映画『ジョーカー』あらすじと解説/ここが見どころ!

解説>感情が昂ぶると突然、笑いだす疾患を持つアーサー。「どんな時でも笑顔で」との母の言葉を胸に持病に苦しみながらも母を看病しコメディアンを目指す男が、嘲られ蔑まれ排除され続ける孤独の中、悪そのものとなっていく。抑圧から解放された狂気が悪のカリスマへと変貌する「ジョーカー誕生」の物語

登場人物

アーサー・フレック/ジョーカー(ホアキン・フェニックス)
感情が昂ぶると突然、笑いだす精神的疾患を抱えながらコメディアンを目指す道化師。
マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)
人気トーク番組“マレー・フランクリン・ショー”の名司会者で、アーサーが憧れている。
ソフィー・デュモンド(ザジー・ビーツ)
アーサーが好意を抱いている、同じアパートの階に住むシングルマザーの黒人の女性。
ペニー・フレック(フランセス・コンロイ)
アーサーの母親、認知症で精神を病んでおり、若き頃、ウェイン家に仕えていた。
トーマス・ウェイン(ブレッド・カレン)
富豪で名士、政界に進出し市長候補としてゴッサムシティを浄化しようとしている。
ギャリティ刑事(ビル・キャンプ)/バーク刑事(シェー・ウィガム)
ゴッサム市警の刑事。地下鉄での証券マン殺人事件でアーサーを疑い捜査をする。
ランドル(グレン・フレシュラー)
アーサーの同僚の道化師で、襲われたアーサーのために護身用にピストルを渡す。
ゲイリー(リー・ギル)
アーサーの同僚の道化師で、小人症で身長をからかわれるがアーサーに優しい。
アルフレッド・ペニーワース(ダグラス・ホッジ)
トーマス・ウェインの執事で、トーマスの息子のブルースをアーサーから守る。
ブルース・ウェイン(ダンテ・ペレイラ=オルソン)
トーマス・ウェインの息子、将来はバットマンとなってジョーカーと対決する。

あらすじ(ネタバレあり)

「この人生以上に、硬貨(高価)な死を望む」それが孤独なアーサーの願い。

10月15日、木曜日、10時30分、気温5.5度。ラジオニュースは次のように伝えます。

<清掃組合のストは18日目となり、普段は閑静なゴッサムシティは毎日1万トンのゴミの山が放置され、悪臭に満ちたスラム街のようです。市全域には非常事態宣言が発動されました。>

ここは派遣で働くピエロたちの事務所。アーサーは鏡に向かいピエロのメイクをしています、両方の指で左右の唇を吊り上げながら、右の目からは涙が頬をつたいます。

仕事は大道芸人、広告看板を掲げて道化をしながら街ゆく人々を客寄せします。

いきなり街の不良少年たちに広告看板を奪われ、取り戻そうと必死で追いかけるアーサーですが、逆に、待ち伏せされ暴行を受け金を奪れて無残に打ちのめされます。

狂っているのは自分なのか?それとも世間なのか?心を痛めるアーサー。

今日は定期的に訪れる市の福祉相談の日です。出来事を報告しカウンセリングを受け、精神安定剤の処方箋をもらいます。日記帳にはネタも綴りますが脳の障害で文字は正しく書くことが出来ません。そこには“この人生以上に硬貨(高価)な死を望む”と誤字で記されたページがありました。

アーサーはこんな悲劇的で無価値な人生を送るよりも、死ぬことに価値を見つけたいと考えています。深い孤独のなかでアーサーは生きています。

帰りのバスのなか、道化の顔の表情で子供をあやしていると、母親から強い口調でかまわないようにたしなめられ毛嫌いされます。アーサーは大声で苦しそうに笑い始めます。薄気味悪く思う母親にアーサーはカードを見せます。

そこには“笑うのは許して、病気です”と書かれています。アーサーは極度の精神的な緊張や恐怖によって、発作的に笑いだしてしまう生まれつきの脳神経の損傷障害を持っています。そんなアーサーを周囲は狂人のように見ています。

「どんな時でも笑顔で」母の言葉を胸に、コメディアンを夢見るアーサー。

アーサーはいつもの長い石段を上りアパートの部屋に辿り着きます。

彼は年老いた母親ペニーの面倒を見ながら二人で生活をしています。アーサーのことを“ハッピー”と呼ぶペニーには、少し認知症の症状があるようです。彼女は30年前にゴッサムシティの名士、トーマス・ウエイン家で働いており、生活の窮状から救済を求める手紙をトーマス宛に書き続けていました。

テレビでは “マレー・フランクリン・ショー!” が始まりました。アーサーはマレーに憧れています。彼の夢は一流のコメディアンになって人々を笑わせることでした。

アーサーはテレビを見ながら妄想します。妄想の中では、ショーの観客席にいる自分をマレーが見つけて話しかけます。母の口癖の“あなたの幸せな笑顔が、人々を楽しませる”という言葉を大切にするアーサーは、マレーにコメディアンとしての才能を見出され脚光を浴びるのでした。

翌日、職場であるピエロの派遣事務所で、アーサーは同僚のランドルから先日の暴漢事件を心配されて、護身用にと拳銃を受取ります。ある日、慰問の仕事で訪れた小児病棟でのピエロのショーの際に、アーサーは子供たちや看護士の目の前でその拳銃を床に落としてしまいます。上司はカンカンになって怒り、拳銃を渡したランドルの嘘話だけを信じ、以前からアーサーの性癖を気持ち悪く思っていたせいで仕事をクビにしてしまいます。

仕事を失い今後の生活と自らの境遇に、アーサーはひどく落ち込んでしまいます。

絶望した気持ちで乗った帰りの地下鉄で、3人の若い会社員の酔客が女性の乗客をからかいます、嫌がる女性に執拗にからむ男たち、救いを求める女性の眼。アーサーは嫌悪と怯懦きょうだ鬱積うっせきした気持ちのなかで抑えきれず持病の笑いが起こります。

5人だけの車輛に、アーサーの笑い声が響き異様な空気になっていきます。

3人の男たちは鉾先をピエロ姿のアーサーに向け、汚い言葉を浴びせ殴る蹴るの暴行をはたらきます。反射的にアーサーは拳銃を弾き2人の男を射殺、ホームに逃げる男も追いかけとどめを射し殺します。

逃げ帰った部屋で、アーサーの身体はゆっくり踊りだし変態します。

アーサーは不思議な高揚感を感じます。そして妄想の中で、好意を抱いていた同じアパートの黒人のシングルマザーのソフィーの部屋を訪れ、強引に接吻します。何かが変わり始めました。

あくる日、アーサーは荷物を片付けに事務所を訪れます。地下鉄での3人の証券マン殺人事件が、ピエロの仮面を被った男の仕業であることがニュースで流れています。アーサーのクビに同情するゲイリーと、かばうことなく保身に走ったランドルを横目に、アーサーは捨てぜりふを残し職場を去ります。

殺害された3人はウェイン社の社員でした。社長のトーマス・ウェインはテレビのインタビューを受け、3人は家族同然だったと偽善者の発言をします。そして事件を貧困層の富裕層への反発の高まりとし、貧困層が殺人者を支持していることに対して憂い、だから自分は市長へ立候補すると正義をかざします。

ピエロの仮面を被った加害者に、仮面なしでは人を殺せない卑怯者で落伍者であると言い放ちます。

やがて市の予算削減で、福祉サービスは閉鎖されます。アーサーはカウンセリングを受けることも薬を受けることもできなくなりました。カウンセラーはあなたのことは市にとってはどうでもいいことなのだと同情してみせます。

それでもアーサーは何故かあの殺人のことを思い浮かべて、自分がこの世に存在する理由を分かり始めたこと、そして世間も気づき始めたことをカウンセラーに告白します。

その夜、アーサーはナイトクラブのコミックショーに登場しコメディを披露します。極度の緊張で、言葉を失い、笑いの発作が止まりません。不気味な印象を残しながら、痛々しくも何とかショーを終えます。ソフィーも観客席にいてアーサーのコメディを聞き、アーサーはスポットライトを浴びて甘美な気持ちに浸ります。

ソフィーと街にでるとダブロイド誌が目に留まり、逃亡中の殺人ピエロが私刑人と書かれているのを見て夢中に誇らしくなります。ソフィーもピエロは街のヒーローと頷きアーサーは無邪気に微笑みます。

アーサーは、自分がこの世の中に存在する価値を発見していきます。

街を走るタクシーの車窓からは、ピエロの仮面を被った孤独な人間がまた一人こちらを向いています。アーサーは自分と同じ仲間がいることを喜んで微笑み返します。

部屋に戻ったアーサーは、母親ペニーの綴ったウェイン宛の手紙を盗み見して愕然とします。手紙にはペニーはウェインの愛人で、アーサーは二人の間にできた子どもで、生活苦から救済を求める内容が綴ってありました。ペニーを問い詰めるアーサーは、彼女からそれが事実であることを聞きます。

アーサーは事実を確かめにウェイン邸を訪れます。偶然、柵越しに息子のブルースと会い、自身の弟にあたることに不思議な感情を抱き、マジックを披露しているところに執事のアレックスが現れます。

来意を伝えるアーサーですが、執事のアレックスにペニーは妄想狂でイカれた女だと告げられ追い返されます。アーサーは自分はウェインの息子だと主張し、執事の首を掴み締めあげ殺意を見せますが、そのまま逃げ去っていきます。

アパートに帰ると入口で救急車のサイレンが唸っています。母親ペニーが病院に運ばれようとしていました。ゴッサム市警のギャリティとバークの二人の刑事が病院を訪れ、アーサーにピエロ殺人について質問をします。ペニーはアーサーの留守中に二人の刑事に “ピエロ地下鉄殺し” の質問にあい、過呼吸になってしまい倒れたとのことでした。二人の刑事はアーサーの職場の上司から笑いだす癖や拳銃所持などの情報を聞きつけ疑っています。

ペニーの看病をするアーサー、そしてアーサーを優しくいたわるソフィー。病室のテレビに映る “マレー・フランクリン・ショー” では、マレーがアーサーのクラブでのコミックショーの反響を受け、ショーに招くという趣旨のコメントを聞き驚きます。最初は喜んでいましたが、実は、彼のすべっているコメディをさらしものにするためだと知って、アーサーは次第にマレーへの憎しみが湧いてきます。

「金持ちを殺せば、新たな社会ブームなのか?」とテレビはヘッドラインで告げ、人々は怒りと不満に満ち、ピエロの扮装をして通りを埋め尽くし上級階級へ抗議デモを行っています。

市民をピエロ呼ばわりしたウェインも、抗議の対象となり明日の慈善イベントも狙われています。ウェインの弁明は「彼らを貧困から救いたい、私こそが彼らの唯一の希望なのだ、だから市長選に出馬をした」と耳触りの良い偽善を唱えます。

“我々はピエロだ” “金持ちを殺せ” “死ね、ウェイン” “ウェインを倒せ” “ピエロを市長に” 人々は狂気と化し抗議デモは止みません。

塞いでいたアーサーは群衆の中に繰り出します。アーサーが訪れたのは、チャップリンのモダンタイムズを上映する劇場。鑑賞する裕福な人々の笑いが渦巻くなかにウェイン夫妻を見つけます。ウェインを化粧室に追いかけ、自身が息子であることを認めてもらいたく話しかけ、ただ自分は父親の温もりやハグが欲しいだけなのだと訴えます。

母親ペニーを気違いだというウェインに、アーサーはあの病んだ笑いがこみ上げてきて止まりません。そしてアーサーは気持ちの悪い男として、ウェインに殴打されてしまいます。

絶望のなか部屋に戻ると、ギャリティ刑事からの留守録が執拗にアーサーに迫ってきます。そのとき、“マレー・フランクリン・ショー”から電話が入り、用件はアーサーのライブ映像の反響が多くあり、出演依頼のオファーでした。アーサーはこのオファーを承諾します。

アーサーは全ての真実を知り、絶望を越えて悪の高揚感に満ちていきます。

アーサーは特別に精神を病んだ患者のみを収容するアーカム州立病院を訪れ、ペニーの30年前の記録を確認します。そこには驚くべき事実が記されていました。ペニーは妄想性精神病のひとつである自己愛性パーソナリティ障害で、かつアーサーは養子として迎えたと記されていました。ウェインがアーサーに話したことは真実だったのです。

さらにアーサーをペニーの当時の恋人が暴力を振るい、虐待するところを傍観した罪で収容されたこと。その傍観した理由は“アレックスがいつも笑っていたので”とペニーは抗弁していたのでした。

アーサーが過度なストレスを感じて笑ってしまうのは虐待が原因であったことが分かります。信じていた全てのものを失った絶望のなかで、アーサーは苦痛の底からただただ笑いが止まりません。

アーサーはアパートのエレベーターでソフィーが蟀谷こめかみに銃をあてる幻を見ます。そしてソフィーの部屋に侵入しカウチでうずくまりますが、帰ってきたソフィーから異様な態度を不審がられ諭されながら部屋を出ていきます。

アーサーは気づきます。尾行をした夜にソフィーが部屋にやってきたこと、コメディショーを観に来てくれて一緒に街をデートしたこと、ペニーの看病でソフィーが自身を労わってくれたこと。そのすべては、アーサーの妄想だったのです。

アーサーは病院を訪れます。何がハッピーだ!自分の笑いは病気であり、自分の人生は悲劇ではなく喜劇であることを知ります。アーサーはペニーの顔に枕をあてて、窒息死させます。

マレーの番組出演のオファーを承諾したアーサーは、何度もイメージトレーニングを行います。その目的は番組のなかで自殺をする事でした。

That’s Life これが人生。道化としてのピエロから、ジョーカーへと変身します。

その時、同僚だったランドルとゲイリーがアーサーの母親の死を弔問にやってきます。寧ろ、気分がいいというアーサーは、自分を見捨てたくせに警察への口裏合わせのためだけに来たランドルに、隠し持ったハサミで首を刺し頭を壁に打ちつけて殺してしまいます。しかしゲイリーだけは唯一、優しかった男として見逃してやります。

ダンスを踊り、髪を緑に染めて、顔を白く塗り、ピエロのメイクを完成させ扮装をします。

アーサーは、ジョーカーに変態し、新しい命をえて街に繰り出します。

あのいつも重い足取りで上った長い階段を、今は自信に溢れ、高揚感に満ちた踊りを舞いながら、意気揚々と下りていきます。新たな儀式が始まる予感です。

張り込んでいたギャリティ刑事とバーク刑事の二人に追われますが、道化師の仮面を着けたデモの参加者で溢れる車輛に紛れ込みます。組み合うなかバーグ刑事はピエロの仮面をした人間を誤って撃ってしまいます。乗客たちの攻撃の対象はいっせいに刑事に向かいます。ホームにあふれた暴徒を前にアレックスは小躍りし余裕の顔で立ち去ります。

やがて “マレー・フランクリン・ショー” の控えの楽屋でマレーと対面したアーサーは、番組の下打ち合わせを終えて自分を “ジョーカー”と紹介するように 頼み承諾を得ます。

喜劇か悲劇かは主観が決める、アーサーは悪の喜劇を生きる価値にする。

いよいよ出番となりジョーカーは登場します。マレーからネタを催促され、アーサーはネタ帳を見て話し始めますがうまくいきません。“ノック、ノック”…この日のために練習した話の先は、自分に銃を向けて自殺することでした。

しかしアーサーは考えを変えます。ネタとして、地下鉄で3人の証券マンを殺したことを告白します。そして自分の人生は喜劇だと気づいたことを話します。

ゴッサムの格差を非難し、自分のような社会不適合者は奴隷のように蔑まれる存在でしかなく、善悪や笑いの基準も力のある人間が決めている事。そして憧れていたマレーも、自分を笑いものにするためにここに呼んだことを非難し、喜劇か悲劇かどうか、善悪かどうかは主観であること。どいつもこいつも最低で狂いたくなる、他人の気持ちなど考えないやつばかりだとぶちまけます。

そして心を病んだ孤独な男をあざむくとどうなるか、社会に見捨てられゴミみたいに扱われた男だ!

報いを受けろ、そういって額に銃を撃ち、マレーは即死します。

観客の逃げ惑う悲鳴の中、道化のダンスを踊ろうとすると番組は中断し、やがてアーサーは市警に捉えられてパトカーに乗せられ連行されます。街では人々の略奪と暴動は、さらに激しくなっていきます。ゴッサムの街は、混沌のなか燃えさかります。

連行されるパトカーに暴徒が操る大型トレーラーが衝突します。ピエロたちは負傷したジョーカーを警察の手から救出します。暴徒のひとりのピエロは、慈善イベントから難を逃れようとするウェイン親子の跡をつけ、トーマス・ウェインを射殺し夫人も射殺します。ひとり茫然と佇むブルース。

衝突したパトカーから救出され、ボンネットの上に横たわったアーサーは気がつきます。

口もとに血でグラスゴースマイルを縁取って、不滅のジョーカーが甦りました。

群衆は悪のカリスマの誕生に歓喜の声を上げます。アーサーは、ジョーカーとして完成しました。

一転して、真っ白い精神病棟のカウンセリングルーム。

この真っ白い精神病棟のシーンはアーサーの妄想かもしれない。この<白い壁>は、最初のシーンのアーサーのカウンセリングで時計が11:11と刻んでいる<白い壁>と、ペニーの若い頃のカウンセラーの背景の<白い部屋>と同じであること、さらにアーカイム州立病院の黒人の男の事務員は、精神異常者の病院はここしかないといっているが、その病院の壁は薄い茶色で白ではない。

笑いが止まらないアーサーに、質問をするカウンセラー。“何が、おかしいのか?聞かせてほしい”と問われ、“ジョークを思いついたけれど、きみには理解できないさ”と答えます。

この笑いは、少なくとも今までの緊張の中での発作としての笑いではないことが重要です。アーサーは、自身の苦悩を克服してしまったのです。そしてその笑いは、これからの解放された悪への楽しさ。父を亡くし孤児になったブルースが将来のバットマンとなって、ジョーカーと出会う姿を想像するJOKEを考えつくアーサーなのでしょうか。

そしてシナトラの“That’s Life”を口ずさみます。

血のついた足跡を残し、廊下の突きあたりの窓際で踊ります。そこに病院の職員が追いかけてきます。

悪に解放されたアーサーは、楽しい喜劇に溢れ、もう何の救いも不要なのです。

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