映画『ニュー・シネマ・パラダイス』あらすじと解説/ここが見どころ!

概要>いつも映写室のなかで過ごした幼い頃。大人になったトト=サルヴァトーレは30年ぶりにシチリアに帰郷します。アルフレードの言葉通り、長い年月を経たことで懐かしい思い出に再会できた。夢を
実現したトルナーレ監督自身の、映画と人生に込めた物語。

登場人物

少年期のサルヴァトーレ(サルヴァトーレ・カシオ)
幼いころは、トトと呼ばれる。映画が大好きで、いつもアルフレードの傍にいる。
青年期のサルヴァトーレ(マルコ・レオナルディ)
アルフレードに代って映写技師として働き、やがて初恋や兵役を経験します。
中年期のサルヴァトーレ(ジャック・ペラン)
有名な映画監督となりローマで暮らし、アルフレードの訃報に接します。
アルフレード(フィリップ・ノワレ)
映画館「パラダイス座」の映画技師で、トトを可愛がり、人生の師となる。
エレナ(アニェーゼ・ナーノ)
青年期のトトが、初恋をする青い眼の美少女。
マリア(アントネラ・アッティーリ)
トトの母親、夫を戦争で亡くしトトと妹を育てます。
神父(レオポルド・トリエステ)
映画館「パラダイス座」と兼用している教会の神父さん。

あらすじ(ネタバレあり)

映画に夢中のトトにとって、アルフレードは友達であり先生でした。

ある晩、サルヴァトーレは母からの電話で、アルフレードが亡くなったことを知ります。幼いころトトと呼ばれたサルヴァトーレにとって、 アルフレードは映画への情熱を教えてくれた人生の恩人でした。

アルフレードは、故郷のシチリアの小さな村にある映画館「パラダイス座」の映写技師でした。

パラダイス座は、村の広場に面し教会兼用の建物です。

第2次世界大戦の戦渦がようやく収まりかけた当時、映画館は、人々の唯一の楽しみでした。

保守的で厳格な司祭は、映画のキスシーンを事前に確認してアルフレードにその個所をカットさせます。

観客は、肝心なシーンがいつもカットされ文句を言いながらブーイングをするのでした。

アルフレードは、キスシーンをカットしたフィルムを缶に保存します。

トトは、それを欲しがりますが、アルフレードは、まだ子供のトトに渡すことはできません。

こうして、シチリアの村の人々は、スクリーンに映される恋愛もの、人間ドラマ、喜劇、西部劇、コメディなどさまざまな映画を観ては、自由で開放的な雰囲気に、泣き笑い歓声をもって、いつも賑やかに鑑賞しました。

トトも、俳優のセリフのひとつひとつを暗唱するほど映画の世界に熱中しました。

それは、小さな村からのぞく豊かな憧れの世界でもありました。

幼いトトは、来る日も来る日もアルフレードの映写室で映画を観ながら、作業を見て真似て、フィルムを触り、映写機の操作も覚えていきました。

アルフレードは、トトに仕事の邪魔ばかりされて閉口し何度も映写室からつまみだしますが、トトの夢中さに根負けし、いつしか二人は仲良くなっていくのでした。

トトにとって、アルフレードは映画のことを教えてくれる先生であり、友達でした。

トトは、映画の名セリフを通して人生を教わっていきます。

トトは、映写技師になり、初恋を経験し、やがて軍隊にも行きます。

トトの母親マリアは、ロシアの戦地に赴いたまま行方知らずの夫を待ち続けています。

トトと妹を育てることに懸命で、トトの映画好きやいたずら好きに苛立ちます。母は、映画などに興味を持つことをやめさせようとします。

それでも何があっても、トトは映画にたまらなく夢中でした。 やがて、トトの父親の戦死認定が下されます。マリアとトトは、悲しみの中にありました。

ある日、上映時間を終えても入りきれない多くの観客のために、アルフレードは映写のカメラを広場の壁に向け、壁面に上映します。

戦争の残滓の中で、この計らいは現実を忘れる幸せなひとときを与えてくれました。映画の魅力が人々を癒し勇気づけてくれます。

その時、映写中にフィルムの発火事故が起こります。火を消そうとして アルフレード は大やけどを負ってしまいます。トトは必死で助け出しますが、アルフレードは視力を完全に失ってしまいました。

映画館「パラダイス座」は全焼します。

トトは、建替えられた「新パラダイス座」で、アルフレードに代り映写技師として家族を養うために働くことになります。

キスシーンの検閲は、既に解禁され以前と変わらず人々は映画を楽しみました。

やがて青年となったトトは、栗色の長い髪の青い眼のエレナに出会い、初めて恋をします。

トトは自らカメラを回しエレナを撮影するほど夢中です。彼女は、銀行の重役の娘で、高嶺の花でした。

それでもトトは、アルフレードに恋の打ち明け方を相談します。

青い眼の女性は、最も手強いと言いながらトトのために王女に叶わぬ恋をする兵士の逸話をします。

気持ちを抑えきれないトトは、懺悔に訪れたエレナに向かって恋の告白をします。

戸惑うエレナに、トトは仕事が終わったら家の下でいつまでも待ち続けると告げます。

逸話の通り、兵士の身となったトトは、毎日、毎日、雨の日も、風の日も、王女であるエレナの家の窓の下に佇みます。

やがて、新年を迎えますが願いは届かずひとり映画館に帰ります。

その夜、エレナがトトのいる映写室に現れます。トトの思いは、エレナに届き抱擁を交わします。

エレナとの幸せな日々が続きますが、やがて彼女は、パレルモの大学へ行ってしまいます。

会えない日々が続く辛い毎日、そして嵐の夜、エレナは家を抜け出てトトに会いに来ます。

失恋し、悲しみのなかのトトを、アルフレードは非情に突き放す。

トトは入隊のためローマに発ちます。

見送りに来るはずのエレナは現れず、その後、音信不通になってしまいます。

除隊して帰ってきたトトでしたが、映写室の仕事は、もう別の男に変わっていました。

エレナも行方知らずのままで、失意のトトに、 アルフレード は非情にも言い放ちます。

エレナは、トトとは合わなかったのだ、そういう運命だったのだと。

村を出ろ。ここは邪悪の地だ。

ここにいると自分が世界の中心だと感じる。何もかも不変だと感じる。

人生は、お前が見た映画とは違う。

人生はもっと困難なものだ。

もうお前とは話さない、お前の噂を聞きたい。

トトは戸惑いますが、それが、アルフレードが示すトトへの愛情でした。

帰ってくるな。私たちを忘れろ。手紙を書くな。

ノスタルジーに惑わされるな。すべて忘れろ。

自分のすることを愛せ。

子供のとき、映写室を愛したように。

トトは、ひとりローマを目指して旅立ちます。

30年の時を経て、ローマで映画監督として成功を収めたトト= サルヴァトーレは、アルフレードの訃報の知らせを受け葬儀のためにシチリアに降り立ちます。

トトは、久しぶりの我が家に帰ります、家は改装されていました。

母は、幼いころの思い出の品々を残したトトの部屋に案内します。

葬儀の列に、懐かしい人達の老いた顔がありました。

映画が娯楽の時代は過ぎ去り、建物は解体されることになっていました。

遠い日の思い出の「新パラダイス座」を訪れ、懐かしむトト=サルヴァトーレ 。

母を捨てて、ひとり出ていったことを詫びると、母は「おまえのすることは正しいと思ったよ」と優しく応えてくれました。そして、この村にあるのは、まぼろしだけだと話します。

トトは、アルフレードの妻から形見を渡されます。それはフィルム缶でした。

解説/ここが見どころ!

アルフレードの人生と、トトの人生を思うアルフレードのやさしさ。

トトの愛するアルフレードとの再会は、葬儀でした。

アルフレードは、いつどんなときもトトのことを気にかけ案じた人生でした。

トトとは二度と会いませんでした、例え自分が死に瀕しても、彼に連絡することはありませんでした。

きっとアルフレードは、トトには、映画館の中の人生ではなく自分の大きな物語をつくってほしくて、このシチリアの小さな村で終わってほしくはなかったのでしょう。

映画を愛し、悔いの無い人生を送ったアルフレードだけれど、同時に小学校すら出ていないアルフレードが、トトに託す夢だったのかもしれません。

大人になって成功したトト= サルヴァトーレですが、彼は、未だ独身のようです。

母は、彼に結婚を願うのですが、 サルヴァトーレは、シチリアに帰ってみても、何も変わっていない。ずっと村にいたようだと語ります。

エレナは、思い出の中に生き続けています。

30年の歳月が流れても、トトが愛したのは、映画の中の人生だった。

サルヴァトーレは、ローマにもどりアルフレードの形見のフィルム缶を開けて映写します。

それは大人になれば渡すと、アルフレードが約束していたキスシーンのカットを繋いだフィルムでした。

サルヴァトーレは連続するキスシーンを大きなスクリーンに映し出します。

それは映画を愛し、アルフレードと過ごした思い出の日々であり、青い瞳のエリスだけがサルバトーレのただ一度の恋であり、それは映画と同じようにかけがえのない大切なものなのでした。

全編に流れる、せつなく美しいエンニオ・モリコーネの音楽とともに、映画に夢中だったこどもの時代、やさしく導いてくれたアルフレードの言葉。

うれしくもせつなく苦しかった初恋、青年を経て大人になったときに、遠くにめぐる思い出と、ふっと気づく歩んだ人生の長さ。

トト= サルヴァトーレは、アルフレードの教え通り人生に成功し、夢を持ち続けたからこそ、帰ってきたシチリアの風景を、昔と変わらずに感じとることができたのでしょう。

中年を迎えるトト= サルヴァトーレ にとって、シチリアも、アルフレードも、エレナも、全てはパラダイス座に映される人生のドラマそのものだったのです。

映画の中で過ごした少年期から青年期、そして夢を追い続け、 映画監督となり、夢を実現をしたトト= サルヴァトーレ 。そのことを誰よりも喜んでいるアルフレードの姿が目に浮かびます。

映画『ニュー・シネマ・パラダイス』夢を忘れずに生きることの大切さを教えてくれる不朽の名作です。

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