映画『タクシードライバー』あらすじと解説/ここが見どころ!

概要>男はベトナム戦争の帰還兵で、精神を病みひどい不眠症に悩まされる。退廃するニューヨーク、男の孤独と焦燥は、吐き気のする嫌悪にかわり、悪を洗い流す浄化への妄想はやがて現実になっていく。ロバート・デニーロ演じるトラヴィスの狂気が覚醒する。

登場人物

トラヴィス・ビックル(ロバート・デニーロ)
戦争による深刻な不眠症からタクシー会社に就職。
ベツィー(シビル・シェパード)
トラヴィスが好意を寄せる選挙事務所に勤務する女性。
アイリス(ジョディ・フォスター)
スポーツの管理の下、売春で稼ぐ少女。
マティッシュ(ハーヴェイ・カイテル)
アイリスのヒモ、言葉巧みに売春で稼がせている。
チャールズ・パランタイン(レナード・ハリス)
上院議員で大統領の候補者として活動している。

あらすじ(ネタバレあり)

トラヴィスは、タクシー会社を志望した。彼は、ベトナム戦争で精神を病み極度の不眠症を患っており、また社交性にも欠けるのでタクシードライバーの夜勤の仕事が都合がよかった。

マンハッタンの夜の深い闇を走るタクシードライバー。

夜のマンハッタンを流し、客を拾う。そこはドラッグ、売春、ゴロツキ、ゲイと 目を覆うばかりの悪に あふれ、薬物と性欲に溺れる得体の知れない人々が生息して吐き気がするほどだった。

ある日、トヴィスは運転中に、次期大統領候補バレンタインの選挙キャンペーン事務所を通りかかり、選挙活動スタッフの清楚で美しいベツィーを見かける。掃きだめのようなこの街で唯一、天使のように感じ魅かれていく。

トラヴィスは、やっとの思いで、ベツィーをデートに誘うのだが、彼の日ごろの趣味であるポルノ映画に彼女を誘ってしまい激昂されそれきりになってしまう。

何とか取りなそうとするトラヴィスだが、二度と電話に出てもらえなかった。所詮、彼女も冷たい人間なんだと開き直り、トラヴィスは事務所を訪れベツィーを罵り別れてしまう。

ある日突然、トラヴィスのタクシーに女性が逃げ込んできた。彼女はまだ少女の年齢で売春婦のようで、すぐにヒモのような男に連れ戻されていった。

また別の日には、女房の浮気現場を確認するためにトラヴィスのタクシーの車内から監視し、マグナム44で顔を跡形もなくぶっ飛ばして殺すと話しかけてくる異常な男も乗せた。

恋にも政治にも絶望し、大統領候補の暗殺を企てる。

何もかもが不条理。トラヴィスの不眠症はますますひどくなり精神をさらに病んでいった。

トラヴィスは、失恋の痛手もありひどく落ち込んでいき、タクシードライバーの生活を止めて何か大きなことをしたいと考えるようになる。

彼はブローカーを通じて銃を4丁、手に入れる。マグナムの破壊力や38口径の操作性、自動銃のコルト25口径やワルサーを気に入り買い揃えた。

そして身体を鍛え直し、射撃の練習をつみ、入念に戦闘の準備をした。

次第にトラヴィスは半狂人と化していく。

トラヴィスは、ある日の少女売春婦アイリスを指名し客を装い仕事を辞めるように諭す。
ヒモのマティッシュに騙されているが、真剣に話をするトラヴィスにアイリスは理解を示していく。
しかし結局はマティッシュの甘い嘘の言葉にからめとられていく。

やがてトラヴィスの妄想はピークに達する。

大統領候補パランタインの暗殺の計画を実行に移す。

遺書とアイリスへの数百ドルを封書に入れ、トラヴィスはアーミーの迷彩服にモヒカン刈りの出で立ちで、パレンタインの街頭演説の会場に現れた。 不審に思うシークレットサービスに目撃され人混みに紛れて何とか逃げ切った。

暗殺計画は未遂に終わった。

計画の照準をアイリスの救出に変え、彼女を闇の手から開放する。

トラヴィスは、計画を変更しアイリスを救いに向かう。

まずはヒモのマティッシュに、ワルサーの銃弾を撃ち込む。続いて用心棒の指を殺傷力の高いマグナムで吹っ飛ばす。追いかけてきたマティッシュにとどめをさす。元締めの男に首筋を撃たれるがすかさず仕込んだコルトで反撃し絶命させる。

木賃宿の個室とそこに通じる階段は血の海となり、恐怖におののき泣き叫ぶアイリス。

自殺を試みるトラヴィスであったが、既に弾は尽きていた。そして駆けつけた警察に身柄を拘束される。

マスコミは、少女を闇社会から救い出した男としてトラヴィスを称える。

新聞はタクシードライバーの勇気の記事で溢れ、故郷に帰ったアイリスの親からは、行方不明になっていた娘を救ってくれて我々家族にとってあなたは英雄ですと感謝される。

事件は一段落し、タクシーの仕事に戻っていたある日、トラヴィスの車にベッツイーが乗り込む、彼女とほんの少し会話をして、彼女を下ろした後、彼は夜のマンハッタンの街を一人、また彷徨う。

解説/ここが見どころ!

退廃のニューヨークの描写とトラヴィスの孤独な叫び

眠らない街、ニューヨーク。まさに多民族、多言語が集う人種のるつぼ。

不名誉ながら、当時は犯罪都市ニューヨークと言われていました。

南北に走るブロードウェイ、タイムズスクエア近辺でのドラッグや売春、ポルノショップなど不眠に襲われるトラヴィスの視界には反吐がでるほどの汚れた街に映ったことでしょう。

その街をただただ客を乗せ、指示された場所へ送り届けるタクシードライバー。

視界に入る退廃の風景のなかで孤独な叫びが、声にならず唸っているようです。

トラヴィスの孤独は、極度の精神異常に陥り、ベトナム戦争の後遺症も加わり先鋭化されていき、倫理もモラルも無い不条理な社会への憎しみは、銃による制裁に向かっていきます。

恋にも政治にも絶望するが、トラヴィスはアイリスを救う

やがてトラヴィスは、選挙キャンペーンスタッフの ベツィー に好意を寄せ、デートに誘いますが、所詮、底辺のタクシードライバーで生計をたてるトラヴィスと、上流の人間であるベツィーとでは、もともと住む世界も趣味も生活スタイルも異なります。

恋にも破れ、綺麗ごとの政治のスローガンも見せかけの嘘話だと見破っているトラヴィス。

自分の力で、すべての邪悪を大雨のように流しさり浄化しようと目論み、銃を調達し完全に武装して標的に偽善者に映る大統領候補を狙うが未遂に終わります。

最終的に、売春を強いられている少女アイリスを闇の世界から救い出すことを決意する。

俳優ロバート・デニーロと監督マーティン・スコセッシ

ロバート・デニーロといえば役になりきることで有名です。 頭髪を抜いたり体重を増やしたりと役作りにこだわる俳優です。

この映画では、数週間にわたり実際にタクシーの運転手を行い、役の研究を行いました。
またトラヴィスが鏡に向かい「You talk’in to me? (俺に用か?俺に話しているんだろう?)」と呟きながら、素早く銃を抜くシーンもデ・ニーロのアドリブです。

また、バイオレンス映画屈指の監督のマーティン・スコセッシは、シチリア系イタリア移民の出身です。
その出自から腐敗した矛盾の中でいかに人間の倫理や善良さが大切であるか、さらにそれを実践することの苦悩をテーマとした映画を数多く手がけています。

この作品ではメガホンだけでなく俳優としても登場します、浮気した自分の妻の殺害を仄めかす異常なタクシー客として出演しています。神経質そうな早口の言い回しが印象的です。

アメリカン・ニューシネマと呼ばれた映画ジャンルは、1960年代後半から70年代後半にかけて制作され、ベトナム戦争後の若者たちの反体制的な心情を綴ったテーマが多く本作品はその後期と言えます。

映画『タクシードライバー』1976年のアメリカ映画
第29回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品
ロバート・デニーロの狂気に向かう心理描写の名演技が凄味ある作品です。


Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.