映画『スカーフェイス』|成り上がり者、その壮絶な死。

トニー・モンタナは、キューバから米国に亡命し、チンピラからフロリダの麻薬王に成りあがる。度胸と暴力で上昇するアメリカンドリームの生き様。そして全てを失くし果てる死に様をオマージュで贈るカルトなギャング映画

解説

スカーフェイスのタイトルや、物語の背景について。

『スカ―フェイス』(原題:Scare Face)は、1932年公開の『暗黒街の顔役』(原題:Scare Faceに同じ)をオリバー・ストーンが脚色し、ブライアン・デ・パルマが監督をします。

『暗黒街の顔役』は、アル・カポネがモデルです。カポネは、顔に傷があったことで「スカーフェイス」と呼ばれました。皿洗いから犯罪の世界へ入り顔役にのし上がります。

オリバー・ストーンは1983年の社会情勢を踏まえ “酒の密売”を “コカインの密輸” 、そして“イタリア系移民” “キューバ移民” 、舞台を “シカゴ”から “マイアミ”に変えました。

当時、キューバのカストロ政権打倒を目論むアメリカは、キューバからの亡命者を受け入れる政策で、マリエリ港を開放。

その数は12万5000人。この時、カストロは2万人以上の犯罪者なども乗せたという史実に注しました。この出来事はフロリダが悪の温床となった要因と言われています。

映画の公開当時は、決して評価は高くなかったのですが、現在ではマフィア映画のカルト的な傑作として評価が確立しています。

それでは、あらすじを追いながら主人公の生き様と死に様の凄まじさ・・・・を解説します。

“The World is Yours” それはトニー・モンタナの生き様。

男の信念は、信用を築き、小さなチャンスを逃さずモノにして、大きくなること。

キューバからやってきた、犯罪者トニー・モンタナ。

マイアミに紛れ込んだ前科者のトニー・モンタナは、入国管理で尋問を受けます。避難民収容所に送られ相棒のマニーと再会し、同じ収容所の反カストロの大物政治家レベンガの殺害を条件に、グリーンカード取得と仕事を紹介されます。

首尾よくレベンガを殺害し皿洗いの仕事にありつき依頼主を待つ二人。現れたのはフロリダのギャング、オマーでした。

なめてくるオマーに、ガッツ剥き出しのトニー。「でかく稼ぎたい」と言うトニーは、オマーからコカインの取引を請け負います。

マイアミのモーテルでコカインの取引に向かうトニーとマニー、そして仲間のチチとエンジェル。しかしコロンビア人の売人の罠に嵌(はま)り、エンジェルがチェーンソーで惨殺され、間一髪、トニーは相手を血祭りにあげブツを手に入れます。

トニーはコカインと金を持って、ボスのフランクに会いに行きます。

フランクは「筋金入りの男だ」と慰労し褒めたたえます。トニーは愛人のエルヴィラを見て、ひと目惚れをします。

フランクはクラブで遊ぶシマ持ちのマフィアの大物を紹介します。強欲をかかないことと、自分のブツに手を出さないことを戒めて、トニーを部下として可愛がります。

金髪美女の愛人エルヴィラは「キューバから来たボートピープル」と馬鹿にしますが、トニーは「いずれ自分と一緒になる」と意気がって見せます。

トニーはフランクの持つ地位、権力、金、女、贅沢な暮らし、すべてが憧れでした。

トニーは、もっと上に駆け上がり “世界を手に入れたい” と考えます。

トニーは、久しぶりに母と妹を訪ねます。妹のジーナは19歳に成長し美しい女性になっていました。妹に高価なネックレスの贈り物、母親には大金を渡し、新しい暮らしをしようと誘いますが、母親はトニーのヤクザ丸出しの姿に迷惑し娘を守ろうとします。

家を追い出されたトニーは、そっとジーナに金を渡して帰ります。

フランクの依頼で、麻薬取引を手伝うことになり、ボリビアのコカイン精製工場を訪ねます。相手はアレハンドロ・ソーサ。麻薬ビジネスの大物で、大量にアメリカで捌(さば)くパートナーを探しています。

尻込みするオマーをよそにトニーは条件をソーサと詰めます。トニーに主導権を握られ苛立つオマーは先に帰りますが、送迎ヘリの上空から突き落とされます。

トニーは麻薬王ソーサに信頼され、大きな取引の成功と信頼を勝ち得ます。

ソーサはトニーをパートナーとして認め、「絶対に裏切るな」とだけ釘をさします。

トニーは、取引条件に慎重なフランクを見限ります。フランクもトニーの独断専行に苛立ち、二人の関係は次第に険悪になっていきます。

フランクと切れて、独立を決意したトニーは、正式にエルヴィラに求婚します。

ある日、トニーはマニーとクラブに行くと、男と踊っているジーナを見つけます。金を手にしたジーナは派手になりチンピラと付き合っています。

心配するトニーに、麻薬課のメルが肩をたたく。

悪徳警官のメルは、タレコミで情報を得たトニーのレベンガ殺しやモーテルでのコロンビア人殺害の件をネタに法外な賄賂を要求します。

そこに、フランクがエルヴィラを連れてやってきます。

トニーはフランクのタレコミと知り、挑発的にフランクの前で、求婚の答えを求めエルヴィラに言い寄ります。激昂するフランクに、トニーは平然と挑発し、次第に、好戦的になっていきます。

さらにジーナを心配するトニーはチンピラを追い払い、コカインを吸うジーナを張り倒します。マニーはジーナを送り「トニーにとってきみだけが清いんだ」と慰めます。

トニーは、イラつき、独善的になり、危険になっていきます。

フランクは二人の殺し屋を送り込み、トニーの命を狙います。派手に乱射されるマシンガン、逃げ惑う客、飛び散る血、クラブは大パニックで修羅場と化しますが、何とか刺客を始末して難を逃れます。

トニーはフランクを訪ね、ケリをつけに行きます。メルも一緒でした、即座にトニーは状況を理解します。命乞いするフランクに、マニーに命じて殺させ、メルもトニーは殺してしまう。

トニーはエルヴィラを寝室に迎えに行き、事情を察したエルヴィラはトニーと

生きることを決意します。

こうしてボスはトニーに交代し、エルヴィラを奪い取ることにも成功します。

空には飛行船が飛び “The World is yours (=世界を君に)” の文字が浮かぶ。

周囲との軋轢と闘い、そしてトニーの壮絶な死に様。

トニーは新たなマイアミの麻薬王としてソーサとパートナーを組み、ビジネスを拡大していく。

新たに“モンタナ興行”を立上げ、エルヴィラとも正式に結婚し大豪邸を建てる。

全てが順調で絶好調だった。ビジネスは拡大し扱う金額は膨れ上がるが、マネーロンダリングに銀行の手数料も上がっていく。身の安全のための屋敷の警備費用も膨大になり、トニーは、過度に神経質になっていく。

エリヴィラとは夫婦喧嘩が絶えず、エルヴィラは「キューバ流れの成り上がり」と詰(なじ)る。マニーとの関係も強権的で、相棒ではなく部下としての扱いにマニーも辟易とする。

トニーは誰も信用できず、自身もコントロールできず、危うい精神状況になっていく。

トニーはマニーの薦める金を洗浄するユダヤ人と組むが、突然、脱税の容疑で逮捕される。これはFBIの仕組んだおとり捜査だった。

多額の保釈金で仮釈放されたトニーだが、弁護士にマネーロンダリングでの脱税の罪で懲役は免れないと聞かされる。

そんな時、トニーはソーサに招かれボリビアを訪れる。紹介されたのは政界、財界、軍の要人たち。彼らはソーサの麻薬ビジネスに加担して私腹を肥やしていた。

ソーサは懲役の一件を解決する代わりに、問題の解決の手助けを求める。

ソーサの抱える問題は、アメリカの麻薬撲滅委員会が捜査に乗り出しており、アメリカとコロンビアの麻薬の取引が、表ではトニーの問題になっているが、裏では政界、財界、軍関係者の癒着だった。

ソーサと関係するボリビアとアメリカの要人たちが疑われており、近々、国連議会の委員会でジャーナリストが演説の予定で、全貌が明らかにされる前に、口封じにその男を暗殺するようにとの依頼だった。

トニーは、この暗殺を引き受ける。

トニーはフロリダに戻り食事をするが、相変わらずエルヴィラに口汚く罵り多くの客の前で辱めを与える。ついにエルヴィラはトニーの元を離れる。成功はしたが、エルヴィラとの仲はうまくいかず、懲役への不安やいらだちもあり破滅的な道を歩み始める。

トニーはニューヨークに飛ぶ。エルヴィラの消息も知れず、マニーも連絡が取れない状況にイラつく。

トニーは、ソーサの部下アルベルトと組み計画に取りかかる。首尾よく車に爆弾を仕掛けるが、その日は妻と幼い娘二人が同乗していた。アルベルトは命令通り爆弾のスイッチを押そうとする。子供を巻き込めないトニーは、口論の末、アルベルトを撃ち殺してしまう。

これはソーサにとって、明らかな裏切り行為となった。

予定通り、国連演説が行われボリビアの政界と麻薬ルートは世界中にテレビを通じて暴かれた。また車に仕掛けてあった爆弾も発見された。

ソーサは約束を破ったトニーに憤り、追い詰める。トニーも興奮して受けて立つ。大量にコカインを吸引し、もう正気の状態ではなくなっている。

トニーとソーサの間は完全に決裂し、全面戦争となった。

ジーナの心当たりが分かる。母の家を出て別の所で豪奢な生活をしていた。母は落胆し、トニーに責任を問い「お前の触れるものは全て腐っていく」なじる。

ジーナを探しあてるとマニーもいた。マニーはジーナと昨日、結婚したばかりで二人でトニーを驚かすつもりだった。勘違いしたトニーは逆上して生涯の相棒だったマニーを撃ち殺してしまい、半狂乱になったジーナを車に乗せ自分の屋敷に向かう。

トニーは自分自身を見失い、マニーへの後悔でコカインを大量に吸引する。

そこへ狂人と化したジーナが微笑みながらトニーに発砲し右足を撃たれる。屋敷にはソーサの部下の殺し屋がたくさん侵入してきた。ベランダから飛び込んできた刺客がマシンガンを乱射してジーナを撃ち殺す。

トニーはジーナを抱きかかえマニーの事を詫び、後悔する。部屋の外には大勢の殺し屋が取り囲んでいる。トニーは復讐に燃えランチャーで大砲をぶちかまし「これが挨拶だと!」と叫びドアごと敵をぶっ飛ばす。

2階から階下を見下ろし、相手めがけてマシンガンを乱射し次々に相手を殺し壮絶な戦いを繰り広げる。自らも被弾しながら相手を殺戮していくが、背後から静かにすり寄った刺客がトニーにとどめを刺す。トニーは階下の噴水に落下し絶命する。

そこに飾られたオブジェには「世界はきみのもの」と刻まれていた。

この映画は何よりもチンピラからフロリダの麻薬王にのし上がり、そして破滅するまでの卑しさや生き様がギラギラと描かれており圧巻です。