映画『レオン』|孤独な男と可憐な少女、最強の殺し屋コンビ。

ニューヨークで孤独に生きる殺し屋レオンと、幼い弟を殺された可憐な少女マチルダ。二人は組んで復讐に向かう。暗く悲しいレオンの運命と、レオンに恋するマチルダの瞳。ジャン・レノの哀愁とナタリー・ポートマンの眩しさ。美しく悲しい大人と少女の純愛物語。

解説

大人になれないレオンと、早熟なマチルダゆえの純愛物語。

リュック・ベンソンの代表作品『レオン』

フランスとアメリカの合作映画で、主演のジャン・レノはフランスの俳優。ナタリー・ポートマンはイスラエル出身の女優。どこにもイタリア色はないのに、日本の某大手出版社は同名「LEON」という伊達なちょいわるオヤジの男性向けファッション雑誌を今も発行している。やれやれである。

映画の話に戻そう。この映画は、特に難しい主題や筋書きがある訳ではない。では何故これほど人気を博したのか、そしてどこを楽しむのかをあらすじを追って解説してみたい。

孤独で冷酷な殺し屋レオンと複雑な家庭の不遇な12歳の美少女マチルダが、コンビを組み、弟の仇を討ちに行く物語。

その仇敵は、悪徳麻薬取締官スタンフィールド、刑事でありながら麻薬密売組織の裏のボスで、薬にラリッた感じの怪演が不気味で凄まじい。

この映画は、やはり大人のレオンと子供のマチルダの凸凹の純愛物語として見るのだろう。その対極にスタンフィールドの狂気を設定することで緊張感を与え緩急をつける。

これはマチルダという12歳の精神的に大人・・・・・の少女と、過去の思い出から恋することを諦めたレオンの純愛の物語である。

純愛だから大きな年齢差を乗り越えられる。そして純愛を進化させていくために、肉体関係ではなく、二人の語らいや行動の応酬により成就されていく。

それは、お互いの孤独を埋める補完関係である。そこがマチルダとレオンの二人のコミカルなシーンとスタンフォードの異常なまでの倒錯な世界の対比で描かれる。

イタリア系移民の殺し屋のレオンは、仕事を終え、いつもこの部屋に戻ってくる。銃を手入れし、黙々と体を鍛える。朝になれば観葉植物を窓際にかざし、ミルクが好物で、たまに映画館にいく。

この描写で、レオンという男が、禁欲なカソリックであり、酒をたしなまず、人との交際もなく、ストイックな生活を送っていることを思わせる。

レオンの心には、19歳の時、貧しさゆえに引き裂かれた純粋な愛と、その報復による殺人で、暗い過去があり社会に適応できず、街にも出ず、人を恋することもなく殺しのプロになっていく。

辿り着いたニューヨークのリトルイタリーで、自分を育ててくれたトニーへの恩義がある。

一方のマチルダも、ゴロツキの父と継母、意地悪な義姉の家族のなかで、常に虐待され殴られ、心身が傷つき不登校になる12歳の少女、唯一の愛情を抱いた弟を殺されて復讐を誓う。

この大人と子供の二人の関係が、孤独から共同生活を経て愛情という感情に昇華される。シリアスに描くと当然、不自然なので、コミカルにドタバタで展開するのが楽しい。

観客の目は、当時13歳のナタリー・ポートマンの大人びた子供の演技に見入る。

殺し屋のくせに、仇討ちを引き受けてくれないレオン。共に手を組みたいというマチルダにレオンは呆れる。それでもマチルダは「ボニーとクライドもコンビだ」と説得する。

「きみはまだ子供だからとても殺し屋にはなれない。」とレオンは言う。するとマチルダは突然、窓の外向かって銃を乱射する。「これでも?」と。レオンは根負けする。

黒のニット帽とオーバルのサングラスとコート姿のレオンとペアを組むことになった殺し屋マチルダがアップダウンのある坂に立つシーンは印象的である。

手にするレオンの大切にする観葉植物とマチルダの大切にするぬいぐるみの取り合わせが、何とも極端な身長差の大人と子供の殺し屋のコンビを象徴する。

共同生活が始まる。レオンとマチルダ、二人の殺しのチームが動き出す。

レオンは、観葉植物を最愛の友だという。「無口で、自分と同じように根が無いから。」マチルダは「大地に植えれば根が張る」という。レオンはマチルダへの気持ちが芽生えてくる。それはレオンが無くしていた人間らしい心でもあった。

思考力と記憶力のための「最高のゲーム」をやろうと提案する。それは人真似当てのゲーム。無邪気にマドンナやモンロー、チャップリン、ジーンケリーを演じるマチルダ。孤独で乾いたレオンの心を潤すような可愛らしい演技。

マチルダがベッドに飛び込みながら「レオン、あなたに恋したみたい」と語り、レオンが思わずミルクを吹き出すシーンは、大人じみた少女のマチルダと不器用なレオンとのアンバランスな関係がうまく描かれている。

暗く悲しいレオンの運命と、レオンに恋するマチルダの瞳。

マチルダもまた、レオンとの生活で孤独から抜け出すことができた。

弟を殺した仇敵は、麻薬取締局の悪徳刑事で異常で冷酷なスタンフォードだと判る。

復讐を諦めさせようとするレオンにマチルダは「愛か死かどちらかしかない」といい、おもむろに拳銃に弾を込め回転させる。ロシアンルーレットの賭けにでる。

レオンとマチルダは二人で組む。レオンはトニーにマチルダを紹介し、コンビでやっていくことを伝える。そしてトニーに自分に何かあれば預けている金をマチルダに渡してほしいという。レオンは、文字が読めず金の管理はトニーに任せている。

こうしてレオンは「次の仕事は一人でしたい」と言う。そしてマチルダに「少し大人になってほしい」と言うと、マチルダは「自分はもう大人で、後は年を取るだけだ」と言う。

レオンは「歳だけはとったがこれから大人になる」と言って出ていった。

ここでも少女だが大人の精神を持つマチルダと、大人だが禁欲で世間に毒しておらず大人になりきれていない無垢なレオンを確認する掛け合いとなっている。

赤いニット帽とオーバルのサングラス姿のマチルダ。自分が失敗したらこの2万ドルで殺してほしいとレオンには書置きを残しておいた。

一度は捕まり、レオンに救出されるマチルダだが、再び捉えられる。

ノックの合図を変えて伝えることでレオンに危機を知らせる。反撃するレオンだが、スタンフィールドの総動員の指示に、NY警察が多数集まり次々に突入してくる。

激しい銃撃戦のなかレオンはマチルダを通気口から脱出させる。死を覚悟しているレオンに、「ひとりでは行けない」と断るマチルダに、レオンは「生きる望みを与えてくれた、大地に根を張って暮らしたい、決して独りにはしない」という。そしてトニーの店で1時間後に会おうと約束する。

初めてレオンは「愛しているマチルダ」と告げる。マチルダも「私もよレオン」と答える。

烈しい銃撃戦の末、レオンは、体に巻き付けた爆弾でスタンフィールドとともに自爆する。レオンは約束通りマチルダの復讐を叶えた。

トニーのところで待つマチルダはレオンが死んだことを知らされる。レオンが預けたお金は、引き続きトニーが預かり小遣いを渡すと約束する。

不登校だったマチルダは学校に戻り、レオンの大切にした観葉植物を校庭の庭に植える。そして彼女は「もう安心よ、レオン」と、そう言って物語は閉じられる・

あどけなさやしたたかさ、繊細さや強さ、憂いやはじける笑顔。眩しいほどの強い眼のチカラ、この若く幼く素晴らしい才能の女優の魅力を余すところなくリュック・ベンソン監督は引き出している。当時13歳のナタリー・ポートマンのデビュー作。

レオンとマチルダの年齢差で「ロリコン」を語ることはできるが、寧ろ、殺しは一流でも生きるのが下手な世間知らずの大人になれないレオンと、虐待を受けすでに精神が成長しているマチルダとの不思議な相互依存の人間関係で見る。

悲しい眼で次々に殺しをおこなうレオンと、レオンといることで眩しい輝きを取り戻すマチルダ。

どこか生きるのが下手な寡黙なレオンと、背伸びをして大人を装うマチルダ。やがて二人に愛情が芽生える。どこかアンバランスで傷つきやすい純愛の物語。

全編を流れるエリック・セラの音楽と、エンディングのポリスの歌がせつない。