映画『ショーシャンクの空に』|夢を実現する、不屈の精神。

銀行の副頭取のアンディは冤罪だが終身刑が下り、ショーシャンク刑務所に収監される。絶望の中で見た刑務官の横暴さ、囚人のいじめや暴力。それでも希望を失わず諦めずに、最後は脱獄して夢を実現する。ティム・ロビンスとモーガン・フリーマンの友情が二人を繋ぐ。

解説

アンディの “冤罪” を前提に、不屈の精神の物語を考察する。

まさに巌窟王の物語のようだが、主人公に自己投影すると、このような絶望的な環境で夢を持つなんて不可能。だけどこの男は、希望を抱き続け人生を諦めることなく長い服役に耐えながら  “自身の改心”“夢の実現”のために、脱獄に成功するという執念の話である。

その不屈の精神を支えたものは何か?をあらすじを追いながら解説し、そして主題である“生きることの尊さ”を物語のなかに楽しみたい。

若く有能な銀行の副頭取だったアンディは、無実の罪で収監され、法廷で有罪の無期懲役の判決が下されて絶望する。

その経緯は、ある日、妻に離婚話を持ちかけられ、その後、妻は愛人のもとへ出て行った。アンディは酒を飲み殺意を抱き、拳銃を持ち愛人のもとへ向かうが、踏みとどまり銃も川に捨てた。ところが、妻と愛人はその日、何者かに殺害される。アンディは逮捕され無実を主張するが認められず、終身刑となる。

ショーシャンクの刑務所では、所長のノートンと主任のハドレーに、厳しい挨拶の洗礼を受ける。初日は裸にされ消毒され投獄される。

アンディは1か月後、はじめて人と話す。相手は調達屋のレッド。アンディはロックハンマーが欲しいとレッドに依頼し、レッドは了解する。

それから洗濯係に配属されるが、ボグズに性的暴行を受けてしまう。その後もアンディは、ボグズたちにつけ狙われ生傷が絶えず2年の月日が流れた。

ある時、アンディは相続税の多さに愚痴をこぼすハドレーに、贈与の形にすれば非課税で遺産を相続できると説明し、書類を作成してやり重宝がられる。

映画鑑賞の日、アンディは調達屋のレッドに“リタ・ヘイワース”のポスターを頼む。

アンディはまたしてもボグズたちに襲われるが、逆にハドレーは利用価値があるアンディを守るべくボグズを襲い始末する。

ノートンはある日、アンディに図書係を命じた。アンディの仕事は別にあった。刑務官のひとりが息子の進学で相談に訪れた。アンディは貯蓄計画をアドバイスする。アンディは銀行時代の才能と知識をいかして刑務官たちの無料の資産アドバイザーとなった。

アンディは所長を含め全員分の刑務官のために所得申告を代わりにしてやる。さらに刑務官のさまざまな経費処理のアドバイスを行う。

図書係の相方の老囚人のブルックスは仮釈放となるが、不安の中で錯乱し仲間をナイフで刺そうとする。

レッドは刑務所暮らしの現実を語る。「最初は憎み、しだいに慣れ、長い月日の間に頼るようになる」施設に慣れてしまうのだと。

終身刑は人を廃人にする刑罰だ、陰湿な方法で。

1通の遺書が届く。ブルックスは外の世界に馴染むことが出来ず自殺をした。

レッドは刑期を30年終え、仮釈放を申請するが不許可となる。

アンディも10年になる。申請が叶わなかったレッドに、アンディはハーモニカを贈る。アンディの10周年にレッドはマリリンモンローのポスターを贈る。

所長のノーランは “青空奉仕計画” を始めた。社会福祉事業だと善人ぶるが、囚人を外で奉仕活動をさせその収益と業者の入札時のピンハネで私腹を肥やすことだった。ノートンはその管理をアンディにやらせた。

2口に分けてアンディはこれを管理した。そして絶対に国税に発覚しないように、“ランドール・スティーブンス”という架空の個人名義を使い、不正なお金をクリーンなお金に換えて蓄財していった。

アンディは外では善人だったが、刑務所の中で悪人になったことを笑う。

1965年にトミーという青年が窃盗の罪で2年の刑で入所してくる。

1966年ポスターはラクエル・ウェルチに変わっていた。

トミーはアンディの罪状を聞き、レッドが “妻と愛人のゴルフプロの殺害” を話すと、4年前にいたトマストン刑務所でエルモという名前の男が「昔、ゴルファーとその愛人を殺害して、なんと捕まったのはその愛人の旦那だった」と笑って話していたことを伝えた。

アンディの事件の真犯人が判明したという内容だった。

再申請求を望むアンディに、ノーマンはこの話を無視した。それは利用価値があるアンディがいなくなっては困るからであった。

アンディはすでにショーシャンク刑務所に無実の罪で19年間いたことになる。ノーマンはハドレーに命じてトミーを殺害した。アンディの無実を証明できる唯一の人間はいなくなった。

失意の中、レッドと話すアンディは「外の世界に出たらメキシコのジワタネホの街に住みたい。その太平洋に面した町で、ホテルを開業したい」と言う。太平洋の別名は“記憶のない海”と言う意味だとレッドに話す。

そして、レッドがシャバにでたらぜひ手伝ってほしいと言う。

アンディは、<必死に生きる>か<必死に死ぬか>を決断する。

アンディはレッドに「仮釈放になったらバクストンの牧草地の石垣があってカシの木が1本生えている場所を目指せ」と告げる。。そこはアンディが妻に求婚した場所だった。そして「その下にある黒曜石の下を掘り返せ」と。

翌朝、点呼の時、アンディはいなかった。ノーマンはポスターの裏の壁の穴を見つけて唖然とする。

1966年、アンディは脱獄した。

19年間をかけてアンディはロックハンマーで壁に穴をあけて掘り続け、それをポスターで隠していた。アンディは穴を掘り続けることで、何とか正気を保っていた。

アンディは穴を抜けて、460mの下水管をはって刑務所の外に出た。外は雷雨が激しかったが、稲光の中でアンディは自由を勝ち得た。

街に出たアンディは、ノートンの架空口座をかねてからの“スティーブン”の名義で、出生証明や免許証も用意して難なく37万ドルを全額解約した。そしてメキシコに向かった。

さらにノートンの不正と刑務所内の殺人の事実を新聞社に告発した。新聞は、ショーシャンク刑務所の不正と殺人の事実を一面で報じた。

警察が訪れハドレーは逮捕された、ノートンは拳銃で自殺した。

アンディからのハガキを受けとったレッドは、自由の身になったアンディの姿を想像し爽快な気分になった。

やがてレッドは仮釈放になる、更生の仕事も得た。そしてレッドもまたブルックスと同じようにシャバの自由が馴染めず怖く怯えていた。

そんな時、アンディとの約束を思い出す。レッドはバクストンの牧草地に向かい、石垣の下の黒曜石の下を掘った。そこには “レッドが釈放した時に” と記された手紙と現金があった。

手紙には「ジワタネホにいる私のところに来て、仕事を手伝ってほしい」と書いてあり

「希望は素晴らしい、何にも替え難い、希望は永遠の命だ」と綴ってあった。

レッドは、“必死に生きる道”を決断した。彼はアンディのもとに向かった。

レッドは、太平洋を臨む美しい砂浜でボートを磨くアンディを見つけた。人は笑顔で抱擁しあった。大きな青い空と碧い海が二人を迎えてくれた。

以上があらすじですが、アンディの精神は、トミーの<入所前>と<入所後>がポイントになります。

<トミーの入所前>は、ほとんどの懲役期間を占めますが、希望を失わずに刑務官の望む脱税や資産作りを手伝い、図書館の充実で知への充足を満たしたり長い服役時間のなか精神の平衡を維持する行為としています。

<トミーの入所後>は、真実を知ったことで再審請求をしますが、ノートンの企みでトミーが殺され真実が闇に葬られた後に、脱獄して架空名義の預金を解約し刑務所の不正を告発します。アンディの不屈さが小気味よく展開します。

規律と聖書を愛すふりをして偽善の塊のノートンに対して、アンディが、聖書の中身をくり抜いてロックハンマーを隠していたことはノートンの狡猾とアンディの不屈が交差します。

不屈のアンディが、ショーシャンクの横暴も同時に暴く小気味よさを見せます。

真実がトミーから明かされもみ消されたことが、アンディに不正を正すことを駆り立て、脱獄後の話を素早く面白く展開させます。不正に集めた金を別名義でロンダリングして、まんまと着服するところは痛快です。

アンディとレッドの意見の違いが、交差する論点を楽しむ。

冒頭のシーン、アンディが車の中で銃を握るシーンがあります。

そして脱獄の前日、トミーが死んで真実を証言する機会を失った絶望の中で、アンディはレッドにジワタネホで妻にプロポーズしたことを話し、愛した妻に殺意を抱いたことに対してこの冤罪も受け入れ罪滅ぼしの19年間だったと話します。

希望も生きることも決して諦めないが、同時に、ショーシャンク刑務所の長い時間は、 “妻への殺意”という自身の反省を充分に償ったものとして捉えています。

アンディを軸とした物語ですが、オフナレーションではレッドがアンディのショーシャンク刑務所の一部始終を、観衆に語るかたちで物語が進行します。

アンディは、もともと若くして銀行員の副頭取決であり上品で家柄も教養もあり、冷静で沈着な思考の持ち主で、“無実の罪による終身刑”で服役します。

終身刑の絶望の中でも冤罪ですから、悪に手を貸しながらも無実を晴らす機会をうかがうアンディの不屈な精神力と実行力が観衆を唸らせます。

プライドが高く粘り強く緻密なアンディの性格は、恐怖におびえた最初の頃から、次第に時間を経過していくにつれ、偽善に満ちた刑務官や低俗な囚人を越えた存在感として伝わってきます。

レッドは哲学者のような所作ですが、事実は  “まさに殺人犯” です。ただ何かの事情はあったのだと思わせます。そして服役年数の節目の 数度の仮釈放審査でも、 都度、彼は改心の意を表明しますが仮釈放の許可はおりません。

これは服役年数が充分では無いので、一応、形式的に行われているだけなのでしょう。

レッドが話す「終身刑は人を廃人にする刑罰だ、陰湿な方法で」という言葉に現れていますし、事実、50年の服役を経てやっと仮釈放されたブルックスはシャバに適合できず自殺します。

希望を持つことを諦めないアンディに対し、レッドは自身を受け入れて淡々と刑務所暮らしを送ります。

しかしアンディは、ロックハンマーをレッドから調達した時点で、壁の穴を掘り進むことを決意していますし、刑務官に取り繕い不正の手伝いをすることで刑務官のみならず囚人たちとのコミュニケーションも円滑に運ぶように自身を演じます。

「人生で希望を持つことが大切だ」と語るアンディに、「ここで希望を持つことは危険だ」とレッドは戒めます。

レッドは終身刑で希望を持つことの先には、自殺という自由を選択するしかないと考えます。

しかしアンディは、最後に、調達屋が必要だといって共に仕事をすることを誘い、ほんとうに夢は実現して、レッドは真の自由と生きがいを手に入れることができました。

この観衆に語りかけるレッドの心情の変化が、もうひとつの楽しみ方でもあります。