浅田次郎『月島慕情』あらすじ|やっとの身請け話に月島で見た真実は

スポンサーリンク

解説>吉原で生きる女郎ミノは、いなせな侠客の時次郎に苦界から身請けされ、やっとの思いで強運を引き寄せる。夢のような幸せのなか、憧れの月島でみた光景とは。時次郎とミノのそれぞれの「ばっかやろう」に涙する、浅田次郎の大正ロマンな人情お伽噺し。

スポンサーリンク

登場人物

ミノ
故郷の村から一二歳で吉原に売られ、今では金看板の生駒太夫となる。
時次郎
ミノを身請けする筋金入りの侠客、江戸ッ子で生まれも育ちも月島。
卯吉
ミノを売った女衒で、ミノが誰よりも憎んでいる悪魔のような男。

あらすじ(ネタバレあり)

ミノという名前は、好きではなかった。

巳年生まれの「ミノ」は、人買いから東京の吉原亀清楼へ売られます。

やがて「生駒」という源氏名を授かります。

一七歳の初見世から三十歳を越えて、生駒太夫は金看板の御職、吉原亀清楼の最上位となっていきます。

三度目の身請けの話は、侠客の時次郎だった。

三十歳を過ぎ、年もいった年増女郎の生駒太夫に三度目の身請けが持ち上がりました。

相手は、駒形一家のいなせで、売り出し中の侠客の平松時次郎でした。

途方もない大金で身請けをされ、ミノは感謝と嬉しさでいっぱいになります。

時次郎のおかみさんになる、ミノはその強運がうれしかった。

ミノは、鳥越神社の祭りで待つ時次郎に会いに、できるだけ堅気の許嫁を装って吉原大門をでます。

久しぶりの大門の外の世界、それは二十年ぶりに吸う自由の風だった。

三十を過ぎての身請け話は強運で、惚れた男に添うことより、何よりその強運がうれしかった。

言葉少なに、「ばっかやろう」という時次郎。

時次郎と会いランデヴーを楽しみ、将来のことを語り合う。

長い苦界の暮らしで汚れちまって、ありがとうの涙も出ない。

時次郎にしんそこ惚れてはいるが、ミノの夢は、この苦界から這い出ることだった。

ミノは一人で、月島に、時次郎に会いに行く。

ミノは時次郎との暮らしを思い、月島での暮らしをあれこれと思う。

ミノは月島を知らない、美しい名だと思う、どうしても時次郎に会いたかった。

どうにも待ちきれず、一人で月島に行く、そこで見たものは・・・

評価(おすすめポイント!)

タイトルになった月島の起源がロマンチック

東京の湾岸が埋め立てられていき、築地のツキにできたので築島となる。

そこで、ぽっかり浮かぶ月があまりに見事なので、お月様の月になった。

吉原と月島は、短い距離。ほんのその目と鼻の先に幸せが待っている。

時次郎とミノ、それぞれの「ばっかやろう」

江戸っ子の「ばっかやろう」は、含蓄のある言葉です。

吉原の女、ミノの心配に対して時次郎が「ばっかやろう」といいます。

ミノが、時次郎を思い使うときに、ここでも「ばっかやろう」。

それぞれに趣があり、まさに人情噺にはかかせません。

「ばっかやろう」に含まれる気持ちはどんなものなのでしょう。

強運で、打算のミノの最後の選択は・・・

大好きだよ、時さん。

吉原遊郭で暮らしたミノは、決して純粋な女性としては描かれていません。

やっと掴んだ三度目の、これが最後かもしれない身請け話に、ミノは自分の強運を感じます。

そして、ミノが選んだその道は。

せつなさが月夜に浮かぶ作品です。

長編も短編も素晴らしい作者ですが、本作は短編で50ページ弱です。

泣かせやの真骨頂で当然、涙腺は緩んでしまいます。

ただ、今回の主人公のミノは、辛酸をなめたタフな女性です。こぼれる涙も少しほろ苦い味です。

浅田次郎著「月島慕情」2009年11月、文春文庫からの7編を集めた短編集の表題作。