映画『おくりびと』あらすじと解説/ここが見どころ!

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概要>納棺を行う「おくりびと」の様式美。日本独特の繊細さで死者を送る儀式として見事に完成させる。身を清め、仏衣を着せ、顔を整え、死に化粧をする。大悟を演じる本木雅弘の静謐で美しい所作、佐々木を演じる山崎務の死生観を滲ませた演技が素晴らしい。

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登場人物

小林大悟(本木雅弘)
元チェロ奏者、興行不振で楽団が解散。山形に帰省して求職し納棺師となる。
小林美香(広末涼子)
大悟の妻、ウェブデザイナー。大悟が納棺師となることに嫌悪し悩む。
佐々木生栄(山崎努)
NKエージェントの社長。妻と9年前に死別。以来、納棺師のキャリアを持つ。
上村百合子(余貴美子)
NKエージェントの事務員。佐々木を慕い、死んだら納棺してほしいと願う。
山下(杉本哲太)
大悟の同級生で役所勤め。母親のツヤ子の銭湯をマンションに建替えようとする。
山下ツヤ子(吉行和子)
山下の母親で、鶴の湯をひとりできりもりし、息子と建替えの件でもめている。
平田正吉(笹野高史)
鶴の湯の50年来の常連客で、仕事は、火葬場の職員。ツヤ子を葬送する。

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あらすじ(ネタバレあり)

大悟はチェロ奏者の夢が絶たれ、故郷へ帰省しNKエージェントに再就職。

大悟は、東京で未来を夢見てオーケストラのチェロ奏者として楽団に所属していたが、コンサートを開いても観客は少なかった。そんなときオーナーから、突然、楽団の解散が通告される。

大悟には、1800万円のチェロの借金だけが残った。さすがの額にウェブデザイナーで共働きする妻の美香も驚いた。「世界中の街が、僕たちの新居だ。演奏旅行をしながら世界中を旅して生きて行こう」これが大吾の美香へのプロポーズの言葉だったが、現実は厳しかった。

大悟はチェロを手放し、故郷の山形県酒田市の実家へ帰る。美香も賛成してくれた。

大吾の母親は2年前に死に、細々と経営していたスナック兼自宅が唯一、財産として残った。二人は、ここで人生を再スタートすることにした。ことのほか美香も田舎を喜んだ。

大悟は、さっそく新聞の求人欄で仕事を探す。そして「安らかな旅のお手伝い」とあり、さらに「年齢問わず」「高額保証」「実労働時間僅か」と書いてあるNKエージェントという会社に目が留まる。旅行代理店かなと思った。

大悟は、とりあえずNKエージェントを訪問してみると、事務員の上村百合子がいた。すぐに社長の佐々木が外出先から帰ってきて、大吾は即、採用となった。詳細を訊ねる大悟に、佐々木は給料は月50万、まずはアシスタントでと話す。

仕事は「納棺」。遺体を棺に納める仕事。「安らかな旅のお手伝い」ではなく「安らかな旅立ちのお手伝い」で、NKはNO-KANだと佐々木から説明を受ける。

大悟は、美香には冠婚葬祭関係の仕事とだけ伝えた。

仕事は納棺業、早速、大吾は宣伝用ビデオの遺体モデルにさせられる。

大悟は、NKエージェントに出社し棺桶をまじまじと見る。大悟は、海外にでかけていた時に母を亡くし死にめに会っていない。父親は6歳の時、女をつくって蒸発。祖父母はもう随分前になくなっており、棺桶というものをよく見たことがなかった。

納棺は、昔は家族で行っていたが、時代が変わり葬儀屋の仕事となり、さらに葬儀屋からNKエージェントのような納棺業社ができたと百合子は説明する。棺の値段も合板、金具付の二面彫り、総檜と素材と飾りの違いでランクがあることを知る。

さっそく大悟は、社長の佐々木から呼び出される。

そこでは佐々木が、NKエージェントの業務用のDVD作成にあたり、大悟を遺体のモデルに使おうと待っていた。そして「納棺の手引き」なる説明ビデオが撮影されていく。

初仕事は、死後2週間の老婆の遺体。大吾はこの先の将来を心配する。

大悟の始めての仕事は佐々木のアシスタントで、死後2週間経った一人暮らしの老婆の遺体だった。異臭漂う中、嗚咽しながらなんとか佐々木の助手を務めた。

佐々木の厚意で早めに仕事を解放されるが、帰りのバスの中、女子高生たちが臭いを気にしているのが気になり、大悟は、懐かしい鶴の湯に行き、きれいに体を洗う。

鶴の湯は昔のままで、常連の平田が湯上りでのんびりくつろいでいた。

そこで同級生の山下と出くわすが、山下は母親のツヤ子と、銭湯をマンションに建て替えるかどうかで喧嘩をしている。ツヤ子は銭湯を続けていくことをがんとして譲らない。

大悟は、その夜、「生」を確かめるように美香を抱きしめる。そして、自分は、この先どうなっていくのだろうと不安に思う。

それから、大悟は幼少のころ使っていたチェロを取り出すと、そこに “河原の石” が包んであるのを見つける。山形にはふるくから石文いしぶみの言い伝えがあり、石の形に思いを託す。その石は、父親が幼少のころ大悟に渡した石だった。大悟は、チェロを奏でながら、両親と過ごした頃を思い出す。

翌日、大悟は鮭が産卵のため川を上り死んでいく姿を見つめながら考え事をする。通りかかった平田はひとこと鮭に向かって「がんばれ」と言う。そこに佐々木が車で現れ一緒に納棺の仕事に向かう。

納棺の儀式に喪主は感謝し、大吾もその美しさに考え方が変わる。

大悟は、はじめて納棺に立ち会い、佐々木の仕事の姿を実際に見る。体を拭き、仏衣を着せ、死に化粧をし、最後に故人が使っていた口紅で唇に紅をさす。それは、冷たくなった人間を蘇らせ、永遠の美を授ける儀式のようだ。

佐々木は、冷静で正確で丁寧に続けていく。そのすべての所作は、静謐せいひつで美しかった。

大悟は、その夜、美香をつれて鶴の湯に行った。今日も50年通っている平田が湯につかっていた。鶴の湯のツヤ子は、両親が分かれたときの大悟の思い出を美香に聞かせ、マンションに建て替えようとする息子に対して、この湯がなくなったら皆が困るとしみじみと言う。

家で、酒を酌み交わしながら美香は大吾に「お父さんに会いたくない」と訊ねる。

大悟は即座に「会いたくない、会ったらぶん殴る」と言う。手から “河原の石” がテーブルにころがった。

大悟は、前日ひとりで納棺の仕事を終えて、朝出社する。そして何気なく百合子の身の上を訊ねてみる。彼女は帯広の出身だが、故郷を逃げるように山形に流れてきた。スナックで働いているときママの死で佐々木の納棺を見て、その縁でNKエージェントで働いているという。

美香にけがらわしいと言われ、友人からも非難され、辞めようと考える。

道でばったり、友人の山下と会うが「噂になってるぞ、もっとましな仕事につけ」と言われてとまどう。家では、美香が、大悟がモデルとなったNKエージェントのビデオを見つけ問い詰める。美香は、大悟に仕事を辞めるようにお願いするが、大悟は納得しない。

美香は「けがらわしい、触らないで」と振り切って実家に帰ってしまう。

翌日の仕事では、バイクの事故で死んだ娘の遺族は、事故を起こした娘の不良仲間たちに対して「一生、あんな仕事をして償うのか」となじる。友人の山下にも、妻の美香にも、そして仕事でも非難され、大悟はやりきれない気持ちになって納棺の仕事を辞めようと考える。

辞めることを告げに大悟は、NKエージェントの2階に住む佐々木の部屋を訪ねる。

佐々木は、ぽつりとなぜ納棺師になったのかを話す。生きていくもの、死んでいくもの、そこには佐々木の死生観があった。佐々木は女房を9年前に亡くし、佐々木が自ら妻を納棺し葬送している。それが、この仕事の最初のきっかけだという。大吾は、もう少し続けてみようと思った。

納棺、それは静謐のなか厳かに行われる儀式だと悟った。

東京から、山形の田舎に戻ってきて2か月、大吾は、この仕事をほんとうに続けていけるのだろうかと思いながら次の依頼に車で向かっていた。

佐々木は大悟に、納棺の儀をひとりで行ってみることを薦める。故人は、まだ若い娘だった。「それでは、ただいまより故人様の安らかな旅立ちを願いまして納棺の義、執り行わさせていただきます。皆さまどうぞ、お近くで見守り下さい。」

死者に向き合い手を合わせ、衣服で身体を隠し、拭き上げる。とその時、女性と思った体の下部に手が当たり男の仏であることを知る。佐々木が遺族に、死に化粧を男にするか女にするか故人の母親に確認する。故人は女性として送られた。

納棺が無事に終わった。喧嘩ばかりしていたという父親がやってきて、いっぱいの涙を浮かべながら、やはり俺の息子だと言って、大吾と佐々木に感謝の言葉を告げた。

クリスマスの夜、チェロを弾き人生を奏でる。そして美香が戻っきた。

クリスマスの夜、NKエージェントの事務所では、佐々木と百合子と大吾が、かごいっぱいのチキンを次々に頬張り平らげていく。それは、まさに生きていることを証明するようなむさぼり方だった。

そして大悟は、リクエストに応えてチェロで聖夜の音楽を奏でる。

チェロの音色は、佐々木の、百合子の、そしてそれぞれの家族の人生や思いでを見守るように、静かで美しく優しく流れていく。老若男女、宗派を超えて旅立ちを祈るように。

そして大悟は、納棺師の仕事を続けていくことを決心する。

雪解けのころ、美香が戻った。大悟の子を宿していた。ただ美香は、まだ大悟が納棺師の仕事を続けることに対しては、生まれて来る子供のためにも悩んでいた。

ツヤ子が死に大悟が納棺の儀を行い、見守る山下も美香も考えを改める。

そんな時に、大悟に連絡が入った。鶴の湯のツヤ子が亡くなったという。大悟は、ツヤ子の納棺の儀式を厳かに執り行う。ツヤ子の冷たくなった体を息子夫婦、そして美香も拭きあげる。そして、静かに、厳かに、美しく、最後のお別れをする。

山下は、大悟に感謝した。そして美香も納棺師の仕事が大切なことを知った。

火葬場の担当は、鶴の湯の50年来の常連客の平田だった。平田は、小さな声で「ありがとな、また会おうの」と呟き、棺桶の窓を閉めて、遺体を焼き場の中へ送った。

「母親の最期を見ていいか」と山下が、焼き場の平田に訪ねる。すると山下は頷きながら微笑んで、「死は門だと思う、死は、そこをくぐりぬけて次に向かう門。自分は門番として、ここでたくさんの人を送ってきた。行ってらっしゃい、また会おうの」と言ってうつむく。

山下は、そう言って点火のボタンを押した。ツネ子は焼かれ、山下は号泣した。

父が死に納棺の儀をつとめ、大吾は「おくりびと」の仕事を誇りに思う。

帰り道、大吾は河原で石を見つけ美香に渡す。「なに」と訊ねる美香に、大吾は石文いしぶみと答える。「昔まだ、文字がなかったころに人は石を探して相手に気持ちを伝えた」という。「貰ったほうは、石の感触や重さから心を読み解く」そんな話をする。

やがて桜の花が散るころ、電報が来た。受けとった美香は、大吾の父親が死んだことを知る。

大吾は、美香から連絡を受けるが、戸籍も抜いているのでもう関係ないという。その時、百合子が、父親の葬儀に行くようにお願いする。実は、百合子も、6歳の子供を残して駆け落ちをした過去があった。

大吾は、ある漁師町で父親の死を確認するが、顔を覚えていない。

忙しく遺体を納棺しようとする地元の葬儀社に対して、大吾は、自らが行うという。

美香は、地元の葬儀社に夫が納棺師であることを伝える。

そして丁寧に厳かに大吾は父の身体にひとつひとつ触れていく。拳を開くと、そこから固く握られていた「石文いしぶみ」がこぼれてきた。それは、大吾が幼少のころに、父に手渡した小さくてまあるい石だった。父は、づっと一人で生きてきて、最後まで大吾と交わした石を持っていた。

大吾は、父に納棺の儀を執り行う。それを優しく見守る美香。

大吾の眼に涙があふれ、幼いころの思い出がよみがえる。

そして大吾と美香は、その小さくまあるい石を掌に包み手を握り合った。