い、マイケルは非識字協会への寄付を申し出ます。

協会への寄付の名義はハンナの名前でいいかと聞き、マーサーは了解します。

1995年1月。

マイケルは娘を連れ立ってハンナが眠る墓を案内します。そこは遠い日、ハンナと一緒にサイクリングで訪れた河畔の森の教会でした。

そしてマイケルは、娘にハンナとの15歳の思い出を語ります。

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