ジョージ・オーウェル『動物農場』あらすじ|個人独裁の誕生までを、おとぎ話で表現。

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⑨ 徹底したスノーボール非難

厳冬の中、風車の再建が始まります。壁の厚さは2倍になり集める石も多くなり、雪と霜で作業もはかどらず、以前ほどに動物たちは希望を持てません。

スクウィーラーの演説よりも、ボクサーの強さと「わしがもっと働く!」という叫びだけに力づけられます。

1月には食べ物が不足し配給が大幅に減らされ、埋め合わせのジャガイモも霜でやられて、飢餓は避けられない状態になりました。

ナポレオンは外部世界に食糧事情を知られるのを危惧して、動物たちの満足げな姿や、貯蔵庫に食料があふれる状況を演出し、ウィンパーを信じ込ませて、食料不足を否定する報告を続けさせます。

追加の穀物を調達するしかなくなります。スクウィーラーは産卵期に入ったメンドリたちの卵400個で、穀物と粗挽き粉に換えようとします。メンドリは絶叫して抗議します。

ジョーンズ追放以来の反乱が起きます。メンドリは垂木に飛び上がり卵を産むことで、卵は落ちてこなごなになりました。

ナポレオンは即座に容赦なく行動しエサの配給を止めます。5日にわたりメンドリは抵抗しますが、ついに産卵箱に戻りました。9羽が死にました。この件は表に知らされず、卵はきちんと出荷されました。

初春に恐ろしいことが分かります。

スノーボールが夜陰に乗じて農場に忍び込み、いろいろな悪事を働いていると報じられます。

穀物を盗み、ミルクの桶をひっくり返し、卵を割り、苗床を踏み荒らし、果樹の皮を食い荒らします。何かよくないことが起こったら、それはすべてスノーボールのせいになりました。

さらにスクウィーラーが「スノーボールはピンチフィールド農場のフレデリックに身売りをしたといい、我々を攻撃して農場を奪おうとしている」と説明します。

「ジョーンズの散弾で背中を怪我したのも、すべて計画のうちだった」とスクウィーラーの巧みな説明に、動物たちはだんだんとそんな気がしてきます。

最期まで異を唱えていたボクサーに、スクウィーラーは「同志ナポレオンがそう言っておられる」と強調し、どす黒い憎悪の視線を向けます。

解説

過酷な労働の中、唯一の希望だった風車が大破し、それをスノーボールの仕業にします。希望を失くしさらに食糧不足により反乱が起こると、それもスノーボールの手引きにします。そして風車の再建設という大規模なインフラ整備を強行します。ナポレオンの冷酷さを増した弾圧が始まります。

⑩ 大粛清による恐怖政治

4日後、動物みんなに庭に集まるように命じます。ナポレオンには9匹の巨大なイヌがはべります。

イヌたちがブタ4匹を捕まえ、苦痛と恐怖にわめきたてるブタたちをナポレオンの足下へと連れ出します。

ブタ4匹は「スノーボール追放以来、彼と接触しており、風車の破壊も共謀し、動物農場をフレデリックに渡す約束を取り交わした」と告白します。イヌたちは即座にそののどを食いやぶります。

次に卵をめぐる反乱未遂でメンドリ3匹が「スノーボールが夢に出てそそのかした」と証言します。かれらも虐殺されました。

それからガチョウがトウモロコシを隠匿し夜中に食べたことや、ヒツジが水飲み池に小便をしたと告白し「スノーボールにそそのかされた」といいます。

告白話と処刑がつづき、ナポレオンの足下には死体が山ほど積み上がり血の匂いがたちこめました。

動物が他の動物を殺したことはこれまでありませんでした。残った動物たちは半分完成した風車の立つ小さな丘へ向かいました。しばらく誰も何も言いません。

クローバーは丘の上から田園を見渡し、涙が溢れます。

人類打倒のため活動を始めたときに、みんなが目指していたのはこんなものではなかった。

恐怖と虐殺の光景は、老メイジャーが反乱に駆り立てたあの晩に、皆が期待したものではありません。皆が願ったのは動物たちが飢餓と鞭から解放され、平等で、能力に応じて働き、強いものが弱いものを守る社会でした。

替りに訪れたのは、思ったことを口に出せず、うなる恐ろしいイヌたちが監視し、同志たちが八つ裂きにされるのを見せられる時代でした。でもクローバーはそれを表現する言葉を持ちません。

彼女は「イギリスの獣たち」を歌いはじめ、他の動物たちも唱和しました。すると、スクウィーラーがイヌを2匹従えやってきます。そして「イギリスの獣たち」は廃止と宣言します。

「どうしてですか?」との叫びに、スクウィーラーは「裏切り者たちの処刑で反乱は完成した。外部の敵も、内部の敵も打倒された」と言います。

抗議をしようとすると、いつものようにヒツジたちが「4本足はよい、2本足は悪い」とメエメエわめき始めました。そして詩人ミニマスが、別の歌をつくります。

動物農場よ、動物農場よ 我から汝に及ぼす危害なし!

解説

大粛清は、陰惨で残酷を極めます。すべてをスノーボールのせいにして、証言を捏造し、動物たちの面前で次々に公開処刑が行われます。こうして異を唱える者すべては排除され、隷従するしかない恐怖政治が完成されていきます。

「見世物」裁判では、反革命的な陰謀を「告白」させ、それがトロツキーの企みによるものだと「告白」させ処刑するという、実際の歴史上でもスターリンの権力掌握のための大粛清が行われています。

⑪ 独裁政治の完成と外交

数日後、処刑の恐怖がおさまると、動物たちは戒律の6番目を確認します。

すべての動物は他のどんな動物も殺してはいけない。

しかしそこには、

すべての動物は他のどんな動物も理由なしに・・・・・殺してはいけない。

「理由なしに」という言葉が動物たちの記憶から抜け落ちてしまっていました。

動物たちは風車を再建します。通常作業をこなし予定日までに仕上がるのはすさまじい労働です。

ジョーンズ時代よりも長時間労働が続き、食事も少ないのに、スクウィーラーはあらゆる食糧の生産が200パーセント、300パーセント、500パーセント増えたと報告します。

動物たちにはもう反乱以前の状態の記憶もはっきり思いだせません。

ナポレオンは新たに「コケコッコー」とラッパ手のように鳴く黒いオンドリを随行します。農場邸宅の中でも、他のブタとは別の特別な暮らしをしているようです。

食事も給仕され、豪華な食器を使い、誕生日には祝砲まで鳴ります。

「我らが指導者、同志ナポレオン」と呼ばれ、スクウィーラーは演説で、ナポレオンの英知や、心の善良さ、深い愛情について語ります。

ミニマスが書いた「同志ナポレオン」の詩は、[7戒]の反対側の壁に書かれ、ナポレオンの肖像画が掲げられました。

ナポレオンは木材の山をピルキントンに売るように手配し友好関係を結ぶます。一方のフレデリックは動物農場を攻撃し風車を破壊しようと企んでおり、スノーボールがピンチフィールド農場に潜伏しているのがわかりました。

かつての「人間どもに死を」のスローガンは、「フレデリックに死を」を使うように命じられます。

秋になると風車が完成します。これは「ナポレオン風車」と命名されました。

2日後、ナポレオンが木材の山をフレデリックに売却したと発表したので、一同はぽかーんとしてしまいました。フォックスウッドとのあらゆる関係は断たれました。

スローガンは、「フレデリックに死を」から「ピルキントンに死を」に変えるように言われます。

ナポレオンは木材の代金を本物の紙幣で行いますが、3日後、紙幣は偽物であったことが判明します。

翌朝、フレデリックとその手下たちがやってきます。人間は15人いて銃もあります。ピルキントンに助けを求めたハトからは「いい気味だ」との返事でした。

フレデリックとその手下たちは風車を爆破します。耳をつんざく轟音ごうおんとともに風車は影も形もなくなりました。

これを見て動物たちは一丸となって突進し敵に向かいます。銃を撃ち棍棒で突撃され、人間との闘いでウシ1頭、ヒツジ3匹、ガチョウ2羽が殺され、ほとんど全員が手傷を負いました。ナポレオンも尻尾の先を削られました。

人間も3人はボクサーの蹄で頭を割られ、1人はウシの角で腹をえぐられ、9匹の犬たちは恐ろしいうなり声をあげ、人間たちはパニックに襲われました。

フレデリックと手下は命からがら逃げだしました。勝ちはしましたが、みな疲れ血を流しています。死んだ同志たちを見て涙を流しながら、かつて風車のあった場所で悲しみに押し黙って足を止めました。

祝賀に丸2日続き、この戦いは「風車の戦い」と名づけられました。

ナポレオンが新しい勲章「緑旗勲章」を創設し、自分自身に授与しました。その数日後、ブタたちは農場邸宅の物置からウィスキーを見つけ飲みます。そして

すべての動物は酒を飲んではいけない。は、

すべての動物は酒を過剰に・・・飲んではいけない。になっていました。

勝利の祝宴が終わった翌日から、風車の再建ははじまりました。暮らしはきついのに、スクウィーラーはみんなの食料は不足していないといい、「削減」とはいわず「再調整」というのです。ジョーンズの時代に比べたら、すさまじい改善がみられるというのですが、みんな記憶から薄れ去っています。

メスブタ4匹に出産された31匹の子ブタは、ナポレオン自らの教育を受けることになりました。そしてあらゆるブタは、どんなブタであろうと緑のリボンを尻尾につける特権が与えられたのです。

その年は、農場はそこそこ繁栄しましたが、それでもお金が足りません。そこで干し草の山とジャガイモの収穫の一部が売却され、卵の契約は週600個に増やされました。

ニワトリは頭数を維持するだけのヒナさえかえせず、エサの配給は更に減じられ、油を節約するためにランプも禁止されました。

ブタたちはむしろ太っています。大麦はブタたちの専用になると発表され、毎日1パインのビールが支給されました。ナポレオンは半ガロンを高価な器で飲んでいました。

いまの暮らしには以前より尊厳があるという事実で、苦労はある程度、相殺されました。

4月には、動物農場は共和国だと宣言され、全員一致でナポレオンが大統領に選出されます。

蹄が治るとボクサーは以前に増して働くようになりました。ところが過労で倒れてしまいます。

スクウィーラーがナポレオンの言伝ことづてを持って現れ、町の病院で手当てを受ける手はずとのこと。ボクサーは多少回復し藁の寝床で休みます。2日後、かれを連れ去る馬車がやってきます。

ベンジャミンが興奮して叫びます。馬車には「馬肉処理およびにかわ製造業」と書いてあり、ボクサーは解体業者のところへ連れていかれようとしていました。

3日後、ボクサーは治療の甲斐なく死んだことが発表されます。スクウィーラーは、臨終に立ち会ったといいます。

ボクサーは「風車の完成前に死ぬのが悲しいと言った」と報告し、「同志たちよ前進だ!反乱の名において前進せよ。動物農場よ永遠なれ!同志ナポレオンよ永遠なれ!ナポレオンは常に正しい」これがボクサーの今際いまわの言葉だったと告げます。

そして「馬肉処理」と書かれた解体業者だという話に対して、獣医がその車を買い取ったのだと説明します。動物たちはこの言葉を聞いて安堵しました。

次の日曜の朝、ナポレオンは月桂樹で大きな輪を作りボクサーの墓に供えるように命じます。ブタたちはボクサーの栄誉を称える記念宴会を開くつもりだと述べました。

ナポレオンは演説の終わりに、ボクサーのモットー「わたしがもっと働く」と「同志ナポレオンは正しい」を披露し、すべての動物が模範にするべきだと述べました。

宴会の日に、雑貨屋の幌付き馬車が来て大きな木箱が配達されました。新たにウィスキーを箱買いするだけのお金を調達してきたという話が出回りました。

解説

ナポレオンを崇拝した働き者のボクサーも、利用価値が無くなれば馬肉処理され、そのお金でウィスキーが購入され、ブタたちの嗜好の飲み物に供されます。

人間の襲来を食い止めた後、動物たちは[7戒]を意識することもできないほどに疲れ果て、恐怖で洗脳されています。そしてナポレオンの神格化が徹底的に進められ、全体主義と個人独裁が盤石になっていきます。

⑫ そしてブタと人間の区別がつかなくなる。

反乱以前の昔の日々を覚えている動物は、クローバー、ベンジャミン、カラスのモーゼス、数匹のブタだけになりました。

スノーボールは忘れ去られました。ボクサーも少数の知己以外には忘れ去られました。

ナポレオンはいまや体重150キロの成熟した雄ブタです。スクウィーラーは太りすぎて目を開けるのも苦労するほどです。昔とほぼ変わらないのはベンジャミンだけです。

農場はもっと栄え、前より運営もしっかりしてきました。

風車は結局、発電には使われず脱穀の製粉に使われ多額の金銭利潤をもたらしました。

スノーボールがかつて動物たちに告げた、豪華な暮らしや週3日の暮らしの話はもうでません。

ナポレオンはそんな暮らしは動物主義に反すると糾弾し「最も正真な幸せは、一生懸命に働いて慎ましく生きることにある」と言います。

農場は豊かになったのに、動物たちは一向に豊かになりません。

ブタたちは毎日、すさまじい労力をかけて「ファイル」とか「報告」とか「議事録」とか「覚書」を作り、終わるとすぐ暖炉で燃え尽くします。ブタやイヌは何も食料を生産しないのに、食欲は旺盛です。

他の動物たちは腹をかせ、わらの上で眠り、池の水を飲み、畑で働き、冬は寒さに、夏はハエに苦しみました。それでもスクウィーラーの数字の上では、食糧生産はどんどん改善しているのです。

ベンジャミンは「物事は昔もこれからも、改善もしなければ悪くもならないに決まっている」と言います。「空腹、労苦、幻滅こそは、生の不変の法則だ」と加えます。

それでも動物たちは、動物農場の一員である栄誉と特権の感覚を一瞬たりとも失うことはありませんでした。ここは、イギリス全体で動物が所有し運営する唯一の農場なのです。

動物たちの心は不滅のプライドで満ちあふれ、常に英雄的な日々、ジョーンズの追放、[7戒]の起草、人間侵略者たちが撃破された偉大な戦いへと向かうのでした。

ある晩、クローバーや他の動物たちは、ブタのスクウィーラーが2本足で立ち中庭を横切って歩いているのを目にします。その一瞬後、農地邸宅の戸口から、ブタたちが長い行列を2本足で行っています。

ナポレオンが姿をあらわします。堂々と身体を起こし、左右に傲慢な視線を投げかけ、イヌたちがまわりを飛び跳ねます。前足には鞭をもっています。

そしてヒツジたちは大音量でメエメエと「4本足はよい、2本足はもっとよい・・・・・と叫び始めます。

クローバーはベンジャミンに壁の文字を確認します。

すべての動物は平等である。だが一部の動物は他の動物よりもっと平等である・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一週間後、使節団が視察ツアーに招かれます。大いに感心し、風車には特に関心が示されました。農場邸宅からは、笑い声と歌声が聞こえます。動物と人間とが平等な立場で会合をしています。一同はトランプをしています。どうやら乾杯をするようです。

フォックスウッド農場のピルキントンがジョッキを片手に立ちあがります。「長い不信と誤解の時代が終わったことは満足である」と言い「あらゆる場所の手本となるべき規律と秩序がある」と言います。

自分たちの農場でも導入したい多くの特徴があると持ち上げ、最後にジョークを言う。

「みなさんも、下位の動物たちを相手に辛抱しなけりゃいかんでしょうが、こちらにもこちらなりの下層階級がおりますからな!」このセリフでテーブルは爆笑に包まれます。

ナポレオンも短い演説をします。

この農場は協同組合的な事業体で、不動産の権利書はブタたちの共同経営となっていること、さらに「同志」と呼ぶ風習をやめさせ、オスブタの頭蓋骨の前を行進させる風習をやめさせる。旗竿にはかつての白い蹄と角の絵は消され、単なる緑の旗となっている。

そして「動物農場」を廃止し、これからは「メイナー農場」と呼ばれる。

「メイナー農場の繁栄に乾杯!」

そしてトランプの勝負が再開されます。動物たちはこっそりその場を離れます。すると農場邸宅から怒号が聞こえます。すさまじい口論で、怒鳴り声があり、疑惑に満ちた視線が交わされ、猛然と否定の声が飛び交います。

「ナポレオンとピルキントンが同時にスペードのエースを出した」ということでした。

もうブタと人間の見分けはつかなくなっていました。

解説

スターリンは「世界革命」の考えを廃して「一国社会主義」を提唱します。同時に、英独仏などの関係において権謀術数にたけた外交手腕があったことも『動物農場』のなかで、ピルキントンやフレデリックとの政治的な駆け引きにみられます。その後、5か年計画や大農場の失敗、自身の強い猜疑心のなか大粛清を経て、共産主義国家を確立します。

『動物農場』では、農場は豊かになったのに、動物たちは一向に豊かになりません。恐怖政治のなかで新しい搾取の構造ができたことになります。ロバのベンジャミンの厭世的なニヒリズムや、クローバーの理想郷の幻滅などが痛々しい。

洗脳されたイヌやヒツジたち、そして気力をそがれた動物たちの隷従のなか、個人独裁の全体主義が確立されてしまいます。

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