映画『キングオブコメディ』あらすじと解説/ここが見どころ!

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概要>一夜だけでもコメディ王になる。妄想癖の強いルパートが計画したテレビショーの出演。幻想と現実の境が分からないサイコパスの精神病理をロバート・デ・ニーロが淡々と不気味な演技で迫る、ニューヨーク派のスコセッシ監督が贈る孤独な悲喜劇。

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登場人物

ルパート・パプキン(ロバート・デ・ニーロ)
コメディアン志望の34歳の男、妄想癖が強く、有名なジェリーを師事する。
ジェリー・ラングフォード(ジェリー・ルイス)
有名な売れっ子コメディアンで、自らのテレビ―ショーを持っている。
マーシャ・サンドラ(バーン・ハート)
ジェリーの狂信的なストーカーで、ルパートとは知り合いの関係。
リタ・キーン(ダイアン・アボット)
ルパートの憧れの女性で高校時代の同級生、15年ぶりに再会する。
キャシー・ラング(シェリー・ハック)
プロデューサーの助手、しつこいルパートに対応する。
バート・トーマス(フレデリック・デ・コルドヴァ)
ジェリー・ラングフォードショーの番組プロデューサー。

あらすじ(ネタバレあり)

コメディアンを目指すルパートは有名な売れっ子ジェリーに近づく。

有名なコメディアン、ジェリー・ラングフォードは番組終了後の楽屋口で、たくさんのファンにもみくちゃにされる。やっとの思いで車に乗り込むと、狂信的なファンのマーシャが車内に待ち構え、抱きつく。

ジェリーの護衛のふりをするルパートは、ジェリーを守りマーシャを車から追い出し、ジェリーが乗るのに合わせて、自分も同乗する。

怪我をしたルパートにジェリーは自分の姓名のイニシャル入りのハンカチを差し出す。ジェリーを師事しコメディアンを目指すルパートは、予定通り自身の売り込みを始める。

自分の才能を熱弁するルパートに、ジェリーは「きみは才能がある、事務所に連絡してくれ、キャシーに時間をアレンジさせる」と体よく社交辞令を言って別れる。ルパートは認められたと有頂天になる。

妄想癖の強いルパートは、“ジェリーが、自身の才能を高く評価しており、学びたいので共に昼食を一緒したい”と言われていることを想像し、妄想の中で、ルパートはジェリーと会話を弾ませている。
ジェリーから「6週間、番組を代わってくれ」と懇願される。

このようなルパートの深夜の一人芝居に、母親は、いつものようにルパートをたしなめる。

才能が認められ、憧れのリタとも結婚しジェリーの別荘に招かれる。

ある日、ルパートは高校時代から憧れていたリタの働くバーを訪れ、当時を懐かしむ話をした後に、レストランに誘う。食事をしながらルパートは、コレクションしている有名スターたちのサインブックをリタに見せながら、最初のページにある自筆のサインをリタに贈る。

自分は、ジェリーの後押しで新しい“コメディの王”になるのだと語る。そして、やがて“ルパート・パプキンショー”を全国ネットの番組に持つという。ルパートはリタを愛していると言い、週末にはジェリーの別荘へ一緒に行こうと誘う。

ルパートは家に帰ると、そこにテレビのインタビューセットをつくっていて、ライザミネリとジェリーの等身大のパネルをつくり、中央に座ってジョークを飛ばして一人芝居をしている。

その後、ルパートはジェリーの事務所に何度となく電話するが繋いでもらえない。しびれを切らして、直接、事務所を訪問する。

プロデューサーのバートの助手キャシーが応対する。ルパートは、デモテープを持参すると約束する。

事務所前にはマーシャが待ち受けており、ジェリーに手紙を渡してほしいという。

狂信的なマーシャと妄想癖のルパートは、目的は異なるが、ジェリーを熱狂的に追いかける異常な病理をもつ二人だった。

ルパートは、自宅でデモテープの制作に取り組む。“新しいコメディ王”として、観客を笑わせる。
ルパードは、観客の写真を壁いっぱいに拡大して観客席に見立て、自分のコメディを披露している。

ジェリーへの面会を拒絶しているキャシーは、ルパードを何とか無難にあしらい、作成したデモテープも代わりに預かる。

ルパートの妄想はどこまでも続く。

それは“ジェリーがルパードの才能に驚き、その秘密を勉強させてもらうために週末に別荘に招く”というもので、ルパートは女性を同伴することも妄想の中で伝えている。

ルパートはキャシーとの約束の時間にジェリーのオフィスを訪問する。

受付でつないでもらうが、この一瞬の待ち時間でも妄想は膨らんでいく。

その内容は、“テレビショーに出演した新しいコメディ王のルパートは、高校の恩師と再会し、さらに、番組内でリタとサプライズの結婚式をあげる。そして、学生のころの彼の才能を見抜けなかった校長が、ルパートに謝りながら二人を祝福するというもの”

ルパードの妄想は、とどまるところを知らずその自己愛は、ますます自己肥大していった。

ジェリーの別荘にリタと訪れるが、追い出されて恨みを抱く。

デモテープの結果を、キャシーはルパートの自尊心を傷つけないように話す。

いくつかの高評価を織り交ぜながらもテレビ出演などはありえず、もっと現場を踏んで実力を磨くようにアドバイスする。ルパートはキャシーの意見には満足できず、直接、ジェリーと会うことを望み抵抗するが、警備員につまみ出されてしまう。

外ではマーシャがいて、ジェリーは間違いなくオフィスにいると言われたことで、再度、侵入し、再び警備員に追い出され、次回は警察を呼ぶと釘をさされる。

妄想の中で、“別荘に招待された”ルパートは、リタを同伴してジェリーの別荘を訪れる。

使用人の制止を降りきり中に入り、招待客だと語り部屋の調度など観察する。

不審に思うリタだが、ルパートはお構いなし。使用人からの連絡を受けてゴルフから戻ったジェリーは、嫌悪する。ルパートは「テープを聞いてほしい」とくいさがる。

激昂したジェリーは、出会った日に「連絡しろ」と言ったのは、追い払う口実だと言い放つ。ルパートは「有名人の本性を知った」「もう誰も頼らない」と言い残して去っていった。

裏切られたルパートはジェリーを誘拐し、代わりにテレビに出る。

ルパートはマーシャと組んで、ジェリーを誘拐し監禁する。

ルパードの狙いは、ジェリーがいないテレビショーに自身が代役で出演する事だった。それも期待の新星とのふれこみで世間の注目と喝采を集めたかった。

マーシャの狙いは、ジェリーと二人きりになることで語らい甘い時間を過ごすことだった。

ふたりの利害は一致していた。道を歩くジェリーを車の中に引き込みマーシャの部屋に監禁する。

ルパードは、ジェリーにプロデューサーのバートに電話させ、今夜の番組のゲストはルパードにするように指示させる。

ルパートは、ジェリーが約束を守らず、テープを聞かず、自尊心を傷つけられたことを恨んだ。
ジェリーは冷静を装いルパートに謝罪し、このことは告訴しないと約束する。

しかしルパートは、ジェリーをテープで何重にも縛り付け身動きできないようにして、マーシャを監視につけて、自身はバートに電話で要求を話し収録撮影現場に向かう。

バートは、要求を受け入れ、7時に番組を録画し11時半の放送までにジェリーを救出するようにした。

スタジオには、すでにFBIもニューヨーク市警も待機していた。中に入ったルパートは、取り調べを受け、自分が誘拐の犯人であることを認める。しかし、ジュリーの居場所は明かさず、収録は予定通りに行われる。

マーシャはジェリーに狂気を漂わせながら愛を告白し、下着姿になりせまっていく。ジェリーは、マーシャに縛り付けられたテープを切ることを要求し、マーシャはそれに応え、その隙にジェリーは振り切って外へ脱出する。

一夜限りの新しいコメディ王が誕生し、ルパートは満足して捕まった。

ルパートは放送が終わったら、ジェリーの居場所を教え解放するとFBIに約束する。

収録を終えたルパートは、FBIを帯同してリタの酒場へ向かう。

11:30にジェリーのショーが始まる。そこには代役としてルパートの軽妙なコメディが繰り広げられていた。FBIはリタに「友達か」と訊ねる、リタは「迷惑な友達よ」と答える。

ルパートは、自分が温めていたこの日のためのネタを絶妙の喋りで披露する。観衆は、新しいコメディ王の誕生を支持し、大いに沸き立つ。

自分の貧しい生まれや育った環境をネタに揚々と話すルパート。そして、ジェリーがこの場にいないのは自分が縛っているからだと話し、ネタとして観客の爆笑を買う。

そして“ドン底で終わるより一夜の王になりたい”と話す。ルパートは満足し、やがて収監される。

テレビショーを8700万人の人が見で喝采を送った。誘拐犯として懲役6年の判決が言い渡され、収監が決まったルパードだが、懲役中に出版された自伝は大ヒット。2年9カ月目で仮出所したルパードには、数百人のファンが群がり、37歳の彼を迎えた。

服役中に芸を磨いたルパートは芸能界に復帰、再びテレビショーに出演する。

“キングオブコメディ”のルパートは大満悦だった。

解説/ここが見どころ!

●売れない芸人の犯罪、その妄想と現実、そして結末の行方。

コメディアン志望のルパート・パプキンの、スターになりたいと強く願う感情は、最初は有名なコメディアンのジェリー・ラングフォードへの師事や猛烈なアプローチだったが、自身のデモテープが無視されたあたりから、その妄想は強くなり、エスカレートした結果、ジェリーを誘拐し、彼のショーの代役をつとめ新しいコメディ王になるという暴挙に出る。

そのために彼は、自宅でテレビショーのセットをつくりインタビューに軽妙に応えてみたり、大観衆にみたてた大きなパネルに向かって自身のコメディのネタを披露したり、自分が新コメディ王との妄想が日々、膨らんでいきます。

それは病的な妄想癖ですが、自己を演ずるという意味では、アメリカ自体が持っている陶酔や熱狂が基底にあるように思われます。

すでに容疑者としてFBIやニューヨーク市警の見守る中で、ジェリーの代役として紹介された新人コメディアンのルパートは、絶妙の話と誘拐の事実までネタにして聴衆とテレビの前の人々を沸かします。

そして収監され、その後、出所した後もルパードは本を出版し、再度、テレビのショーに現れます。

映画冒頭から、現実と妄想が入り交じり見ている方を不思議な気分にさせる。相棒となる狂気じみた女性ストーカーとパートナーを組み、代役でジェリーの番組に出演し成功を収め、そして獄中、出所後も活躍するという筋が、これまた現実か妄想かも分からずおもしろい。

興味深い点は、あのデモテープの中身が、番組の代役で披露したネタと同じだとすれば、まさに誘拐を予言したブラック。ルパートのドラマツルギーをして“キングオブコメディ”と評することができる。

“ドン底で終わるより一夜の王になりたい”の意味は、夢見てニューヨークに住む人々には深く届く。

●サイコパスな男とストーカーな女の極限状態を描くスコセッシ監督。

犯罪まで行きつくサイコパスを演じたロバート・デ・ニーロ、そもそもコメディアンの生業自体がペルソナを被る職業だが、平静を失わず、ユーモアを交えながら会話をしていく、ただし見ている方は、いつ爆発してキレるのだろうと息を飲む。

その意味では売春宿の惨劇に至った“タクシードライバーのトラヴィス”とは対照的だ。ただしトラヴィスがベトナム帰還兵で不眠症であるのに対して、ルパートは、妄想癖が強く、終始、異常な状態である。
スコセッシ監督は「トラヴィスもルパートも社会から孤立しているが、ルパートの方が危険」と言う。

マーシャを演じたサンドラ・バーンハードも犯罪まで行きつく精神異常なストーカーを演じる。強烈なファン心理、独占欲求が昂じて関係まで求めるような承認欲求。豪華な暮らしをしていて、精神科医にかかっている。彼女もサイコパスであるが、スターとファンの数の比較で言えば絶対数は圧倒的にファンの方が多く、ファンによるスターやアイドルへのストーカー行為がエスカレートし刃物などによる犯罪にまで及ぶことは珍しくない。バーンハードの演技も凄まじい狂気である。

この映画は、チャンスの国やアメリカンドリームと言う美名のもと、チャレンジする人々の陰の部分を題材に屈折した孤独をテーマに「キングオブコメディ」と表題し、狂気のエネルギーを抱擁する街を、ニューヨーク派のマーティンスコセッシ監督が描いている傑作だ。

マーティン・スコセッシ監督
映画『キングオブコメディ』1983年公開のアメリカ映画
1983年カンヌ映画祭 パルムドールノミネート
ゴールデングローブ主演男優賞ノミネート
ロバート・デ・ニーロの抑制したサイコパスな演技が不気味な狂気を醸し出す