井伏鱒二『山椒魚』解説|悪党になった山椒魚と、悟りをひらく蛙。

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作品の背景

デビュー作品であり作家生活60年のあいだ、何度か改筆が続けられた。最初に着手されたのは1919年(大正8年) 早稲田大学在学時で、井伏鱒二は当時21歳。このとき動物を主人公にした短編のひとつ「幽閉」が「山椒魚」の初稿にあたる。

それから6年後に全面改稿したものが「山椒魚-童話-」として掲載される。その後、1985年(昭和60年)10月、『井伏鱒二自選全集』の刊行にあたり、米寿を迎えた井伏鱒二は「山椒魚」を訂正する。従来の最後の「今でもべつにお前のことをおこっていないんだ」の部分が削除された。

発表時期

1929年(大正18年)、同人雑誌『文芸都市』5月号に初出。井伏鱒二は当時31歳。学生時代の習作「幽閉」を改訂したものである。その後、作品集『夜ふけと梅の花』に収録。