全ての動物の平等を目指したはずが、いつか恐ろしい社会に変わり、ついに個の自由が無くなってしまう。オーウェルが描く全体主義を風刺した寓話『動物農場』。人間の虐待から解放され理想の動物農場を建設するはずが、そこで起こったことは、個人崇拝、歴史改竄、大量粛清、弾圧。そんな最悪の状態となる。私たちは理想がゆがめられ恐怖政治が誕生するまでの変遷を確認する。手遅れになる前に、自由を守る戦いを始めなければならない。
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あらすじ
①革命を説く
死期が近い老いた雄ブタのメイジャーは、農場の動物たちに集会を催し、夢に見たことを伝えます。
それは、プロレタリア革命、労働者による平等な社会の実現です。
集まったイヌ、メンドリ、ハト、ヒツジ、ウシ、ブタ、ロバ、アヒル、ネコを「同志諸君!」と呼びかけ、我々動物たちの生活は惨めで、労苦に満ちた短い生涯だと訴えます。
ギリギリの食事しか与えられず、役に立たなくなれば殺処分で、幸福や娯楽も知らず、自由はない。
労働の産物は人間に搾取される。牛のミルクは人間の喉を潤し、鶏の卵は市場でお金に換えられ、馬の子どもは売り飛ばされる。そしてジョーンズとその手下のものになる。
「人間こそが我々の敵だ。全ては人間の圧政のためである。人がいなくなれば飢餓や過重労働は無くなり、豊かで自由になれる」と説きます。
心身を傾けて、人類の転覆を謀るのだ!反逆を!
正義の実現に向け、何世代も闘争を続けねばならない。「人間を信じてはいけない。我々動物たちの完璧な一体性、闘争の同志精神がなくてはならない」と主張します。
二本足で立つ者はすべて敵だ。四本足で立つ者や翼を持つ者は友だ。
そう唱え、人間の慣習を真似たり悪徳を採用してはならないとし、あらゆる動物は平等と強調します。
そしてメイジャー爺さんは、子供の頃に流行った歌を唄います。それは自由の賛歌「イギリスの獣たち」で、動物たちの喜びの歌でした。
解説
『動物農場』の舞台はイギリスですが、内容はロシア革命とソ連スターリニズム批判です。
農場主のジョーンズは多くの動物を飼いその収穫で裕福に暮らす資本家、そして動物たちは虐使され続ける労働者です。
そこに賢者のメイジャー爺さんが、あるべき姿を説きます。人間が消えた後の世界、支配からの開放、それは動物たちによる戦いの勝利での「平等」の実現です。
産業革命での工業化と経済発展が目覚ましい英仏独に対して、皇帝の支配する帝政ロシアは、貴族、平民、農民の階級格差の強い農業国でした。先行するヨーロッパの貧富の差から起こる社会改良運動から急進的なマルクス・エンゲルスの『共産党宣言』が誕生するのは1848年。
1905年の第一次革命を経て1917年の2月革命と10月革命の第二次ロシア革命は起こります。『動物農場』では、ジョーンズはロシア皇帝ニコライ2世で、手下は貴族たちであり、ジョーンズの農場邸宅はクレムリン宮殿です。
そしてメイジャー爺さんは、マルクス主義の実践者でソ連建国の父レーニンがモデルです。
②思想体系への発展「動物主義」
3月、老メイジャーは死を迎えます。それから秘密裡に活動が行われます。
メイジャーの意思を受け、知能の高い動物たちは反逆の準備を整え、他の動物をオルグします。最も賢いのはブタで、傑出したのはスノーボールとナポレオンという若き雄ブタでした。
スノーボールは演説がうまく創意工夫の才があるタイプ。ナポレオンは大柄の強面で口下手ですが政治手腕があるタイプ。最初この2頭は良い補完関係だったのですが・・・。
そしてスクウィーラーという甲高い声で、右へ左へと飛び跳ね尻尾をふりまわし説得し、白を黒だと丸め込むのがうまい小さな太った去勢豚がいます。
この3匹は老メイジャーの教えを完全な思想体系に発展させます。『動物主義』と名づけ、その原理を動物たちに説得します。
しかし、他の動物たちの愚かさややる気の無さに直面します。その内容は、概ね以下の通り。
「ご主人」と呼ぶジョーンズさんへの忠誠の義務がある。
「ジョーンズさんはエサをくれる。あの人がいなくなれば、みんな飢え死にする」
「おれたちの死んだ後に起こることを、なんでいま気にする必要があるのか」
「この反逆がいずれ必ず起こるのなら、おれたちが努力しようがしまいが関係ない」
「反乱の後でも砂糖はもらえるのかしら?」
「あと、たてがみにリボンをつけるのはそのまま認められるかしら?」
解説
「砂糖」と「リボン」の発言は、ジョーンズの軽二輪馬車を引く角砂糖が好物のバカで綺麗な白の雌ウマ、モリーの発言です。これではまるで愛玩動物で、その他の動物の発言も盲信、従属、低関与、無関心など思考停止状態です。
これが永く支配され続けた動物たちの意識です。資本家と労働者の隷属関係です。因みに「死後には砂糖菓子山に行く」と説くカラスのモーゼスはジョーンズの特別なペットで、集会では寝ていました。こちらはロシア正教会ということになりますね。
さらに二頭の馬車ウマがいます。身長180センチで凄まじい作業力を持つ巨大な雄ウマのボクサーと、落ち着いた風格で誰からも尊敬される雌ウマのクローバーです。そしてブタと同じくらい知能が高く、働き者のボクサーを崇拝するロバのベンジャミンもいます。
③決起と「動物農場」の誕生
反乱は簡単に実現します。お金に窮し酒浸りのジョーンズ、従業員たちも怠け者で不正直。畑は雑草まみれで、建物の屋根は荒れ、茂みは手入れ不足、動物へのエサも滞りがちでした。
ヨハネ祭の前日にジョーンズは深酒し日曜の昼に戻ります。従業員もエサをやらずに出て行ったまま。とうとう動物たちは我慢できずに穀物置き場のエサを勝手に食べ始めます。
ジョーンズと使用人4人は、鞭を手に倉庫にやってきますが、動物たちは一斉に人間に飛びかかり5人は逃げ出します。ジョーンズ夫人も出て行きます。モーゼスも夫人の後を追います。
反乱は成功し、ジョーンズは追放され、メイナー農場は動物たちのものとなります。
動物たちを縛る道具は焼き払われ、ナポレオンは皆にトウモロコシをいつもの2倍提供し、イヌにはビスケットを2枚あげました。一同は「イギリスの獣たち」を7回歌い、深い眠りにつくのでした。
夜明けに目を覚まし、放牧場の小さな丘に登り、見渡す限りのものがすべて自分たちのものだと歓喜に満ちます。農場の建物に入り、豪勢さを畏怖の念で見上げ、博物館として保存することが全員一致で可決します。そして、
いかなる動物も、ここに住んではいけないと合意したのです。
スノーボールは「メイナー農場」という柵を「動物農場」と書き替えました。
解説
それは、労働者=動物たちの解放を目指す資本家との階級闘争です。暴力によって革命は成功します。メイナー農場の動物たちは、平等を求め立ち上がりました。戦いによって資本家ジョーンズを追い出し人間を排除した動物たちの平等な『動物農場』を打ち立てます。史実でも、クレムリン宮殿はその後、博物館となりました。
④ 動物主義の原理[7戒]
メイジャー爺さんの教えを動物主義の7つの戒律にします。それは変更不可能な法で、動物たちはこれに従って生きていかなければなりません。
- 2本足で立つ者はすべて敵。
- 4本足で立つか、翼がある者は友。
- すべての動物は服を着てはいけない。
- すべての動物はベッドで寝てはいけない。
- すべての動物は酒を飲んではいけない。
- すべての動物は他のどんな動物も殺してはいけない。
- すべての動物は平等である。
ここで、気になる出来事が起こります。
乳房が張り裂けそうだった雌ウシの乳を、ブタが採乳し、おいしそうな泡立つクリームのような5杯分のミルクが得られますが、その活用法を強引にナポレオンが取り仕切ります。やがて動物たちが干し草の収穫作業から戻ると、ミルクは消えていました。
解説
オーウェルは指摘しています。ここが最初の全体主義への岐路だったのです。このミルクの行方を動物たちは関心を持ち、もっと問い質すべきでした。この時点からナポレオンの独裁は始まったのです。このことを許したことで、後のナポレオンの狡猾、冷酷、排除、粛清の発端となります。それは単に言語というよりも、問題提起をする表現力を含んでいます。この前提として、平等の意味を理解しておく必要があるのです。
⑤ 言語理解と指導層の出現
ここで、必然的に指導者と構成される人々とが明確化していきます。
ブタたちは実際には働かず、他の動物たちを監視して指示をする役割です。知識を持つブタたちが、指導的な立場につくのは自然なことでした。
ボクサーやクローバーに、ブタたちは「はいしどうどう」と呼びかけ、動物たちは全員、干し草干しと刈り入れに従事します。動物たちは自分たちの生産した食べ物に心底、嬉しい喜びを感じます。
働き者のボクサーは「わしがもっと働く!」がモットーです。みんなが自分の能力に応じ働きました。
日曜には仕事はなく、朝食後に旗を掲揚します。旗は緑のテーブルクロスに白で、蹄と角を描きました。旗の緑はイギリスの緑の畑を示し、蹄と角は人類の打倒を示します。
掲揚後は「会合」なる総会が開かれます。ここで仕事が計画され、決議案が提出され議論されます。
スノーボールとナポレオンが議論で活躍しますが、意見が一致しません。
ブタたちは、馬具室を本部として鍛冶作業、大工作業など、必要な技能を本から学びます。スノーボールは他の動物たちを組織して動物委員会を作ります。メンドリは卵生産委員会、ウシたちは清廉尻尾同盟を、さらに野生同志再教育委員会、ヒツジの羊毛純白化運動、読み書き教室も開始されます。
これらのプロジェクトはどれも失敗でしたが、読み書きはある程度はできるようになりました。しかし動物によって理解度はばらばらでした。
ブタは完璧に読み書きできます。イヌたちは[7戒]以外、読みません。ヤギはイヌよりは少しうまく、ロバのベンジャミンはブタに負けないくらい読めましたがその能力を使いません。クローバーやボクサーはいろは程度。他の動物はいより先は読めません。
スノーボールは、[7戒]を一つの格言に還元します。
それは、「4本足はよい、2本足は悪い」で、これを理解した動物は人間から守られると言います。
ヒツジたちはこの言葉を気に入り、何時間も鳴きはじめます。
ナポレオンはスノーボールの動物委員会に興味を示さず、産まれた元気な子イヌ9匹を、母イヌから引き離し、馬具室の屋根裏に完全に隔離し教育します。
あのミルクの行方ですが、ブタたちのエサに混ぜられていました。風で落ちたリンゴもブタに利用するとの命令が出されました。その理由をスクウィーラーが他の動物たちに説明して回ります。
「ミルクとリンゴはブタの厚生に必要な物質を含み、ブタは頭脳労働者でこの農場管理と組織はブタの頭脳にかかっている。我々ブタが失敗したらジョーンズが戻ってくる」
そう言って左右に飛び跳ねて尻尾を振り立てます。こうしてミルクと風に落ちたリンゴはブタたちの専用となりました。
解説
これは特権的な位置にブタたちが置かれたことを意味します。階級化の始まりです。背景には知識の格差があります。言葉という武器を持つブタと、言葉を理解できない他の動物との違いが格差の決定的な要因になります。教育は社会の大きな土台となることを痛感させられます。
ミルクやリンゴがブタだけのものである理由を、知識労働だからと理由づけます。そして「4本足はよい、2本足は悪い」という単純なフレーズに洗脳されたヒツジたちが、メエメエと喚きたて、全ては解決していきます。
この段階で、言葉を操るブタが、その他の動物たちの上位の立場となり、官僚機構が生まれます。さらにスノーボールとナポレオンの覇権争いが始まります。エリート層とそれ以外、そして個人を頂点にしたピラミッドがうっすらと見えてきます。
モデルはスノーボールが、インテリで演説もうまいレフ・トロツキーです。自ら赤軍の先頭に立って戦いを率い、軍事手腕も外交手腕も見事でした。それに対してナポレオンはヨシフ・スターリン。理論的にも経済政策的にも垢抜けないが、恫喝と暴力と権謀術数にたけています。スクウィーラーは、スターリンの片腕で外交を担当するモロトフとなります。
⑥ ジョーンズの農場奪回の失敗
動物農場の出来事は周囲に伝わります。毎日ハトの群れが近くの農場の動物たちと混ざり、反乱の物語を語り「イギリスの獣たち」の歌を教えます。
ジョーンズは酒場に入り浸り、動物たちに追い出されたと愚痴ります。隣接する2つの農場は、昔からずっといがみ合い両者は毛嫌いしあっていました。
片方は、フォックスウッド農場で所有者はピルキントンというのんきな紳士農夫で、ほとんどの時間は季節に応じて釣りや狩りをしていました。
もう片方は、ピンチフィールド農場で所有者はフレデリックという抜け目のない人物で、いつも訴訟ばかり、強気の交渉で有名でした。
2人は動物農場の反乱に震え上っており、反逆の波が漂っていました。
その後、ジョーンズは農場の奪回に、フォックスウッドとピンチフィールドの人々を伴なってやってきますが、いち早く察知したスノーボールがカエサルの戦記を学び防戦します。
35羽のハトの空からの排泄、茂みからガチョウがふくらはぎを猛然とつつき、スノーボールを先頭にミュリエル、ベンジャミン、ヒツジたちが突進します。
さらに撤退を装い招き寄せ、人間たちが庭に入り込んだところで、ウマ3頭、ウシ3頭、残りのブタたちが背後からあらわれ、退路を断ち、再びスノーボールが突撃します。
ジョーンズは銃をぶっ放し、スノーボールは背中を流血しますが100キロ近い体重をジョーンズの足に叩きつけます。ボクサーは巨大な蹄鉄の蹄を打ち出します。人間たちは角で突かれ、蹴られ、噛みつかれ、踏みつけられました。
人間を追い返した動物たちは全員一致で軍事勲章を創ります。「動物英雄第1等勲章」は、即座にスノーボールとボクサーに授与されました。また「動物英雄第2等勲章」は死んだヒツジに死後授与されました。
この戦いは「ウシ小屋の戦い」と名づけられます。
解説
動物主義の伝播活動が近隣に行われます。それは革命運動の広がりです。この主体は、歴史的にはスノーボール(=トロツキー)です。世界革命を目論んでいます。
ここでのフォックスウッド農場のピルキントンは大英帝国とチャーチルがモデルで、ピンチフィールド農場のフレデリックはナチス・ドイツとヒトラーになります。貧富の差による労働運動は当時のヨーロッパに広がっており、社会主義運動の旋風が吹き荒れます。
⑦ 個人独裁の誕生と体制の確立
スノーボールとナポレオンのいがみあいが際立ちます。どちらにも支持者がいて、凄まじい論争が起こります。会合では見事な演説のスノーボールですが、根回し上手のナポレンが支持を取りつけます。特にヒツジたちを味方につけ、スノーボールの演説を邪魔します。
そして風車をめぐる意見で、二人の対立は決定的になります。
スノーボールは風車で電力を供給し、豊かな暮らしを提案します。灯りがつき、冬の暖房も入り、機械も動かせて便利になるといい、皆、驚愕します。
ナポレオンはこれに反対です。農場全体が風車の問題で真っ二つに分かれました。
スノーボールは建設はたいへんだが一年で実現できると主張します。そうすれば、週3日の労働で済むと断言します。ナポレオンは食糧生産を増やすことが優先すると言います。
防衛についても「ウシ小屋の戦い」で敗北した人間たちの再襲来に備えて、ナポレオンは銃を調達して訓練すべきと言い、スノーボールはもっとハトを送り出し他の農場で反乱を煽動すべきだと言います。
片方は自衛の強化であり、もう片方は反乱の拡張です。
票決にかけられます。風車で厳しい労働から解放される未来を描いたスノーボールが支持を得ます。
ところがナポレオンが立ち上がると、巨大な犬が納屋に突入します。スノーボールは戸口から逃げ出し、二度と姿を見せませんでした。イヌたちはナポレオンに育てられ、巨大になり、オオカミのように恐ろしげです。
ナポレオンはイヌたちを従えて、これからは日曜朝の会合は終わりだと宣言します。すべての問題は、ブタの特別委員会が解決し、自分がその議長になるといいます。この委員会は非公開であり、決断が後で皆に伝えられます。
動物たちは日曜朝に旗に敬礼し「イギリスの獣たち」を歌い、その週の指令を受けることになります。
抗議をしたかった動物も何匹かいましたが、やり方がわかりません。ブタたちの一部は雄弁でしたが、ナポレオンのイヌたちの脅すようなうなり声に圧し黙って座りました。
それからヒツジたちが「4本足はよい、2本足は悪い」を大声でメエメエと唱え始め、議論の可能性はなくなりました。
その後、スクウィーラーが皆に説明します。その内容は、
「ナポレオンのリーダーシップで、スノーボ―ルのいう追加労働を阻止することができた。忠誠と服従が重要。規律が重視されるべきだ」というものでした。「でなければジョーンズがまた襲いかかった時に負けてしまう」と言います。
これには反論のしようがなく、ボクサーは「同志ナポレオンがそういうなら、正しいにちがいない」と言い、モットーの「わしがもっと働く」に加え、「ナポレオンは常に正しい」という格言を加えます。
老メイジャーの頭骸骨が飾られ、旗の掲揚後、頭骸骨の前を通って納屋に入るよう求められました。
解説
ナポレオンは演説にたけ人気のあるスノーボールを政敵として追放します。その方法は、子飼いの狂暴なイヌに衆人の前で襲わせます。このイヌは秘密警察のモデルです。
老メイジャーを革命の父として祀り上げ、意志を継ぐのは自分という正統性をつくります。さらに委員会をつくり自らが議長となる行政機関をつくり、ブタたちのみの協議で、決定事項は、他の動物たちへは報告の形をとります。
これでナポレオンの個人独裁と執行体制が出来上がりました。
⑧ 人間世界の交流と[7戒]の改竄
スノーボールの追放後、ナポレオンは風車の建設を宣言します。
スクウィーラーは「風車建設を提案したのはナポレオンであり、スノーボールはその計画を盗んだ」と言います。そしてナポレオンが風車の建設に反対してみせたのは、危険人物のスノーボールを始末するための「戦術」と説明します。
動物たちは「戦術」の意味が分からず、スクウィーラーの説明が巧みなこととイヌが恐ろしく、その説明を受け入れます。
風車建設は重労働で奴隷のように働きます。春と夏の間は、週60時間働き、8月は更に苛酷になり、食糧配給は半分になりました。
さらに農場では生産できない、灯油、釘、ひも、イヌ用ビスケット、ウマの蹄鉄用の鉄をはじめ種子や人口肥料も必要ですし、風車用の機械も必要でした。
ナポレオンは新しい方針を発表します。近隣の農場との取引です。そこで干し草の山と、小麦の収穫の一部が売却されます。さらに卵の販売も予定されました。
動物たちは、人間とはつきあわない、取引しない、お金を使わないことは会合で決議されたことを覚えていました。
若きブタ4匹が抗議しますが、イヌたちの凄まじいうなり声に黙らせられ、ヒツジたちの「4本足はよい、2本足は悪い!」の叫びでごまかされました。
法務弁護士のウィンパーが動物農場と外部世界との仲介役となります。
スクウィーラーは「取引やお金を使うのを禁じる決議など、もともとなかった」と言います。それはスノーボールが広めたウソだとしました。やがて近隣の人間たちも「メイナー農場」ではなく「動物農場」としぶしぶ呼び、ジョーンズは別の地へ引っ越しました。
ナポレオンが、ピルキントンかフレデリックのどちらかと事業契約を交わすとの噂は絶えません。
この頃、ブタたちは農場邸宅に引っ越します。農場の頭脳であるブタには静かな作業場が必要ということで、「指導者」と呼ばれるようになっていたナポレオンの尊厳にふさわしいということになります。
ブタたちは、台所で食事をとり、居間を娯楽室として使います。さすがにベッドで寝ていると聞き、不穏に感じたクローバーが[7戒]を確認してもらうと、
すべての動物は、シーツのある ベッドで寝てはいけない。
とあります。すかさずスクウィーラーが説明します。
「ベッドとは単に眠る場所の意味で、小屋のわらの山だってベッドだ。規則はシーツを禁止するものだ。シーツは人間の発明だから。我々はシーツを取り除き、毛布の間で寝ている。頭脳労働の我々にはそれでも水準以上には快適ではない。我々が任務を果たすのに疲れ過ぎては、またジョーンズが戻ってくるようになる」
秋になり半分ほどできた風車がすべてを補ってくれました。ところが希望だった風車は、11月の南西風の猛威で大破します。あれほど苦労して運んだ石も、そこらに散乱しています。
ナポレオンは、風車を破壊した敵はスノーボールだと声を張り上げて吠えます。
死刑を宣言し、スノーボールを殺したものには「動物英雄第2等勲章」とリンゴ半ブッシェル、生け捕りには丸1ブッシェルが授与されるといいます。
解説
ブタたちはついに[7戒]を改竄します。詭弁を弄してブタはベッドで寝ます。ブタたちとそれ以外の動物たちという支配者と労働者の階級が決定づけられます。他の動物たちは言葉を理解できず「戦術」の意味も知らず、重労働と食料の配給減、さらには唯一の希望だった風車も失います。
すかさずナポレオンは風車の大破をスノーボールのせいにして、動物たちの困惑や絶望を、スノーボールへの憎悪に転換させ、風車の再建とスノーボールの死刑宣言という結束にかえます。