映画『マルサの女2』あらすじと解説/ここが見どころ!

概要>伊丹監督が描きたかった第2弾。宗教法人「天の道教団」を脱税のハンドバックにする裏の顔、三國廉太郎演じる鬼沢鉄平。大型開発案件の地上げと利権に群がる政治家、銀行家、建設業等の巨悪に対して宮本信子演じる亮子たちマルサの戦いは勝利するのか。

登場人物

板倉亮子(宮本信子)
国税局査察部の査察官、おかっぱとそばかすが特徴のマルサの女。
花村(津川雅彦)
国税庁査察部統括官、亮子の上司で査察チームの現場の指揮を執る。
佐渡原(丹波哲郎)
国税庁査察部管理課長、政治家の圧力に屈せず、ガサ入れを強行する。
伊集院(大地康夫)
国税局査察部査察官、マルサのジャック・ニコルソンの異名をもつ。
三島(益岡徹)
東京大学卒業の大蔵キャリア官僚出身で亮子の部下、出身校を自慢する癖がある。
鬼沢鉄平(三國廉太郎)
天の道教団の館長、宗教法人を隠れ蓑に脱税、ヤクザを操り地上げを行う。
赤羽キヌ(加藤治子)
天の道教団の教祖で、鬼沢の妻。鬼沢が女を作るたびに衝動買いをする。
受口繁子(柴田美保子)
鬼沢の家の女中で教祖・キヌの側近。鬼沢を慕い関係をせまる。
猫田(上田耕一)
天の道教団の幹部で鬼沢の腹心、ヤクザを使い地上げを仕切る責任者。
チビ政(不破万作)
猫田配下のヤクザで、ダミー会社をつくり地上げを行うが、殺される。
漆原(中村竹弥)
大阪出身の代議士で、議員に影響力を持ち鬼沢も巧みに操る政界の大物。
猿渡(小松方正)
代議士。漆原の腹心で鬼沢を紹介するが、花村の取り調べに落ちる。

あらすじ(ネタバレあり)

利権に群がる、自ら手を汚さない政財界の大物たち。

東京湾で、腐乱した死体が発見される。

“地上げ屋同士の血の粛清か”、新聞はどぎつい見出しを書きたてる。

新聞記事をネタに、男たちが集まっている。口々に「代わりの地上げ屋がいるな」「もう100億は突っ込んでいるから、金利だってばかにならない」「喜ぶのはこいつの銀行だけだ」「超高層ビルが建つ土地はあそこしかないから」「ここは漆原先生に大号令を発してもらいませんと」「わしは表に出れんから」など貪るようにカニを頬ばりながら話している。

集まっているのは、商社、建設業、銀行、代議士の面々。利権に群がる、貪欲な人間たちだ。

「地上げ屋など使い捨てだ」大物政治家の漆原は、吐き捨てる。

そして、腹心の政治家、猿渡に新たな地上げ屋を用意するように指示する。

新たな地上げ屋として、鬼沢が引き受けることになった。

鬼沢は、悪夢にうなされている、女中の繁子は、鬼沢の寝汗を拭ってやる。“天の道教団”は、新興宗教で、教祖の名前は、赤羽キヌ。鬼沢は館長でありキヌの夫である。

キヌは、滝に打たれ身を清め、その水を聖水として喜捨をあつめていく。

教団の外では、国税局査察部査察官の板倉亮子と、同僚の伊集院は、望遠鏡で教団内を内偵を進めている。宗教法人自体は非課税だが、宗教法人以外の事業については税金がかかる、“天の道教団”は、宗教以外の事業で収益があり脱税の疑いがある。

ある日、金貸しの紹介で、男が鬼沢のもとへ救いを求めにやってくる。サラ金に追われており500万の借用を無心する。男の仕事は中央駅の手荷物預かりの主任で、“担保”として娘の奈々を差し出す。鬼沢は、さまざまな汚い商売もしている。

一方、政治家の猿渡たち一行は、港町7丁目の地上げの視察で経過報告を受ける、既に底地買いは済んでいるが、残り50世帯の借地がある。この地上げが必要だが、報道カメラマンや大学教授など数世帯、手強そうなところがある。

そこでまた、新たな強面の地上げ屋が送り込まれた。それが、鬼沢であった。

鬼沢の腹心の猫田は、ヤクザを使って港町7丁目の地上げを行う。報酬は1件当たりの立ち退きで1,000万円。鬼沢は言う「愛情と脅し、創意工夫でがんばれ」と。

まず、ダミー会社を登記する。チンピラのチビ政を社長に、名前は “マサエンタープライズ”。すでに山銀から地上げ資金の200億の融資が入ることになっている。

あの手、この手を使った手荒な地上げ行為が進んでいく。

さまざまな地上げ工作が始まる。

浮浪者を集めて団地の廊下に座り込みさせたり、ドーベルマンを放し飼いにしたり。

それでも頑張る手強い相手には、個々の弱みをついていく。

三代続いた“日の出食堂”には、チビ政が、泣き落としを図るが、無理と分かれば、「借地権に守られているだけのくせに」と恫喝し、会社務めの娘の安全を脅迫する。屈しない亭主に、鬼沢が乗り込み、若いものが失礼したと切り落とした手首を見せる、戦慄する亭主はサインをするが、手首は造り物でヤクザたちは高笑いする。

報道カメラマンの清原には、1日24時間昼夜を問わずの自宅への電話攻撃、隣室からの騒音、幼稚園に通う娘への脅しなど、嫌がらせのかぎりをつくす。

清原が、銀行の過剰融資と地上げの現状をスキャンダルとして暴くと乗り込み、鬼沢の地上げの手荒な手口を暴きテープと写真に収めるが、逆に5000万で買収され、その会話をビデオで押さえられ、自ら委任状にハンコをつかせる。

鬼沢の宗教法人“天の道教団”の館長は表の顔で、裏の素顔は手広く事業を行い、政治家の紹介で地上げを引き受ける悪徳な人物であった。

すでに500万の担保として預かった奈々も鬼沢の愛人にしている。

亮子と三島は、天の道教団を調べるが証拠が掴めない。

亮子に、部下がついた。東京大学法学部卒業し大蔵省キャリアの三島という。

亮子は三島をつれて鬼沢について情報を共有する。

鬼沢は、ラブホテルやパチンコ屋、クラブなど手広く事業を行っており、その収益から3割くらいを抜いて天の道教団に流し込んでいるようだ。

亮子は、港町税務署の後輩と偶然に出くわし、一緒に天の道教団の中に入る。鬼沢の腹心の猫田は、税務署に教団の施設を案内する。お守りや絵馬、写経、永代供養料や信者たちの御喜捨などの収入源の項目を説明し、宗教法人の公益事業は非課税のため税務上の何も問題がないことを確認する。

キヌの部屋で高価な毛皮をいくつも所有していることを確認するも、教団信者から強引に追い出されてしまい、結局、内部からは、宗教法人以外の事業のシッポは掴めない。

大学教授の米田も、地上げの手強い相手のひとりだが、自治会の取りまとめを条件に立ち退き料を3倍にふっかけてきた。しかし、鬼沢の罠で、繁子と美人局をしているところを盗み撮られ、スキャンダルを恐れてマンションを明け渡す。

地上げがすべて終了し、その報酬はそれぞれに按分される。

記念のパーティで、キヌは毛皮を自慢し、奈々は鬼沢の子どもをお腹に宿していた。

その手腕を見込んで、漆原は鬼沢に、自身の土地18億の税金のかからない方法を相談する。鬼沢はチビ政に18億の金を貸し、漆原の土地18億を代物弁済とする方法を教える。

亮子は内偵をすすめ、鬼沢の脱税のからくりを暴いていく。

亮子と三島のチームやマルサの面々は、鬼沢の関係している事業を調べていく。

クラブの売上金の届け先を追尾して、繁子のマンションが隠れ事務所になっていることが判明し、実質のオーナーは鬼沢であることを突きとめる。またソープランドへは三島が潜入して情報を収集する。ソープランドの売上金は、あの500万を貸した中央駅の荷物預かりの男の所を経由して繁子がピックアップして運んでおり、これも繁子のマンションに運ばれていた。

さらに亮子と三島は、役所を訪問し天の道教団の認可申請を確認する。そして申請時の住職を訪ねてみると、鬼沢が、住職に袈裟を着させて自身と一緒に偽造の写真をとり申請した経緯が掴めた。虚偽の申請であり、宗教法人としての法人格に疑義があることを突きとめた。

亮子は、さらに酒乱の夫にDVされる主婦を装い、教団に潜入する。ご本尊で世界に3つしかないという10億の水晶玉に向かい、教祖様が祈祷し気を授かろうと信者が踊り狂っていた。

夜寝静まった後、亮子はこっそりと調べ始めるが、人の気配がする。鬼沢がやってきて、ご本尊の祀られた祭壇の後ろが引き戸になっていて階段があり別の部屋があるのを発見した。

天の道教団はじめ関係個所に、ガサ入れが決行される。

国税局査察部では、鬼沢が宗教法人をハンドバックにして脱税しているとしてガサ入れに着手する。

宗教法人が対象であり、また大物政治家との関係もあり、失敗は許されない。すべての責任を管理課長の佐渡原が持ち、ガサ入れは明朝8時とした。

教団施設、マサインターナショナル、繁子のマンションなど一斉に捜査官が突入する。

隠れ部屋から表へ逃げ出そうとする鬼沢だが、亮子に阻まれ身柄を拘束される。

ご本尊の背後の階段を上っていくと鋭い音波が出ており攪乱されるが、花村は必死の思いで駆け上がり詰めスイッチをきる。隠し部屋を発見し、金庫室の資料を押収する。

漆原は国税局に調査の中止を申し立てに来るが、佐渡原はこれに従わない。

繁子は、マンションの自分の部屋から証拠を持ち出し、階上へ逃げ出すも、査察官に取り押さえられて証拠を押収される。

マサインターナショナルでは、チビ政は3億は漆原への献金などではなく自分が遊びで全部使ったとしらを切る通している。

花村は鬼沢へ18億の代物弁済の疑いを追求する。「なぜ国会議員の漆原が、チンピラのチビ政の18億の借金の保証人になったのか」と執拗に迫る。

鬼沢は落ちるが、次々に行われる口封じで最後に巨悪は笑う。

花村の尋問に対して、鬼沢は、「誰かが汚いことをやらなければならない、政治家や大企業のお偉いさんが自分の手を汚すか、日本のためにやっているのだ。」と言い、自らを自の拳で殴り、壁に頭をぶつけ血を流し、国税庁は納税者を殴るのかと尋問の違法性をでっち上げようとする。

三島は、金庫にあった鬼沢の日記と数字だけがバラバラと並ぶ帳簿を照合し、暗号を解き、繋げることでひとつの記録となっていることを突きとめる。それは地上げ屋と政治家への闇献金の明細を記すノートになっていた。

花村は、漆原の腹心の代議士の猿渡を、参考人として国税に呼ぶ。

疑義をかけられていることに憤慨して見せる猿渡だが、政治家に群がる支持者、苦労の尽きない政治家の仕事などへの同情など花村の巧みな泣き落としの説得に、猿渡は賄賂の事実を認めてしまう。それを聞いた漆原は激怒し、猿渡を罵倒し足蹴にする。

早々に、口封じの手が伸びる。

マサインターナショナルのチビ政は何者かに白昼、銃で撃たれ殺される。伊集院はチビ政が死んだことを鬼沢に伝える。

10億のご本尊はただのガラス玉であることも調べがついた、鬼沢は、もはや追い詰められ逃れ切れなくなっていた。その時、向こうのビルの屋上から銃声が鳴る。鬼沢は狙われ、間一髪、助かった。

鬼沢も所詮、“トカゲのしっぽ”だった。誰かが、鬼沢を亡き者にしようとする。

そして今度は、東京湾に鬼沢の腹心の猫田の死体が浮かんだ。

鬼沢は、奈々の手を携えて、自分用に作った墓の中に逃げ込んだ。墓の中には純金に変えた隠し財産がうなっていた。鬼沢は、何としても生き延びようとする。

開発予定地では地鎮祭が行われる。銀行は地上げ屋を使い270億で地上げし損保へ370億で転売した。

そこには漆原や猿渡など政治家や銀行家が蠢いていた。

巨悪のみが、手を汚さず高らかに笑い、それを見る亮子たちマルサの面々は地団太を踏ぬのであった。

解説/ここが見どころ!

俺たちがやらなければ、日本はアジアで遅れをとる

鬼沢鉄平のふんする三國廉太郎の善と悪の演技が凄まじい。

公開を前後する時期は、日本はまさにバブルの絶頂期。

映画の中にも、世界に3つしかない水晶玉の話で出てくるが、当時は、日本の大手デベロッパーがアメリカの象徴でもあるロックフェラーセンターの買収が起こり、成金的なジャパンマネーはニューヨーク市民に大きな反感を買った。当然、国内でも土地は異常に高騰し記憶に新しい闇紳士や地上げを始めゴルフ会員権や法外な金額の絵画など不正な取引の事案も多くあった。オウム真理教の活発な活動もこの時期である。

鬼沢鉄平が言う「日本人は全部、“覗き魔”であり“村人”であり“下衆”である」あるいは「金は生き物、子ども、未来は、金とともに育つ。金とともにある時に、私は不老不死である」などのセルフは、今でこそ想像しにくいが、当時の肌感覚だろう。

ほんとうの悪は誰だ、表には出てこない巨悪は眠らない

同様に、マルサで取り調べを受ける鬼沢鉄平が言う「東京を金融センターにするために、日本のために、やっている。東京が香港に負けてもいいのか」や「政府や大企業のお偉いさんが自分の手を汚すか、汚すわけがないだろう」のセルフも印象的である。

同時に、オープニングシーンのカニを貪る大物たちのシーンは「食欲」「性欲」「金銭欲」のどうしようもない人間以下の、あるいは人間ゆえの汚さを象徴している。

花村が猿渡を落とす時に言う「支援者が政治を食い物にしている」や「日本の政治は金がかかりすぎる」などのセリフもまさにムラ社会あるいは民主主義の宿命かもしれない。

違法な行為は当然ながら、法律で取り締まられる必要はあるが、人間社会の不条理は、善悪という一面的な答えではなく、つなぎ目が良く見えない。巧言令色は、人々には見抜かれている。この映画はエンターティメントして誇張はあるが、ある種の逃れられない真実でもある。

伊丹十三監督
映画『マルサの女2』1988年公開の日本映画
1989年第12回日本アカデミー大賞において最優秀編集賞
昭和の名優たちが揃うが、やはり三國廉太郎の悪を正当化する演技は圧巻。

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