映画『ゴッドファーザーⅢ』あらすじと解説/ここが見どころ!

解説/ここが見どころ!

ファミリーの “血の掟”と、覇権争いをマフィア映画として楽しませてくれますが、基底には『家族の血と名誉』があります。。PARTⅢは、合法的なビジネスへの執念と半生を振り返り苦悩する晩年のマイケルの姿と最愛のメアリーの死、家名と愛の功罪が描かれます。

映画「ゴッド・ファーザー」は、どんなメッセージなのか。

それは『人が愛し、ともに生き、家族をつくる』というシンプルで難しく、多くの人が共有できるテーマです。そのかたちに、「ヴィトーの時代」と「マイケルの時代」そして「ヴィンセントの時代」があり、家族の価値観の違いがあります。

コルレオーネの家族の愛情が、ダンスの中に映し出されていく。

PARTⅠ.Ⅱ.Ⅲを通して、パーティで踊るシーンは愛を象徴します。

父親ヴィトーが娘コニーの結婚披露宴で花嫁の父として踊るシーン、マイケルが恋愛時代のケイと未来を誓い踊るシーン、シチリアのコルレオーネ村で見初みそめ結婚したマイケルとアポロニアが村人に祝福されて踊るシーン、レイク・タホの邸宅でマイケルとケイの夫婦が式典で踊るシーン。

そしてPARTⅢ.で、ヴィトー・コルレオーネ財団の祝賀パーティで、愛娘のメアリーと父親マイケルが満面の笑顔で踊るシーンが感動的です。

そこには幾多の苦難を乗り越えても尚、お互いを信頼し尊敬し愛していこうとする家族の歴史が、かけがえのない大切な記憶として刻まれています。

ファミリーの名誉とともに、家族の幸せを求め続けたマイケル。

三部作の最終章のマイケルは、孤独と病魔の中で家族の関係を修復すべく努力をします。

ケイとの結婚の時に約束した非合法から合法のビジネスへの転換のため、バチカンに財団を通じて貢献し買収で民間企業のインモビリアーレのボードメンバーとなることを模索しますが、イタリアの政治と宗教とマフィアの癒着という複雑な壁に遮られます。

最期は新しい法王の改革の下に勝利を得ますが、しかしその代償はあまりに大きく、最愛の娘メアリーを失ってしまいます。

いつも敵は最愛の人を奪っていきます。マイケルは生涯、安堵は無く忌み恐れられて、最後は孤独に死んでいきます。

それは非情で独善的なマイケルの不幸な最後との見方も充分にできますが、ファミリーの誇り高い血統を守るがゆえの結果でもあります。

それゆえに束の間のケイとの再会でのシチリアの散策や、アンソニーのパレルモでの晴れ舞台、そしてメアリーとのダンスが一瞬の幸せとして至福の時となっているのかもしれません。マイケルは刹那、家族の幸せを味わうことができたのです。

ドンの継承で恋を捨て、暴力を源泉に統治するヴィンセントの時代へ。

ヴィンセントはマイケルの兄ソニーの愛人の子として産まれます。

それはかってのヴィトーとは異なりますが、それでも孤独で不遇な生い立ちです。その背景がヴィンセントに非情さとふてぶてしさを併せ持たせます。親譲りの短気で血の気の多い性格をマイケルは心配します。

しかしヴィンセントはザザを組織の裏切り者と直感し抹殺します。手荒い手法ですが、マフィアの残忍さを持ち得なかったマイケルとは生まれつきの性質が異なります。暴力での統治に絶対の自信をヴィンセントは持っています。

最後の血の粛清の実行は、ヴィンセントです。ドン・アルテベロとドン・ルケージ、カインザック、ギルディ大司教とその手際は鮮やかです。

そしてドンの座につくことの代償としてメアリーを諦め、ヴィンセント・コルネオーネとしてファミリーの三代目の領袖になります。

ヴィンセントも愛するメアリーを守り切れず失ってしまいます。しかし恋を捨てマイケルに代わり新たに組織の名誉を継承するヴィンセントには、悲しみを乗り越える強さすら感じさせます。

PARTⅠ,Ⅱの物語を受けたPARTⅢの最終章のせつないシーンの数々。

PARTⅠ.Ⅱは、ヴィトーとマイケルの青年と壮年の時期であり、生命の活力に溢れています。PARTⅡでは、ファミリーを拡大していく物語と、家族との関係がヴィトーとマイケルでは対照的に描かれます。16年を経て制作されたPARTⅢ、ここに登場するのは老いて苦悩するゴッド・ファーザーのマイケルです。この最終章にこめられたコルレオーネ・ファミリーの壮大な家族の物語を確認しておきます。

マイケルの選択と苦悩について。

PARTⅢの中で、マイケルはケイに向かって「自分は後を継ぐつもりは無かったが、父親の危篤や家族の危機に直面してファミリーのビジネスに入り何とか合法化しようと努力して家族を育て守ってきた」と言います。さらにランベルト枢機卿に懺悔をしトマシーノの棺に「何故、あなたは愛され、自分は恐れられるのか」と苦悩します。

ここに『運命の翻弄』という “そうありたくは無いが、そこに直面したらどういう態度をとることが正しいか” という点で捉えた場合に、マイケルの気持ちを汲み取れます。

しかしマイケルの統治の手法は、マフィアの流儀よりもマイケル自身の怜悧で合理的な判断に基づくものでした。だからマイケルには“自分が恐れられる理由”が解らないのです。

物語を支えるケイの心情について。

ケイは、マイケルがファミリーのビジネスに関与しない前提での付き合いでした。ケイもまたマイケルを愛し、運命に翻弄され結婚をします。それでもマイケルは結婚に際し合法化を約束しています。

しかし寝室を銃撃され子どもが危険にさらされたことで、母親として強い防衛本能が働きます。さらにコニーの夫カルロを殺し、実の兄弟フレドを殺すというい異常な行為が、マイケルを忌み嫌う大きな理由です。

ケイには人形劇で見る “シシリーの名誉” という考え方が理解できません。自由で豊かな国、アメリカに育った彼女には、死の報復は常軌を逸した考え方なのです。ただケイはマイケルが被った苦悩をきっと理解しています。

ゆえに “シシリーの名誉” に固執するマイケルを理解できないのです。ケイは、ファミリーのビジネスに関与する前の優しかったマイケルこそが本当のマイケルだと信じたい思いが、自分に残っていることを知っています。

この物語は、濃淡はあれずっと続くケイのマイケルへの『愛情』に支えられています。

ただ、ケイには『家族の名誉』が理解できないのです。それはシチリアの土着の無法な血のつながりにしか見えないのです。

マイケルとケイ、ヴィンセントとメアリーについて。

ヴィンセントからメアリーを引き離すマイケルは、マフィアのビジネスの行く末を知っています。それはマイケルの人生が証明しています。だから愛するメアリーを巻き添えにできません。だからメアリーを忘れることがヴィンセントがドンになる代償なのです。

ヴィンセントは、きっぱりと「きみとは違う世界で生きる、パパを恨むな」と言います。この哀切は、せつないほどの恋の瞬間であり、別れの瞬間です。それはマイケルにはできなかった覚悟です。

そしてヴィンセントこそが最もドンの資質を持った新しい時代の領袖になります。それはソニー譲りの暴力性とマイケルから学んだ冷徹さです。

ただメアリーが生きていればその後は、どうなったかは分かりません。父に反対されたことを知るメアリーは、きっと「愛し続ける」と言うことでしょう。メアリーは若き頃のケイと同じ引き裂かれる立場で、なぜ添えないかの理由が理解できないのです。

脚本は見事な構造を見せてくれます。マイケルがヴィンセントのような態度であれば、悲劇は起こりませんでした。しかし壮大な人間物語であり悲恋の人生は、マイケルとケイゆえに起こりました。そして新たなドンとなるヴィンセントには、如何なる新しい物語が続くのでしょうか。

アンソニーが父マイケルに捧げる、古くから伝わる歌について。

アンソニーがギターの引き語りで、マイケルが好きだというコルレオーネ村に伝わる古いシチリアの歌をマイケルに捧げます。哀切のメロディのなかに、ドン・トマシーノの顔からカメラは動いてマイケルの顔を捉えます。

それは歴史の中で貧しく虐げられたシチリアの人々、それでも幸せを信じている人々、自分の身代わりなった若く美しいアポロニア、マイケルにはケイには理解できない変えることのできないシシリーの血が流れているのです。

そしてヴィンセントとメアリーをカメラは捉えます。時間の流れがファミリーの物語を継続していき、マイケルの人生を思いめぐらせます。

そして残酷なほどの人生に、愛する人との思い出だけを残して。

家族とコルレオーネ・ファミリーの2つを守ろうとするマイケルは、何とか上に登れば願いが実現すると懸命でしたが、登れば登るほど上はさらに汚いことを知ります。

そして最後には最愛のメアリーを失います。大きな人間愛がテーマのゴッド・ファーザーですが、ハッピーエンドではありません。寧ろマイケルの孤独な死は残酷なほどです。

しかし観客はたくさんの愛の言葉やシーンを受け継いだことでしょう。

胸が切なくなるシーンや、理解はできても認められない気持ち、辛いけれど仕方がない判断。愛はそんな哀しみのなかに生きているのかも知れません。

全編をつつむニーノ・ロータの哀切のメロディは、この上なく美しく、エンディングにかかるマスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』は壮大な人間物語を奏で、そしてエンドロールでの”プロミス・ミー・コール・リメンバー”のメッセージが素晴らしい。

※ゴッドファーザーⅠ.Ⅱ.Ⅲを順番に見る>

映画『ゴッドファーザーⅠ』あらすじと解説/ここが見どころ!
映画『ゴッドファーザーⅡ』あらすじと解説/ここが見どころ!
映画『ゴッドファーザーⅢ』あらすじと解説/ここが見どころ!

フランシス・フォード・コッポラ監督、マリオ・プーゾ原作/脚本
映画「ゴッド・ファーザーPARTⅢ」1990年公開のアメリカ映画
マフィアのファミリーを題材に名誉と絆をテーマに映画史上最高の作品です。