村上春樹『蜂蜜パイ』解説|愛する人々が、新たな故郷になる。

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“after the quake(地震の後で)”との言葉で括られた全6編の連作短編集『神の子どもたちはみな踊る』の最後に書き下ろしとして収録されたものです。地震は、大地を裂き、一瞬にして日常を壊滅させた。そのとき人間の潜在意識も共振する。神なき世界を思うとき、人間の心はどこに向かうのか。登場人物の言葉の応酬に、人間の利己心や心の闇が隠れている。自由と個人主義を追求する人々。その先にある自分中心の生き方。そこでは前に進みつづける人の強い心と、取り残された人の傷ついた心がある。小さなファンタジーなお話が、心を癒し、勇気に変えていく。

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登場人物

淳平(主人公)
36歳、神戸生まれで小説家を目指す。人見知りで内省的な性格だが高槻と小夜子は大学からの親友。

高槻(カンちゃん)
長野の出身で淳平より一つ年上。背が高く肩幅が広くて人なつっこい性格でリーダーシップがある。

小夜子
高槻の妻。浅草生まれの美しい髪と知的な目をもつ女性で、学生時代は淳平の方に好意を抱いていた。

沙羅
小夜子の4歳の愛娘で感受性が強く、神戸の地震のTVニュース映像で情緒不安定になって眠れない。

あらすじ

小説家の淳平には学生時代からの仲の良い三人グループがいる。淳平より一つ年上、行動力がありリーダー的存在の高槻(カンちゃん)。美しい髪と知的な目をもつ小夜子。皆、同じ大学の文学部。淳平は学生時代から小夜子が好きだったが、高槻が先を越し小夜子と結婚、やがて娘の沙羅が生まれ、その後、二人は離婚した。沙羅が4歳の時、神戸の地震が起こる。その映像をTVで見続けた沙羅は情緒不安定となり、悪夢に悩まされる。淳平は沙羅に「熊のまさきち」の話を語りながら、小夜子と沙羅と一緒に生き、新しい愛の物語を書こうと思う。

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