映画『狼たちの午後』あらすじと解説/ここが見どころ!

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概要>杜撰な計画の銀行襲撃で、瞬く間に警察に包囲される。目当ての現金も無く、安全な脱出だけがソニーとサルの問題だった。人質、野次馬、TVカメラ、警察、FBI。晒されるソニーの私生活と神経質なサル。アル・パチーノとジョン・ガザールが演じる劇場型犯罪。

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登場人物

ソニー(アル・パチーノ)
主犯格として銀行強盗を決行する、心根は優しい男。
サル(ジョン・カザール)
ソニーの相棒で銀行強盗を共に行うが神経質で陰湿。
レオン・シャーマー(クリス・サランドン)
ソニーの同性愛の妻、正式に教会で結婚式をあげている。
ユージン・モレッティ(チャールズ・ダーニング)
現場を指揮するニューヨーク市警の巡査部長。
シェルドン(ジェームズ・ブロデリック)
FBI捜査官、警察に代わって現場を指揮。
マーフィーオマー・スアレス(F・マーリー・エイブラハム)
FBI捜査官、警察に代わって現場を管理。
アンジー(スーザン・ペレッツ)
ソニーの女房で二人の子を育てる、関係が醒めている。

あらすじ(ネタバレあり)

1972年8月22日、ニューヨーク州ブルックリン区、ごみごみとしたダウンタウン、ビル開発が進む工事の槌音、市街を急ぎ足で歩く人々、暑さを逃れ河畔に佇みブルックリン橋からマンハッタン区を臨む風景。その日はうだるような暑さだった。

30分で終わる銀行強盗が、予想外の展開に変わっていく。

14時57分チェースマンハッタン銀行ブルックリン支店を3人の男が襲うが、最初からスティーヴは怖気づき脱落してしまう。

残るはソニーとサル、慣れない手つきでマシンガンを取り出し支店長と行員や守衛など8人を威嚇する。

金庫を開けさせるが、現金は既に集荷されて予備が1,100ドルしかなかった。何とも杜撰な計画にもとづいた不手際な銀行強盗だった。

銀行の勤務経験があるソニーは、とにかくトラベラーチェックなど洗いざらいの金を集めて退散しようとする、そこに電話がかかる

電話口はニューヨーク市警のモレッティ巡査部長だった。

どこからの通報か、すでに銀行は警察に包囲されビルの上には狙撃部隊が配置されている。素早く強盗を行い早々に立ち去る計画は崩れ、事態は予定外の方向に展開した。

籠城するソニーとサルを、250人の警察が包囲する。

ソニーとサルは、人質をとって銀行に籠城する羽目になった。

鳴り響くパトカーのサイレン、集まりだす野次馬、行内では年長の銀行員が「なぜ、こんな無計画なことをしたのか」とソニーをなじる。

ソニーは支店長に協力をするように伝え、警察はすぐ射殺することをアッティカ刑務所の暴動事件を引き合いに説明する。支店長は全面的に協力すると言う。

FBIも訪れ、マスコミ各社もTVカメラを携え大勢やってきた、空にはヘリコプターが飛び回る。

250人の警察の包囲網が、銀行を取り囲んでいる。

モレッティはソニーと事件解決のために直接、話すことを望む。ソニーはこれに応じて病気で診察が必要な黒人の守衛をひとり開放する。

交渉をするソニーは、群衆の中でヒーローと化していく。

解放された守衛を犯人と誤認して警察は一斉に銃を向け騒めきたつ。その危うさに付き添っていた女性行員も警察の乱暴さに憤りをぶつける。

懸命に説得を試みるモレッティと警察の包囲の状況を確認するソニー。

警察官は皆、ソニーに銃口を向けている。

ソニーは、「アッティカ、アッティカ」と、アッティカ刑務所の囚人の暴動で州の軍隊が一斉射撃を行い無抵抗の囚人や人質が射殺された事件をアジテートし、野次馬もこれに呼応して叫ぶ。

ソニーは、人だかりの中で一瞬、体制に逆らうヒーローのようになっていた。

レオンへの愛情が銀行強盗の動機だったが、むなしく終わる。

ソニーの要求通り細君が来た。しかしそれは同性愛者で精神病院にいたレオンだった。

二人はきちんと神父の立会いの前で結婚をしていた。レオンはソニーとの関係を断とうと自殺未遂をして病院に収容されていた。

レオンは言う。「ソニーは妻と子どももありいい亭主で、むしろその両親が悪いのだ」と。

そんなソニーに、レオンは結婚を申し出た。

レオンは、体は男で心は女だった、そこで性転換手術を考えるが費用がとても高い。ソニーはその金を工面するために強盗をしたのだった。

夜になって停電になる、これまで静観していたFBIのシェルドンが動きだす。

シェルドンは行内に入り人質を確認、ソニーには君は救うが、サルは危険と呟く。

レオンはソニーと話し投降を促すが、ソニーは受け入れない。逆に、ソニーはレオンに、一緒に海外に逃避行するかどうかを訪ねる。デンマークやスウェーデンは性転換手術で有名だと誘うが、レオンは共犯になりたくないし病院へ戻ると言う。

そして、もうこれ以上、ソニーとは付き合いきれないと別れを告げる。

銀行強盗の動機のひとつだったレオンへの思いも打ち砕かれ、ソニーは落胆する。

ゲイの団体もやってきて、そんなソニーの心情を応援する。女房にも連絡をとるが、全く身勝手で意思の疎通ができない状況。さらにソニーの母親も説得に駆けつけるが話がかみ合わない。

人質解放の条件を飲み、いよいよ銀行を脱出する。

救出を目論む警察やFBIは、投降のためさまざまな関与者が手を変え品を変え説得に及んでいるが、客観的にその会話や風景は見世物であり喜劇であった。

全てを尽くし、FBIのシェルダンは10分後にソニーの要求通りに動き出すことを伝える。事態はいよいよ脱出の時に近づく。

ソニーは口述で遺書を残す。

「妻のレオンへ、どんな男よりもきみを愛す、遺産として10,000ドルの生命保険から2,700ドルを贈る。その金で性転換の手術を受けてくれ。妻のアンジェラには5,000ドルを贈る。君以外の女性を愛したことはない。この悲しみの時、愛を誓う、そして埋葬は軍隊葬を願う。」

いよいよ脱出の時、送迎車にはFBIの運転手が身を隠して乗り込もうとする。それを見破るソニーは、FBIのマーフィーを指名する。

計画の失敗とサルの射殺、そしてソニーは逮捕される。

何とか送迎バスに乗り込んだソニーとサル、人質たちはFBIや警察の護衛にはさまれて出発する。

やがて空港に到着する。用意されたジェット機が送迎車に近づいてくる。

FBIのシェルダンとマーフィーとソニーは飛行機に移動する最後の段取りに入る。シェルダンの一瞬の合図を受けてマーフィーが車に隠した拳銃でサルの眉間を打ち抜く。

観念するソニー、ぎらぎらした暑い夏の1日はこれで全て終わった。

その後、ソニーは20年の刑で服役、妻アンジーは子どもたちと生活保護を受けている。レオンは女性に転換して、ニューヨークに在住。

解説/ここが見どころ!

反体制、体制への不信のメッセージ、アッティカ刑務所暴動

劇中で包囲され窮地に立つソニーは警察の説得に対して“アッティカ、アッティカ”と連呼し、野次馬たち観衆もこれに賛同し呼応して大合唱になります。

この話は、1972年のニューヨーク州のアッティカ刑務所で囚人の暴動を指しています。暴動の目的は所内の生活状況の改善でした。

そこに集められた囚人はアフリカ系アメリカ人やプエルトリコ人が多く、所員は全員白人で看守らは公然たる人種差別者でした。そこで、2200人の囚人の1000人が暴動に参加し、刑務所を制圧して33名を人質にとります。

囚人の要求した交渉は不調に終わり強硬策で武力による制圧が行われ29人の囚人と10人の所員が死亡。

アッティカ刑務所の暴動事件は、この銀行強盗事件の前年に起こったもので記憶に新しく、権力の不当な圧力に対しての人々の記憶がソニーの野次馬を巻き込んでのアジテートとなります。

つまり権力の行き過ぎた横暴に対して反体制的な主張を人々が持っていたことの証でもあります。

“Dog day afternoon”での実際の事件と物語の劇場性

本映画は実際に起こった事件にもとづいて制作されたものです。

1972年8月にチェースマンハッタン銀行にて、銀行員7人を14時間に亘り監禁し犯人の一人はFBIに射殺され、映画の主人公になった犯人は、逃走後、逮捕され20年の刑に処せられます。犯人は銀行の窓口勤務の経験があり、ゲイの恋人の性適合手術の費用を得るためであったとのこと。

この大枠が同じの中で、映画では、

犯人のキャラクターとして本妻と同性愛者をもつソニーと刑務所から出てきた神経質なサルのコントラストが人質とのコミュニケーションの明暗をつくっています。

計画の杜撰さと銀行窓口勤務の経験が功を奏して、ある意味、ストックホルム症候群と呼ばれる人質の銀行員とソニーとの間で交わされる合理的な対応が、緊張感を和らがせるコミュニケーションとなります。

また、反権力の象徴としてアティカを連呼するソニーと野次馬たちのシンパセティックな関係。

本妻とゲイという理解しがたい関係が厳格な保守からリベラルな社会への許容、ライブな状態で母親や女房をTV中継に取込むマスコミの野蛮さや、その始終を現場からライブ中継するリアルな同時体験。

シドニー・ルメット監督は、 このような様々な劇場性の要素を社会派映画として、輻輳する人間描写に盛り込んでいきます。

実際の事件とは別次元での時代の空気、特に、撮影された70年代はアメリカンニューシネマのもつベトナム戦争後の平和運動や自由解放、体制への反抗などの時代テーマ性を反映しています。

Dog day は英語で“盛暑”の意味で、邦題の『狼たちの午後』とは何の関係もありませんが、猛暑の中で犬が舌を出しているシーンを想像してみると、どうしようもなく暑く、気だるく汗が止まらない、この事件すらが蜃気楼のような感じで、観るものをまさに現実と錯覚の交錯に陥らせます。

尚、実際の事件では、強盗計画は失敗したが、犯人は映画の収益の一部を供与され、その費用を恋人の手術費用にすることができ、性転換したその恋人は1987年にエイズで死亡。主犯は出所後、2006年に癌で死亡とのこと。

映画『スカーフェイス』1975年公開のアメリカ映画
1975年アカデミー賞6部門ノミネート、脚本賞を受賞
英国アカデミー賞主演男優賞受賞
アル・パチーノ35歳の迫真の演技で見せる社会派映画です。