映画『ミリオンダラー・ベイビー』あらすじと解説/ここが見どころ!

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概要>100万ドルを獲得する夢とその現実、そして尊厳死という大きなテーマを女性ボクサーのマギー、年老いたトレーナーのフランキーと相棒のエディの視点で描く。尊厳を支柱に生とは何か、死とは何かを考させられるクリント・イーストウッド監督の珠玉の名作。

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登場人物

フランキー・ダン(クリント・イーストウッド)
かって最高の止血係で、今は年老いてトレーナーとなりジムを経営している。
マギー・フィッツジラルド(ヒラリー・スワンク)
貧しい家庭で育ち家族の愛情も無い中で、ボクシングに全ての夢を賭けている。
エディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス(モーガン・フリーマン)
若いころにフランキーをトレーナーとしたが失明し、老いた今はジムを手伝う。
ビッグ・ウィリー(マイク・コルター)
フランキーが手塩にかけて育てたが、タイトル戦のためマックのもとへ移籍する。
ビリー(ルシカ・ライカ)
ウエルター級の世界チャンピオンで、マギーの挑戦を受けるが反則行為を行う。
ホーヴァク(ブライアン・オバーン)
フランキーが毎週、日曜日に礼拝するカソリックの神父でマギーの件で相談する。
アーリーン・フィッツジラルド(マーゴ・マーティンデイル)
マギーの母親で、娘のファイティングマネーの金を妹と共に横取りしようとする。
マーデル・フィッツジラルド(リキ・リンドホーム)
マギーの妹で、不正に生活保護を受けており母親と共に金を横取りしようとする。
ミッキー・マック(ブルース・マックヴィッティ)
タイトル戦をアレンジする腕のいいコーチで、ウィリーをチャンピオンにする。

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あらすじ(ネタバレあり)

メインイベントの試合で、ビッグ・ウィリーは目の上を切られます。ボクシングの試合では出血した場合は、止血しないと試合が再開できません。フランキー・ダンは素早く止血をします。その後、ウィリーは反撃にでて最後は相手をKOで仕留め、次は世界タイトルを戦うことに燃えています。

年老いたトレーナーのフランキーは「ボクシングは、尊厳のスポーツ。人の尊厳を奪い、それを自分のものとする。」そういう熾烈な戦いだと考えています。

名トレーナーのフランキーを慕い、女性ボクサーのマギーが現れる。

ウィリーの試合を会場の片隅からじっと見る女性ボクサーのマギー・フィッツジラルド。試合後、彼女はフランキーが控室から出てくるのを待ってトレーナーになって欲しいと懇願しますが、女性は指導をしない主義だと断らわれてしまいます。

フランキーは、ロサンゼルスにあるうらぶれたボクシングジム “ヒット・ピット・ジム”を、相棒のエディとほそぼそと経営しています。フランキーは、かって“止血の名人(カットマン)”と呼ばれるほどの男。エディも若いころフランキーのトレーニングを受けた元ボクサーで、今は雑用係全般で住み込みで、ジムで働いています。

フランキーには娘ケイティがいますが、音信不通で手紙を送っても宛名不明で返送されます。父娘の関係は冷めてしまっています。毎週、アイルランド系のカトリック教会のミサにも通いますが、神の存在をあやしく思っておりまじめな態度ではありません。

マギーがジムで練習をしています。エディは彼女の素質を見抜きます。女性ボクサーを育成しない方針のフランキーですが、すでに半年分の費用を受け取っていることをエディに聞き、しぶしぶ納得します。

エディは、夜遅くまで練習をするマギーに「サンドバックをただ叩くのではなく、絶えず動く人間だと思え」とアドバイスをします。

フランキーは、マギーに女性ボクサーを育成するジムへ移ることをアドバイスすると同時に、31歳の年齢では、トレーニングするのに5年かかり、今からでは遅すぎることを伝えます。

マギーの素質と懸命さに根負けして、ジムにいることを認める。

ある晩、ウィリーはフランキーを訪ね、別のジムに移籍することを告げます。慎重で言葉足らずのフランキーは、ボクサーの安全を考えるあまりにタイトル戦を組むことを避けます。

ウィリーは、タイトル戦に慎重なフランキーに対して、大きな成功を掴むために敏腕なマネジャーと組みたいと言います。ウィリーは、タイトル戦をプロデュースしてくれるミッキー・マックと組むことを決め、フランキーのもとを去りました。

フランキーは寝耳に水の状態で、大切に育てたウィリーが辞めたことに落胆します。

ウィリーの恩知らずの態度にエディも怒りますが、同時にエディは、フランキーに対して「タイトルの挑戦に対して慎重すぎる」と言うと、フランキーは「戦うだけならできるが、勝つためには十分な準備が必要だ」と言い返します。

フランキーは昔、まだ時期尚早だったエディにトレーナーがタイトル戦を組みその結果、エディは右目を失明して再起不能になった過去を蒸し返します。エディは、それでもチャンスをもらい悔いのない戦いをして光栄だったと反論します。

フランキーはマギーの素質と本気度を知り、厳しい訓練を行い続ける。

やがて、ウィリーはタイトル戦に挑戦し、ノックアウトでみごと新世界チャンピオンになります。

自宅のテレビで、その勇姿を観戦していたフランキーは、ジムに戻りエディと会います。二人は若いころの思い出を語り合います。そして遅くまで練習するマギーを見て、彼女の真剣さと本気を感じます。

その日は、マギーの誕生日でした。彼女は32歳になります。

マギーはロサンゼルスで13歳の時からウェイトレスを続け、客の残した食べ物を持ち帰り、それを自分の食事にしながら半年分のお金を貯めてジムに通っています。

貧しい家庭で、弟は刑務所、妹は不正申請で生活保護を受け、父は死に、母は145キロのデブ、田舎で中古トレーラーの中で暮らすのが相応なところをボクシングに夢を抱いてこうして練習していることをフランキーに訴えます。

そして別のトレーナーを紹介しようとするフランキーに、フランキーでなければ不要だと断ります。そしてフランキーがトレーナーになってくれるのなら必ずチャンピオンになれると訴えます。

フランキーは、マギーの熱意に根負けしてトレーナーを引き受けます。そして条件をつけます「何も質問をせず、ただ “はいフランキー” とだけいうこと」と「基礎を身についたら別のトレーナーをつけること」の2つでした。

フランキーとマギーは固い絆で結ばれ、マギーは実力をあげていく。

こうしてマギーはフランキーと共にミリオンダラー(100万ドル)に挑むボクサーを目指します。

来る日も来る日も、フランキーはマギーをトレーニングし、来る日も来る日も、マギーはフランキーのトレーニングに応えていきます。

試合にはやるマギーですが、フランキーはトレーニングをつませていきます。

マギーはあるとき、フランキーの家族のことを尋ねます。フランキーには、唯一、娘のケイティがいますが疎遠な関係になっています。フランキーもまた、孤独で寂しい人生でした。

試合をしたいマギーは「いつ試合させてくれるの?」とフランキーに尋ねます。フランキーは、マネジャーのサニーをマギーに紹介します。マギーは、初めて試合を行いますが、サニーのコーチでは打たれっぱなしです。観客席からたまらずフランキーが、かけよります。

フランキーは、サニーとコーチを交代します。そして適切なアドバイスを授け、マギーは相手をノックアウトします。試合で鼻の骨を折ったマギーに、フランキーは「常に自分を守ること」を伝えます。

そしてフランキーは正式にマギーを自身のトレーニングによってファイターとして育てることを決め、さらに厳しく育成していきます。

そして、マギーは試合に勝ち続けます。フランキーとマギーの間には固い絆が芽生えます。

やがて対戦の相手が敬遠し始めて、フランキーは、ひとランク上のウェルター級でマギーを戦わせます。最初の試合こそ苦戦しましたが、その後、連続12KO でいいオファーが続きます。

マギーは全戦全勝の勢いで、ついにミリオンダラーのチャンスを掴む。

そして、ウェルター級タイトルを賭け “青い熊” ビリーが、マギーを指名してきます。

ファイトマネーは100万ドル。フランキーは50:50の取り分でオファーを受けます。

彼女は東ベルリンの娼婦あがり、汚いファイトで有名でした。相手を殺しかねない反則をしますが、観客は血を見て喜びます。ボクシングとは、そういうものであることをフランキーは知っています。

ある日、エディはマギーを誘い誕生日をダイナーで祝います。エディはマギーに33歳まではやれると話し、自身が39歳まで現役だったこと、そして37歳でフランキーに出会い、彼は最高の応急措置(止血)ができる男であったことを話します。

エディは109回を戦い、4ラウンド目で左目の傷が開き、血が目に流れ込んだ。そして制止を聞かず、15ラウンド戦い抜いて判定負け。翌朝、失明したことを語ります。

そのこともありフランキーは危険な試合はさせない考えであることをマギーに伝え、あらかじめダイナーに呼んでいた敏腕なミッキー・マックを紹介して去っていきます。マックは、ウィリーをチャンピオンにした男でした。

それでもマギーは、エディの意見を受け入れ、マックとは組まずフランキーのもとへ戻ります。

フランキーは、幾度となく娘のケイニーに手紙を出しますが、常に差出人のもとへ返却されていました。

「モ・クシュラ」のガウンを纏い、観衆の喝采を浴びるマギー。

やがてフランキーは、マギーと英国のチャンピオンとの試合をアレンジします。

試合の日、アイルランド語で“モ・クシュラ”と背中に刺繍された絹のガウンを、フランキーはマギーにプレゼントします。そしてマギーはリングに上がります。

若くて強くて経験のあるチャンピオンでしたが、マギーはノックアウトで勝利します。

観衆は、“モ・クシュラ” 、“モ・クシュラ” 、“モ・クシュラ”と喝采を送ります。

マギーは、ファイトマネーで母親に家をプレゼントします、家族皆が住める広い家でした。ところが母親は生活保護が打ち切られるといってマギーの厚意を感謝しません。薬も健康保険が切られて飲めなくなるといいます。そして、家なんか買わないで金をくれればいいのにと言います。母親はマギーがボクシングをしていることを快く思っていませんでした

傷心のなか、帰りの車でマギーは幼いころの優しかった父親のことを思い出します。

そして愛犬のアクセルと遊んだこと、体の弱い父親は、ある日、事故で後ろ足が動かなくなったアクセルを山へ連れていき殺して埋めます。体が不自由になった犬への父親なりの愛情の証でした。

マギーはお気に入りのドライブイン “アイラのロードサイド食堂” の美味しいレモンパイを食べながら、フランキーに優しかった父親の面影をかさねます。

フランキーはマギーに音信の途絶えた娘をかさね、親子のように語らうのでした。二人は固い絆で結ばれていました。

タイトル戦でのビリーの反則で、マギーは全身麻痺の状態になる。

“青い熊” ビリーとラスベガスでのタイトル戦が決定します。

マギーは“モ・クシュラ”のガウンを着てリングに上がります。ゴングが鳴り一進一退の攻防が続きます。マギーとビリーは、激しく打ち合いますが、次第に劣勢のビリーは幾度となく反則をします。

それでもマギーの優勢が続く中、マギーはラウンド終了のゴングの後に、ビリーの背後から放った反則パンチで左側頭部を椅子で強打し、失神してしまい病院へ運ばれます。

マギーは第1頸椎骨と第2頸椎骨が損傷し脊椎が働かず、一生、全身麻酔の状態になります。人工呼吸で四六時中、酸素を送り込まなければなりません。フランキーは、6時間かけてラスベガスの病院からマギーをリハビリの病院に移送します。

マギーの家族がディズニーランド帰りの格好で見舞いにやってきます。そして、母親は弁護士を同道してマギーの財産をすべて名義変更しようとします。愛情のかけらもない母や家族に、マギーは深く傷ついて、追い返し絶縁します。やがてマギーの左足は壊死して切断されます。フランキーは必至でマギーを励まします。

マギーは、“モ・クシュラ” の意味を改めてフランキーに尋ねます。

マギーはフランキーに、こんな姿では、生きる望みがなくパパが愛犬のアクセルにしたように、愛すればこそ、殺してほしいと頼みます。そしてマギーは、フランキーと共にボクシングの試合で世界中を旅したこと、観衆の喝采と “モ・クシュラ”の歓声を背に受けたこと、雑誌にも出て夢を叶えることができ、何も思い残すことなく悔いはないと言います。

鳴りやまぬ歓声を誇りに、マギーは尊厳死を選びフランキーは実行する。

マギーは「自分は悔いなく生きたので、その誇りを奪わないで」と言い尊厳死をフランキーに願います。フランキーは「自分には出来ない」と断ると、その夜、マギーは自ら舌を噛み切りました。

フランキーは神父に相談しますが、神父は「手を貸せば、生涯、悩み続けるだろう」と言います。

フランキーは「マギーは死にたがっていて、俺は彼女を守ってやりたい」と言います。手を貸すことは犯罪であることを知りながらも「マギーを生かすことは、殺すことだ」と苦悶します。

神父は「何もせずに身を引き、すべてを神にお任せするのだ」と言います。

フランキーは「マギーは神ではなく、俺に助けを求めている」と深く苦悶します。

エディは「何か隠しているか?」とフランキーに尋ね、「マギーは1年半で世界チャンピオン戦にガッツで挑戦できた、素晴らしいことだ。人間は毎日どこかでだれか死ぬし、多くの人は人生を悔いながら最期を迎える。マギーには悔いはない、彼女が最後に思うことは “いい人生だった” ということだ」とマギーの今の気持ちをフランキーに告げます。

フランキーは決心します。病室に入りマギーに「いいかい、呼吸装置を外すよ。そして注射を1本打つよ」といいます。そして、マギーにそっとキスをして “モ・クシュラ” は、“愛する人よ、お前は私の血” という意味であることを伝えます。

そして、フランキーは呼吸装置を外し、マギーが苦しまずに死ぬことができるように、何人も殺せる量のアドレナリンを注射針から管に注入していきます。マギーの心電図は止まります。

その後、フランキーは心虚ろに病室を出ていきます。

エディは、やがて戻るであろうフランキーをジムで待ち続けましたが、フランキーはついに戻ってはきませんでした。エディは、フランキーがいなくなったことを娘のケティに向けて、届くあてのない手紙に綴ります。

解説/ここが見どころ!

●尊厳のスポーツであるボクシングと、マギーの最後について。

100万ドル(ミリオンダラー)に挑戦する物語であると同時に、難しい尊厳死をテーマにしている。

そして冒頭にフランキーは、ボクシングは “尊厳のスポーツ” と定義している。

貧しい家庭で育ったマギーが、のし上がるための手段がボクシング。優しかった父親が死に、貧しさゆえに家族の愛も変質し、金だけしかない関係。自身の力で家族に幸せを呼び戻すつもりが、その家族の絆まで失くしてしまい、孤独と無力にさいなまれる。

残されたのは自身の可能性のみ。自身のアイデンティティを自身の肉体そのもので挑戦したボクシングという生き方。全身麻痺の自分に残された唯一の誇りは、その尊厳を守り自死すること。

そこに人生の敗者となった老トレーナーのフランキーと相棒のエディが重なる。

フランキーは、エディの過去を知っていることも、彼をさらに慎重にさせる。だから体を傷つける危険な賭けには出なかった、しかしボクシングの世界では、そこが挑戦者の思いと異なりウィリーのように袂を分かつ原因にもなってしまう。

逆にエディは、尊厳の結果として自身の失明での再起不能を受け入れている。だからこそマギーの気持ちが分かる。ジムに来た時の練習風景から全戦全勝の破竹の勢い、タイトル戦の獲得そして全身麻痺という絶望のなかにおいてさえ理解できる、たくさんの人々の生き死にと比較して、それがボクシングの宿命だと考えている。

そして、本質はフランキーも思いは同じである。

●物語の中の尊厳死が問う生きる意味と、死ぬ自由について。

そこでフランキーは、マギーの望む尊厳死を幇助ほうじょする。“神”がこれを天上からみている。

伏線として神父は「手をかせば生涯、悩み続ける」という。カソリックは自死を認めない。フランキーは「マギーは神ではなく、俺に助けを求めている」と言う。そしてエディは、ボクシングをする人間の尊厳として「マギーに悔いはない」とフランキーにボクシングを愛するものとしての考えを、マギーに代わって伝える。

フランキーが、アドレナリンの注射針を2本持ち、マギーに1本打って、残りの1本はどうしたのかは謎のままである。マギーのお気に入りだった “アイラのロードサイド食堂” の美味しいレモンパイを食べながら「こんなに美味しいなら死んでもいい」というセリフがあった。残りの1本はどうしたのだろう。

フランキーはマギーを娘のように思うからこそ、そしてマギーはフランキーを父のように思うからこその幸せな時間だった。フランキーも自殺したのだろうか。

ボクシングを通して親子の関係以上の分かり合える絆だからこそ、マギーはフランキーに尊厳死を願った。マギーはそう思い、フランキーはそれに応えた。

普遍的な価値として “尊厳死” を語ることは、国や宗教や価値観も異なるので、非常にセンシティブだと思う。ただし物語を通じて理解できる部分は大きい。

当然ながら、その判断は意識の正常な本人の決断であるし、同意は肉親や限りなくその関係に近い代理人であるべきかと思う。換言すれば、この状況下で死ぬ意味は、生きる意味よりも優位である。

重いテーマの作品である。信頼する人間同士の長い時間の絆の上に、判断できる感情も存在する。そして医療や法の整備も研究し、より良い選択が提示される必要がある。そしてその結果としての尊厳死の選択ならば、私は肯定したい。

クリント・イーストウッド監督
映画『ミリオンダラー・ベイビー』2004年年公開のアメリカ映画
2005年 第77回アカデミー賞 作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞 受賞
第62回 ゴールデン・グローブ賞 監督賞、女優賞 受賞
尊厳死をテーマに、ボクシングを通して真の絆を深めた二人の生と死の意味を問う作品です。