村上春樹『スプートニクの恋人』あらすじ|自分の知らない、もうひとりの自分。

ギリシャの小さな島で失踪したすみれと残されたふたつの文書ファイル。すみれの見た死んだ母親の夢と、ミュウの見た観覧車からの光景。祭りの音楽に導かれ上った月夜の山の頂きで、僕は<向こう側>の世界へ引き込まれそうになる。それはもうひとりの自分が棲む異界。

登場人物

ぼく(K)
主人公で12月9日生まれの24歳。大学を卒業後、小学校教師となる。すみれに好意を抱く。

すみれ
11月7日生まれの22歳。小説家志望だったが、大学に失望し自主退学しミュウの秘書となる。

ミュウ
39歳。日本で生まれ育つが国籍は韓国。ピアニストを志望したが父親の死後、事業を引継ぐ。

すみれの父
横浜市内で歯科医を経営する。ハンサムで美しい鼻筋を持ち、女性の患者から人気がある。

にんじん
本名は仁村晋一。ぼくが担当する生徒で、成績はいいが大人しく無口。スーパーで万引きする。

ガールフレンド
にんじんの母親で僕と数回、肉体関係を持つ。赤いセリカに乗っており、夫は不動産経営者。

フェルディナンド
50歳前後のハンサムなラテン系の男で、スイスのフランス国境の小さな町でミュウと出会う。

中村主任
スーパーマーケットの警備主任で、にんじんの万引きを見つけ捕まえて保安室に連れていく

あらすじ

主人公の「ぼく」は普通の24歳、国立くにたちに住み小学校の先生をしている。「すみれ」は22歳、茅ケ崎の生まれで吉祥寺の木造アパートに住んでいた。すみれの父親は歯科医を開業している。非常にハンサムで、美しい鼻筋を持つ。すみれの母親は31歳の若さで心臓の病気で亡くなり、継母を迎える。

「すみれ」は「ぼく」と同じ大学だったが、すみれにとっての大学は非冒険的で彼女向きではなく、さっさと自主退学して職業作家になるために悪戦苦闘していた。すみれは恋愛感情に無関心で、救いがたいロマンチストで頑迷でシニカルで世間知らずだった。

「ぼく」は今でもすみれに恋をしていが、「すみれ」がはじめて恋に落ちた相手は17歳年上で、既婚者でそして女性だった。彼女は「ミュウ」という愛称だった。すみれは、くしゃくしゃな髪を触られて恋に落ちた。

ミュウは日本で生まれ育ったが国籍は韓国人だった。それは「広大な平原をまっすぐに突き進む竜巻のような激しい恋」だった。

「ぼく」は現実的で凡庸な性格だが、すみれはジャック・ケルアックの小説に憧れ、ワイルドで、クールで、過剰になることを目指した。ミュウが、ビートニクをスプートニクと間違えたことから、すみれはミュウのことを「スプートニクの恋人」と呼ぶようになった。

やがて、すみれはミュウの営むワインの輸入貿易会社で秘書となり働き、青山のミュウの仕事場に行き、代々木上原のマンションに引っ越す。ミュウは引っ越し祝いにすみれに等身大の鏡をプレゼントする。

8月はじめ、ぼくはローマの消印のすみれの手紙を受取り、ミュウと一緒にヨーロッパに渡っていることを知る。ミョウの商談の旅に同行しているのだ。それからしばらくして、ミュウから国際電話がぼくに入る。一刻も早く、ここに来れないかという。ぼくはロードス島の近くにあるギリシャの小さな島に急いだ。

そこで、すみれが突然、いなくなったことをミュウから聞かされる

ぼくとミュウは、失踪したすみれを警察や港湾などあらゆる手段を使い探すが見つからなかった。ミュウがアテネの日本領事館に行っている間に、ぼくはコテージのすみれの部屋で2つのディスクを見つけ、すみれが書いた文書を読む。

文書1は<すみれの夢>で、亡くなった母親に会いに行く話。文書2は<ミュウの分裂>で、スイスの町での不思議な観覧車の出来事が記してあった。ミュウはこの体験以来、ピアニストになる夢をあきらめたという。

ぼくは音楽の音で目が覚める、導かれて山の頂きに行くと月は驚くほど荒々しく見えた。きっと、月の光はミュウにもうひとつの姿を目撃させ、すみれの猫をどこかに連れ去り、すみれを鏡の向こうに消したのだと考えた。その存在しないはずの音楽が、ぼくをここに運んできたのだった。

東京に戻ったぼくは、日常の生活に戻る。ぼくのつき合っているガールフレンドの息子で教え子でもある「にんじん(教室での愛称)」が、スーパーマーケットで万引きをして見つかり捕まった。説教を受けたあと何とか許してもらい、ぼくはにんじんと語らい、母親との付き合いをやめる。

ぼくは、すみれが消えて半年以上たつ三月半ばに、東京の街でミュウの姿を見かける。それは、ぬけがら・・・・みたいだった。

それでもぼくらはこうしてそれぞれに今も生き続けているのだと思った。たとえ、致命的に失われても、簒奪さんだつされても、まったくちがった人間に変わり果てても、黙々と生を送っている。

ぼくは夢を見る。夢の世界に生きる。いつか覚醒がぼくをとらえる。そしてすみれから電話がかかってくる。「ぼく」と「すみれ」は、繋がることができ、お互いを必要とすることができた。すみれが帰ってきた。ぼくらは同じ世界の同じ月を見ている。

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※ブログ文中の引用文は、講談社<スプートニクの恋人>から