映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』あらすじと解説/ここが見どころ!

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解説>画家の夫アレックスと元教師の妻ルース、仲睦ましい二人が40年暮らす眺めのいい部屋だが、欠点はエレベーターが無い事。愛着のある街で、老いてゆく二人が選んだ決断は。モーガン・フリーマンとダイアン・キートン、静かな大人の演技が優しい。

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登場人物

アレックス・カーヴァ―(モーガン・フリーマン)
70代の夫で、職業は画家。温厚で優しい性格だが、ものごとには慎重派。
ルース・カーヴァ―(ダイアン・キートン)
70代の妻で、もと教師。まっすぐな性格で、決めた事に突き進む。
リリー・ポートマン(シンシア・ニクソン)
ルースの姪で不動産屋、カーヴァー夫婦の部屋を売るために奔走する。
ドローシー(10歳になる老犬)
アレックスとルースが我が子のように可愛がる愛犬。

あらすじ(ネタバレあり)

画家のアレックスは、朝の日課で、愛犬のドローシーと、ブルックリンの街並みを散歩しています。

ブルックリンに来た頃は、友人からは「田舎に引っ越すんだ」と言われましたが、当時、貧乏画家だった
アレックスにとって、お金はないしそれで丁度良かったのです。

40年住み慣れた部屋を、売却しようと考えている。

あれから40年経ち、街は変わりました。おしゃれな人々が闊歩し、銀行マンがスマホ片手に株取引を行い、高価なベビーカーを押す若いお母さんも裕福そうです。オーガニックな店もできた。あとは近代化を象徴するアップルストアだけが無いくらいでした。

妻のルースは、自宅からアレックスに新聞を買うように頼みますが、携帯の操作や若い店員の対応などに馴染めない年になってきたことを、アレックスはしみじみと感じています。

アレックスの部屋は、売却に向けて明日の内覧の準備をしています。

段取りはルースの姪で、やり手の不動産仲介業者のリリーが行っています。

40年住んで、眺めも良く申し分のない部屋ですが、アレックスもルースも老いてきて階段を上がるのが、つらくなってきました。二人が暮らす五階のこのアパートには、エレベーターが無いのです。将来を心配して、ルースはアレックスに、部屋を売却して新しい場所に引っ越そうと話し合っていました。

アレックスは慎重に、ルースは積極的に話をすすめようとする。

この数年で土地は随分と高騰しています、不動産仲介業の姪のリリーは家を売る時のコツを説明します。
物件の価値を出来るだけ高めようとすることが肝心だと言います。

それでも、アレックスは売却にあまり乗る気がしません。ルースは、それでもアレックスの老いを心配して話をすすめていきます。リリーは100万ドルはカタイと豪語します。

アレックスは、街は変わっていっても、一段とこの街への愛着が増しています。

アレックスは、40年前を思い出します。若いアレックスとルースは幸せに満ちて、このブルックリンの街にやってました。その日以来、この部屋の一室はアレックスのアトリエでもありました。

窓からはブルックリン橋が一望できます。

アレックスは、ルースに「やっぱり売るのをやめよう」と言います。ルースは「100万ドルで売ってニューヨークのエレベーター付きのアトリエを探そう」と返します。

40年前にこのアパートに来たときの思い出と、このアパートを出ることの決断の狭間で、アレックスは迷い、ルースは新しい一歩を踏み出そうとしているのでした。

我が子のような愛犬のドローシーが、ヘルニアで手術が必要になる。

散歩から帰るとドローシーの調子がよくありません、急いで二人はマンハッタンの動物病院に連れて行くことにしました。ところが、あいにくタンクローリー車が、ウィリアムズバーグ橋で立ち往生し、大変な渋滞になっています。市長は不要不急な外出を禁止します。やっとの思いでマンハッタンに入ります。

動物病院で見てもらうと“椎間板ヘルニア”の疑いがあると言われました。

CTスキャンの必要があり、費用は1000ドル。ドローシーは10歳。費用が高額なことに、アレックスは逡巡しますが、ルースはドローシーを何としても治したいと言います。

子供が産めないルースにとって、ドローシーは二人の子供同然で、昔、アレックスがルースの退職のお祝いにプレゼントしてくれた、かけがえのない思い出でもありました。

ドローシーの手術の内容を聞き、蘇生処置拒否書も予め渡されます。寿命だとしたら、酷なことはしない方が良いのではないかとアレックスは言います。

手術の成功を信じるルースは、アレックスになぜそんなに心配症かと言い、アレックスは最悪に備え、最上を祈るのだと言います。

テロリスト騒ぎが起こり、不動産価格の急落で売却を急ぐ。

アレックスは、屋上の菜園でトマトの栽培の手入れをしています。

ニュースは同じ情報ばかりだから見ないと言うアレックスに、人はそれを見て安心するというルース。

ウィリアムズバーグ橋のトラブルについて、テロリスの可能性を煽るメディア。容疑者としてパズミールというイスラム人が疑られます。爆弾を所持しているかもしれないとニュースは報じます。

明日の内覧は、橋が通れず中止になればいいのに、とアレックスは思います。

リリーにアトリエをかたづけるように言われたアレックスは、自分の人生を振り返ります。アトリエには、これまで製作した作品があり画業の価値は金に換えられるものではないとしみじみ思います。

100万ドルが、大きな魅力なのは事実です。これから年を取れば階段を昇ることはさらに辛くなります。

動物病院から電話があり、ドローシーは落ちついているので手術に合意するのであれば明日、行うという
報せがありました。費用は1万ドル、成功の確率は6:4。

アレックスは医師に最善を尽くすよう頼みます。ルーシーはアレックスの決断に感謝します。

ドローシーの手術は成功しましたが、まだ予断を許さない状態でした。

いよいよ内覧がはじまり、多くの人々が二人の部屋に訪れます。

最初は、スカイラー夫妻。夫は銀行勤めのようで休みなく携帯で話をしています。リストラの心配でもあるのか、セラピストにメゾネットの部屋からの引っ越しをすすめられている様子。奥さんは部屋も街も気に入ったが、橋の件が心配だと言います。

ニュースは、橋には爆弾はなかったが、なお容疑者が武装の可能性があると報じます。ニュースが人々を煽り、また新たなニュースがつくられていきます。

次のカップルは、盲導犬に訓練をしている女性二人で慌ただしく室内を見て回る。その次は青いペアルックの二人。そして次々に内覧者が訪れて部屋は人でいっぱいになります。

占拠された感じでアレックスは不機嫌、テレビでは相変わらずウィリアムズバーグ橋の実況が続く。

内覧で、親に連れられて来た少女がアレックスに質問します。「なぜ売るの?」

アレックスの頭の中に、40年間の思い出が蘇ってきます。

少女はアレックスのアトリエにあるものを、いろいろと質問していきます。

“ドローシーを描いた絵”“LPをかけるターンテーブル”そして1枚の眼鏡をかけたヌードモデルの油絵”
それはアレックスの妻ルースの若い頃のものでした。

アレックスはモデルのリストからルースを選び、彼女に眼鏡を替えてもらい、そして非常にクールだと言って絵を描き始めます。この絵が若き日のアレックスとルースのきっかけでした。

貧乏なルースは、絵画のヌードモデルとしてアレックスと出会いました。ルースは、なぜ美人のカミールを選ばず自分を選んだのかを尋ねます。

するとアレックスはその理由を答えます「きみは本物だからだ」と。

こうして二人は付き合い始めました、アレックスは出会った日を思い浮かべます。

ニュースには、パミールに人質にされ、レジから金を盗まれた証言する女性が映し出されます。しかしこの女性は、虚言とレジのお金の窃盗で捕まります。 アレックスは、やっぱりなと独り言ちます 。

内覧が終わると、次々にオファーが入り対応に追われます。

ルースはすぐに決めた方が良いのではと急ぎますが、アレックスは競って最高額になるのを待つのが入札だと言います。ここでも、二人をすすめ方に性格の違いが現れます。

盲導犬を連れた2人組の女性から85万ドルでオファーが入りますが、金額が安すぎるとアレックスは乗る気ではありません。次は青のペアルックからのオファー、今度はセラピストが88万ドルでオファーを。

アレックスとルースは慌ただしい中で、 ブルックリン橋を見ながら少しくつろぎます。

動物病院の医者からドローシーが水を飲んだ、順調に経過しているとの連絡を受けます。

その夜、アレックスとルースは、画廊の友人と会い食事をしますが、友人の息子も画廊の経営を行っており、アレックスの人気はもうすでに無くなっていて、肖像画もはやらないと言われてしまいます。

ルースは客の好むものをアレックスが書けばよいのかと皮肉混じりに言いながら、アレックスを勇気づけます。ルースは、どんな時も作品に関してはアレックスの味方です。

ルースがアレックスを愛したのは、まだ時代が難しい時期でした。黒人と白人の結婚が30州で禁止され20州で嫌悪されている時代に、二人は結婚しました。

ルースは、アパートを探すくらい何でもないと強い意思をみせます、アレックスは笑いながらルースを見ています。「なぜ笑っているの」と聞くルースに、「昔、描いたあの眼鏡の娘と同じだ」とアレックスは答えます。年月が経ってもルースのアレックスへの愛情は変わりません。

ルースは昔を思い出します。アレックスとの結婚に、ルースの父親も母親も乗る気ではありませんでした。世間では、まだまだ偏見がある時代でした。

ルースは母親に「家族かアレックスかの選択であれば決まっている」と強い意思で話します。

二人は、ともに愛しながら戦いながら生きてきたのでした。

アレックスとルースは、自分たちの新居も探していきます。

動物病院へドローシーに会いに行くと、だいぶ良くなっていました。ドローシーも二人にあえて大喜び。

アレックスは、いくつかの自分たちの新居の候補物件を見て「我が家ほどの素敵な眺めは無い、だが眺めは見尽くした。“眺め”とは若い人が見るべきものだろう」と思います。

ルースはお気に入りの家を見つけます、アレックスも同意して二人は、オファーを出します。そして93万ドルで落札しました。それでも、やはりアレックスは渋っています。

アレックスとルースの部屋は、盲導犬を連れた二人の女性が訪れ95万円のオファーで最高となります。ところが、さらに青いペアルックが96万円を提示。3組の内覧者、青いペアルック、盲導犬を連れた二人、セラピストがそれぞれにまだ競っていて値が上がっていきます。

動物病院から電話がかかります、ドローシーが歩いた。二人はハイタッチをして喜びます。

アレックスとルースは自分たちの新しい部屋の保証金を持参しますが、今度は、相手の売主が安すぎると
躊躇します、それぞれの不動産の仲介業者で言い争いが始まります。リリーは売主側に保証金を持参してきたのだから法律違反だとせまります。

そこにテレビのニュースは、パミールが警察に捕まるが僕弾は持っていないとのことを報じます。アレックスは、テレビの実況を見ながら「ただの若者じゃないか」と呆れます。

アレックスは売却せず、もう少しここに住もうと考えなおします。

1日中振り回されて、我慢の限界になります。アレックスは落札の権利を放棄します。売主も、テロ騒ぎで価格を下げてまで売りたくないので、お互いの考えが一致します。

ルースはアレックスの独断に怒りますが、アレックスは、テロ騒ぎのニュースと同じように、自分たちが
空騒ぎをしていることに気がつきます。

40年も住んだ愛着のある街を捨て、何故、ここを出て行くのかと思うアレックス。ルースはアレックスの体が心配なんだと言います。

アレックスは100歳まで生きてほしく、そしてルースは傍にいると愛を伝えます。ブルックリンでもモスクワでも二人で一緒に生きていくことを語ります。

ドローシーは無事に回復して、またアレックスと朝の散歩ができるようになりました。

アレックスの住むアパートの階下には、40年前の自分たちと同じような若い夫婦が引越してきて、荷物を仲良く運び入れていました。アレックスの 微笑ましい眼差しが向けられます。

ルースは、アレックスのアトリエの壁をペンキで明るい白に塗り替えました。知らない間にアレックスが、ルースの肖像画を描きはじめているのを見つけます。しみじみとルースはそれを見つめます。

“ローラーコースターのような日々だったが、ぐるぐる廻ってまた元の場所へ戻ってきた。だが僕らは互いに自分を見つめなおせた“ アレックスはそう思いました。

いつか部屋は売るだろうが、それでも今は未だ、このままで生活すると決めました。

大事なことは、大切なものを取り戻せたということでした。

解説/ここが見どころ!

慎重なアレックスと先進的なルース、二人は共に老いていきます。

アレックスとルースは、黒人と白人のカップルの結婚が偏見に満ちていた頃からの仲睦ましい二人です。
頑固に本物を極めようとするアレックスの芸術家の性格と古い常識に捕らわれずに自由を求めるルースのリベラルな考え方の組み合わせでもあります。

そこに老いが訪れ、若い頃は何ともなかったエレベーターの無いアパートの五階の部屋までを、息を切らして上がる日々に、ルースはアレックスの体を心配します。

アレックスにとっては、このブルックリンのアトリエを兼ねた住まいは画家としての人生そのものです。

高齢化率は日本が世界一ですが、アメリカも同様に大きなテーマです。また多民族国家で、映画のように
黒人と白人の問題を経た今でも南米などの有色人種、さらには格差も、現実の大きな問題です。

そんな中で、老夫婦の生活をテーマにした映画です。

こんなふうに最小単位である夫婦が深い絆で結ばれ、お互いが尊重しあい、そして助け合い労わりあいながら老いていく姿こそが、かけがえのない幸せなのではないでしょうか。

40年の歳月を捨てようとしたことで、再確認できた日常の幸せ。

二人の40年は、二人の思いやりや労わりで培った大切な時間です。

この時間の流れこそがほんとうの価値であることを考えさせられます。

〇出会った時、自分をモデルに選んでくれた理由を「きみは本物」だと言ってくれたアレックス。
 自信が無かったルースに大きな勇気を与えてくれたアレックス。

〇芸術で、生活ができるのだろうか、世間の評判に押しつぶされ自信を失い弱気になりそうだった時、
「アレックスの才能」を信じて疑わなかったルース。

〇黒人と白人の結婚に、世の中の視線が厳しい中で、快く賛成してくれない親に向かって「どちらかを
 選ぶならアレックスを選ぶ」とはっきり主張したルース。

〇自分が、子供が出来ない体であることを知ったルースに「すでに大きな子供がいるから、大丈夫だよ」
 といってくれたアレックス。

イスラム系のお騒がせな男が、タンクローリー車を橋に乗り捨てたため、メディアが煽り、人々も騒ぎ立て、警察は道路を封鎖し、不動産価格は急落。そして二人の人生までせかされる。

契約をまとめようと二人を急かす不動産業者のリリー。煽られて売却を急ぐ二人。眺めの良い部屋は、地価が高騰したブルックリンで、売却すれば100万ドルになります。

その内覧会の準備や自分たちの新しい住まいの物件探しの中で、忘れかけていたことが蘇ります。

このアパートへ引っ越した頃の二人の気持ち、絵画を描くというお金では買えないこと、愛犬ドローシーと二人の物語、部屋のひとつひとつの持ち物。 この40年の人生を過ごした定住の場所を変えるかもしれない現実に直面したことで得られた、ほんとうに大切なこと。

一度は部屋の売却を決意したことで、その大切なことがさらに強く確認できました。

リリーの薦めを断り、二人で助け合いながら、今まで大切にしてきたものに囲まれて、可能な限りここで生活を続けようと決意します。

ジル・シメントの原作には、夫婦で過ごした強く優しくかけがえのない時間が流れています。
同世代の人々にとっては、自分史として味わい深いテーマだと思います。

老夫婦の暮らしを演じるモーガン・フリーマンとダイアン・キートンの自然で穏やかな大人の演技が、
きっと好感を持って迎えられることでしょう。

リチャード・ロンクレイ監督
映画『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』2016年公開のアメリカ映画
2014年トロント映画祭プレミア
モーガン・フリーマンとダイアン・レインの静かな大人の演技が魅力のラブコメディ