村上春樹『かえるくん、東京を救う』解説|見えないところで、守ってくれる人がいる。

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ある日、かえるくんが片桐のアパートにやってくる。一緒に東京を地震から救うために、みみずくんと闘ってほしいとの用件だった。何故、自分に?と戸惑う片桐に、あなたこそ適任!と言われ、傍で励ましてほしいと言われる。ちょっと風変わりな物語に潜むメッセ―ジは何か?

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登場人物

片桐
東京安全信用金庫新宿支店融資管理課の40歳の係長補佐、返済金の取り立て係の仕事をする。

かえるくん
二本の後ろ脚で立つと身長が2メートル以上の体格のいい蛙で、東京の地震情報を予知する。

みみずくん
東京の地底に住んでいる巨大なみみずのことで、腹を立てると地震を起こすという生き物。

あらすじ

ファンタジーな内容ですが、1995年1月の阪神・淡路大震災の影響が色濃く反映された作品です。

片桐がアパートの部屋に戻ると巨大な蛙が待っていました。二本の後ろ脚で立ち上ると背丈は2メートル以上あり体格もいい。160cmのやせた片桐は圧倒されます。

「ぼくのことをかえるくんと呼んで下さい」と話し始めます。

片桐は東京安全信用金庫新宿支店で融資管理課の係長補佐という職にあります。融資課が客にお金を貸し、片桐の融資管理課はそのお金を契約通りに返済をさせる、つまり回収、取り立てをする仕事です。

かえるくんに圧倒され驚く片桐は、返済金の交渉に来たクミの関係者かと思いますが、かえるくんは東京を壊滅から救うという急な用件でやってきたのでした。

壊滅とは<地震>のことです。2月28日の朝8時半頃に東京を襲うことになっている。3日後です。死者は15万人と推定。場所は新宿区役所の近くで片桐の働く支店の真下です。

かえるくんは、みみずくんと闘うというのです。みみずくんとは地底に住んでいる巨大なみみずのことで、腹を立てると地震を起こすというのです。

それで、かえるくんと片桐の二人で地下に潜り、みみずくんと闘って地震を阻止しようというのです。

片桐は融資管理課で返済金の取りたて係をしてきました。新宿歌舞伎町でバブル景気の後始末のこの仕事は、昔からのやくざだけでなく韓国系の組織暴力団や中国マフィアも入り乱れる辛い仕事でした。

何故、自分が選ばれたのかと訊ねる片桐に、かえるくんは「あなたは人がやりたくない地味で危険な仕事を引き受け、黙々とこなしてきた」と言い、会社の評価を気にすることなく愚痴ひとつ言わない。

正直なところ風采も上がらず弁も立たず軽視されがちなあなただが、筋道の通った勇気ある方であなたくらい信用のおける人はいない。一緒に闘うならあなた以外にないというのです。

みみずさんと闘うのはかえるくんが行うので、片桐は後ろで「かえるくん、がんばれ。大丈夫だ。君は勝てる。君は正しい」と声をかけ、勇気を与え、友達として支えてほしいというのです。

こうして、かえるくんと片桐は一緒にミミズくんと闘うことになる。

これは責任と名誉の問題で、闘いに負けても、命を落としても誰も同情してくれず、うまくいっても誰も褒めてくれない孤独な闘いだった。

ところが予期せぬ出来事が起こる。片桐が狙撃される。新宿の路上で若い男から拳銃で右肩を撃たれた。目が覚めた時に片桐はベッドに横たわっていた。2月28日の朝の9時15分だった。

東京に地震は起こらなかったことを看護婦から確認すると、片桐は安堵した。そして片桐は撃たれたのではなく、看護婦が言うには歌舞伎町の路上で昏倒しているところを発見された。何度も「かえるくん」と叫んで、うなされていたとのことだった。

片桐はどこまでが現実でどこからが妄想か、かえるくんはほんとうに実在し、みみずくんと闘って地震をくい止めたのか、それとも白昼夢なのかわからなかった。

一体、このお話は何をメッセージしているのでしょうか?

★動画もあります、こちらからどうぞ↓

※ブログ文中の表記は、新潮社<神の子どもたちはみな踊る>から