解説>リチャード・ギアの若き頃の代表作。不遇な青年が士官になるまでの物語。孤独・利己・反抗を克服し、協調・利他・人格をそなえた男になるまでの成長を描く。フォーリーの教練、ポーラの愛情、感動のラストシーンは、まさにオフィサー&ジェントルマンとなっていく。
登場人物
ザック・メイヨ(リチャード・ギア)
荒れた暮らしを抜け出すため、パイロットを目指し海軍士官訓練学校に入学する。
エミール・フォーリー(ルイス・ゴセット・ジュニア)
海軍士官学校で志願生徒たちに、厳しい教練を指導する鬼の教官、位は軍曹。
ポーラ・ポクリフキ(デブラ・ウィンガー)
製紙工場で働く女性。士官との結婚を夢見ている。ザックと付き合い始める。
シド・ウォーリー(デヴィッド・キース)
ザックと同じ志願生。親も兄も士官の血統の優等生だが、ザックと仲がいい。
ケイシー・シーガー(リサ・アイルバッハー)
同じ志願生で、唯一の女性。ザックとシドと仲が良く力を合わせ訓練に耐える。
リネット・ポメロイ(リサ・ブロント)
製紙工場で働く女性。ポーラの友人で、士官との結婚を夢見てシドと付き合う。
バイロン・メイヨ(ロバート・ロッジア)
ザックの父親、海軍の水兵でフィリピンの基地が長く今も荒れた生活をおくる。
あらすじ(ネタバレあり)
その朝、ザックは海軍航空士官訓練学校に入るために荒れた生活の家を出た。12歳のときに母は薬を飲み自殺した、父の不実が理由だったが、幼いザックには何も告げない突然の死だった。仕方なく海軍の兵曹だった父を頼りスービック基地のあるフィリンピンで過ごすが、母を捨てフィリピン娼婦と暮らす父を蔑みながら暗い思春期を過ごした。そして大学を卒業した今、ここシアトルでも父の荒れた暮らしは続いている。ザックは、ここから抜け出すために海軍士官になる道を選んだ。
士官訓練学校では、教官フォーリー軍曹の猛訓練に耐える。
士官候補生は34人、入学初日から教官フォーリーは徹底的に彼らを罵倒し精神を入れ替えさせる。
フィリピンで腕に刺青をいれ、いきがるザック・メイヨに、フォーリーは“マヨネーズ野郎”と侮辱する。
フォーリーは、候補生に忠告する。基地の周辺にはパイロットの妻になろうとせまってくる女どもがいて、子どもつくることで結婚を実現しようとしているから気をつけろと。
そして、いよいよ13週間の過酷な訓練が始まった。
ザックは高い運動能力で訓練を難なくこなしていくが、集団生活での作業をさぼったり、商品を横流しして小金を稼いだり、仲間を助けることもなく利己的で協調性がなくいつも孤独だった。
ザックは孤独で自己中心主義、そんな中ポーラと付き合う。
それでもなぜかザックは、シドとだけはうまがあい友だちになっていく。
6週間経ち、折り返し地点となる。候補生は市民との懇親パーティへの出席が許された。パーティ出席者の中には、士官候補生目当ての女性もいた。
ザックとポーラ、シドとリネット、さっそくカップルが出来上がった。
お互いの性格を分かり合おうとするポーラに対して、ザックは思春期の嫌な思い出から、ポーラに士官候補生目当てかと冷たく応じる。ポーラは、ザックに精神的な心の傷を感じている。
シドは親も兄も軍人で、兄はベトナムで戦死している。その分、弟のシドに家族の期待が高まっている。そのシドの血筋は、リネットにとっては可能性の高い士官候補に映った。
それぞれのカップルは付き合いを始めた。
ザックとシドにとっては訓練期間中の束の間の恋で、ポーラとリネットにとっては士官と結婚して海外で暮らす夢をかなえるチャンスだった。
ザックは、女性不信でいつも孤独でいらついていたが、ポーラの優しく真面目な性格に少しづつ心を打ち解けていく。
シドの友情、ポーラの愛情に包まれて、ザックは少しづつ変っていく。
訓練のプログラムは、さらに過酷なものになっていった。ひとりまたひとりとDOR(希望退学)がでる。過酷な訓練を乗り越えたものだけが士官として認められる。
そんな折りザックは、不正で手に入れた品々を天井裏に隠し持っていたが、見廻りのフォーリーに発見されて、規則を破ったことでDOR(希望退学)を薦められる。
どんなに運動能力が高くても、規則や仲間との協調性が無い自己中心的なザックには、士官になる資質は無いとフォーリーは考えている。
DOR(希望退学)を承諾しないザックに、フォーリーは体力の限界を超える猛特訓を課して、士官を目指すことを諦めさせようとする。フォーリーの凄まじいシゴキが続く。それでも、ザックは地獄のようなシゴキに耐えて、改心することを誓い長い謹慎期間をへて復帰する。
ザックにとって士官になりパイロットになることは、精神的な劣等意識から抜け出す唯一の道であった。
何とか這い上がろうとするザックを、勇気づけ励ましてくれるのは、シドやポーラやリネットだった。ザックは、シドを真の友人として感謝し、ポーラといることが唯一の心の安らぎとなっていた。
大切な友の死と女性への拭えぬ不信に、ザックは絶望する。
ある日、ザックはポーラの家に招かれて家族と共に食事をするが、父親から冷たい視線を向けられる。聞けば、ポーラは母が愛した士官候補生との間に生まれた子で、視線の男は実の父親ではなかった。
ポーラもまた、そんなみじめな今の暮らしから旅立ちたかった。
リネットは、責任感の強いシドに妊娠したことをにおわせ嘘をつき結婚を決断させようとした。死んだ兄の許嫁と卒業後は故郷に戻り結婚を約束しているシドは悩み苦しんだ。
いよいよ最後のサバイバル訓練となった。
シドはリネットの件で混乱し、訓練に脱落してDOR(希望退学)をする。
シドは、親の期待や尊敬する兄の身代わりの結婚ではなく、自らの道を選ぶためDOR(希望退学)して、リネットに婚約指輪を贈り結婚を申し込む。
しかしリネットは士官の妻になることが前提での付き合いであり、結婚はできないと断り子どもの妊娠は間違いだったことを明かす。
そして失意の中、シドは自ら命を絶ってしまった。
大切な友を失い、薄汚い女の魂胆に、ザックは絶望する。
DOR(希望退学)して、フォーリーと闘うザック。そして・・・
ザックは、やり場のない怒りをシドのDOR(希望退学)を受諾したフォーリーにぶつける。
自らもDOR(希望退学)し、フォーリーに暴言を吐き、武闘場での決闘を挑む。肉体をぶつけ痛めあうことでしかザックには方法がなかった。
やがて13週間が終了し卒業を迎え、候補生たちは少尉に昇級する。
軍曹の位のフォーリー教官は、新しい士官たちに敬礼をして卒業を祝う。
大切な友を失ったザックは、苦しみながらも卒業メンバーの中にいた。フォーリーがザックの気持ちを汲んでDOR(希望退学)を受け付けなかったのだ。
「きみのことは忘れない、おかげで卒業が出来た」と感謝の言葉を告げるザック。
「分かっている、早く行け」と応えるフォーリー。
それは、厳しい訓練、仲間、友人を通じて学んだザックの人間としての成長の道だった。そしてザックは、ポーラを迎えに製紙工場を訪れる。働く仲間たちはその光景に驚いた。リネットも喜び称えている。
ザックは、ポーラを抱え上げ旅立つ、それぞれの境遇を越えて二人は結ばれた。
