映画『アフター・アワーズ』あらすじと解説/ここが見どころ!

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概要>マンハッタン、一日の仕事を終えて深夜のカフェで出会った女性、ほんの興味心のつもりが、次々に起こる不思議な因果。ソーホーで体験するついてない男の悪夢のような出来事の連鎖。帰るに帰れない不運な男ポール。ニューヨーク派のスコセッシ監督が贈るブラックユーモア。

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登場人物

ポール・バケット(グリフィン・ダン)
ワープロのプログラマー、独身で女性との出会いのない生活を送る。
マーシー・フランクリン(ロザンナ・アークエット)
カフェで知り合った美しい女性、清楚だがどこか謎めいたかげがある。
キキ・ブリッジ(リンダ・フィオレンティーノ)
マーシーのルームメイトでソーホーに住む石膏細工のアーティスト。
ジュリー(テリー・ガー)
トムの店のウェイトレスで仕事を辞めたい、コピー店でも勤務する。
ゲイル(キャサリン・オハラ)
アイスクリームを自分の所有する営業車で販売している女性。
ペピ(トミー・チョン)
キキの友達で、泥棒。石膏細工はお金を出して買っている。
ニール(チーチ・マリン)
キキの友達で、泥棒。ペピと一緒に夜、盗みを働いている。
ジューン(ヴァーナ・フルーム)
クラブベルリンの地下で石膏細工のアトリエを持つ孤独な女性。
トム(ジョン・ハード)
ダイナーの経営者で短気だが優しい男、マーシーの恋人でもある。
ホルスト(ウィル・パットン)
キキのボーイフレンドでマッチョでパンクな筋骨隆々の男性。

あらすじ(ネタバレあり)

マディソン街に勤める、プログラマーのポールは、今日も仕事を終えて独り住む部屋に戻る。電話の留守録をチェックするが誰からもメッセージはない。

カフェで北回帰線を読んでいると、謎めいた女性マーシーと出会う。

ポールは、カフェでコーヒーを飲みながら、ヘンリーミラーの“北回帰線を読みながらくつろいでいた。

テーブル越しにひとり佇む女性が「その本、好きよ」と声をかける。

ポールは、「ヘンリーミラーは偉大な作家だ」と言う。

すると女性は“これは本ではなく長い侮辱であり、芸術に吐きかけるツバだ、真実や美や神を汚して”と一説を諳んじてみせる。清楚で美しい女性だが、どこか少し謎めいていた。

いい雰囲気になりそうだと思ったポールは、コーヒーを勧めるが、彼女は、ソーホーに住む友達の家に行くという。友達は、石膏細工のアーティストだという。

女性は「石膏の文鎮をつくっている」と言うと、ポールは「買いたいな」と話を合わせる。女性は友達の電話番号と名前を伝える、アーティストの名前は“キキ・ブリッジ”。

ポールは一旦、家に帰ってキキに電話をしてみる。「文鎮の事で電話をしたんだが」と話をする。

キキは友達に電話を変わる、カフェの女性の名前はマーシーと言った、彼女はポールの電話を喜ぶ。

マーシーは「友達とひどい喧嘩をした」という、ポールは「仲直りできるよ」と話す。「ほんとうに、仲直りできると思う」とまた聞かれるので、事情が分からないポールは、「よく分からないけれど」と答える。するとマーシーは「こっちに来ない」と誘う。

時計の針は夜11:32。

「いますぐ」と聞くポーロに、「そうよ」とマーシーは答える。ポールは、住所を聞きだす、名前はマーシー・フランクリン。20ドルを握ってタクシーに乗ってソーホーに向かう。

ひどい雨の中、猛スピードで飛ばすタクシーが左右に揺れる拍子に20ドルが風に飛ぶ。手許に残ったのは、小銭6ドル50セントだった。

キキとマーシーはルームメイト、怪しげなマーシーにポールは部屋を出る。

アパートに着いてブザーを鳴らすと、キキが上からキーを投げる。

部屋は広く、キキは石膏で“ムンクの叫び”を創っていた、マーシーはドラッグストアに買い物に行っているという。キキは、ポールに石膏細工をあなたもやってみたらと進める。

キキは、肩がこるのでマッサージをしてくれと言い、ポールがマッサージをすると、体に傷が少ないのはめずらしく、醜い傷跡がある女もいるという。

キキはそのまま眠ってしまった、そこにマーシーが帰ってきた、マーシーは思わせぶりにシャワーを浴びてくるという、時計は深夜1:40。

何気なくポールはマーシーのバッグの中を覗くと薬袋があり「マーシー・フランクリン第2度火傷」と書かれた薬があった。シャワーから出て、マーシーは火傷の塗り薬をもって部屋に消える。

何やら話す声がポールは聞こえる、マーシーもポールに誰かと話していたかと問う。どちらも話していないと答えるが、誰かが話していた。二人は気分を変えるためにコーヒーを飲みに外に出ることにした。

ポールは、表札の「フランクリン」が誰かをマーシーに質問する。マーシーは、夫で家主と答える。別れた夫の異常な話を聞かされる。時計は深夜2:20。

マーシーの部屋に戻ると、ポールはまた誰かが囁く声が聞こえる。薄気味悪く、危険を感じたポールは、マーシーに辛くあたり混乱してしまい部屋を出ていく。

部屋に戻ってみるとマーシーは睡眠薬自殺、キキはクラブベルリンへ。

外は、まだ雨が降り続いている。

地下鉄に乗ろうとするが、深夜料金で割増しになっていてお金が足らない。

無理矢理に改札を飛び越えて乗ろうとするが守衛に止められる。雨の中、ポールは外へ逆戻りする。

雨宿りに辿り着いたダイナーで、97セントしかなく休ませてもらう。そこにウェイトレスが「助けて!この仕事きらい!」と注文票の裏にメモを残す。

ポールは、マスターのトムに、金が無く家に帰れないことを話すと、トムは、金はあげると親切に言ってくれたが、レジに鍵がかかり開かない。ポールは、トムに頼まれて部屋のキーを取りに行く。信用のための自身のキーを代わりにお店に置いていった。

ポールは、トムの部屋に入り、カギを取り外へ出ると、怪しい男二人がキキの石膏細工を車に乗せようとしていた。ポールは制止して石膏細工を取り戻し、キキの所へ返しに行くと、ホルストというマッチョが出てきた。キキは盗られたのではなくて、友達のニールとペピに売ったのだという。

さらにホルストはポールに、マーシーに失礼なことを言った事を謝れという。

ポールはマーシーの部屋に入り、別れた亭主の不気味な話や火傷のことなどが頭をよぎり、耐えられず、ひどいことを言ったことを詫びたが、マーシーは睡眠薬で自殺していることに気づく。

ポールはキキに伝えようとするが、キキは、ホルストとベルリンクラブに行くとメモが残されていた。

ポールは、警察に電話し、死体があることを告げ、彼女の体を確認したがどこにも火傷の痕は無かった。

ウェイトレスのジュリーに冷たくしたばかりに、仕返しを決意される。

ポールは、トムのカギを持ってダイナーに戻るが、“30分留守にする” との張り紙があり閉まっていた。

途方に暮れていると、ウエイトレスのジュリーと再会する、彼女は店をやめたと喜んでいた。ポールは、ジュリーの家でトムが帰るまで時間をつぶすことになった。

ジュリーの家につくと自身の65年スタイルの髪型の感想を聞き、モンキーズを踊りだす。

ポールはトムに早く鍵を返して帰りたいが、ジュリーはポールの似顔絵を描きはじめ、また自身がコピーショップでバイトをしていると話す。疲れているポールはつれなくジュリーにあたる、ジュリーはヒステリックに怒り出す。ポールは必ず戻ると言ってトムの所に鍵を渡しに行く。

そこにトムが帰ってきたのが見えたので、ポールは店の中に入る。

店に電話がかかり、トムのガールフレンドが死んだという。名前は、マーシーといい、ついさっき睡眠薬で死んだとのこと。ポールは、鍵を交換することも忘れ、ただ茫然とする。

ポールがジュリーのところへ戻ると、ジュリーはプレゼントだと言って、キキが石膏でつくったパンの形をした文鎮を贈る、ポールは混乱して、これを強く手で払って受け取らない。

ポールの疲れと焦燥と苛立ちはピークに達している。

ジュリーは、ひどく傷つき「仕返ししてやる」と言う、ポールは外に出ていく。

ダイナーに行くが、また閉まっていた。ポールはトムの家に行くが、また泥棒と間違えられてしまう。
ポールは、ベルリンクラブに行くことにする。クラブは“モヒカン刈りの夕べ”のイベントが開催されており、危うくポールもモヒカンにされるところを逃れた、そしてもう一度、マーシーの部屋を訪ねてみる。

アイスクリーム売りのゲイルは、ポール探索の自警団の先頭に立つ。

部屋でキキの石膏細工に張り付いた20ドル紙幣をはぎ取り、外でタクシーをつまかえ帰ろうとするが、降りようとする女性客とぶつかりポールは腕に怪我をする。タクシーの運転手は、 行きと同じ男でポールの20ドルをむしり取り去っていった。またもや一文無しになり、落胆する。

女性はゲイルと言った。事情を説明して電話を借りようとする、今日はひどい一夜だったとポールは話す。ゲイルは、アイスクリーム売りで、営業車も持っているという。

ゲイルはとにかく怪我の手当てをさせてくれと言うので、看てもらうと、ポールの体に、キキの石膏細工を手伝ったときの紙粘土がくっついていて、左肩に張付いた新聞記事に“昨夜、マンハッタンのソーホーで、男が、怒った暴徒によってバラバラにされた、被害者の身分は分からない、衣類は裂かれ身分証明書もなく、顔全体が打ちのめされて識別ができない”とあった。ポールは、不吉な記事にぞっとする。

ゲイルは家までポールを送るという、二人で外を歩くと柱にポールの手配ビラが貼ってあり、ゲイルは警報の笛を吹く、自警団がぞくぞくとやってきた。ポールは慌ててそこを逃げ去る。

疲れ切ったポールは、通りを歩く男娼のマークに助けを求め家に立ち寄る。ポールは、警察へ電話するがいたずら電話として相手にされない。

男娼にこれまでの話を説明しながら窓の下を見ると、ジュリーが手配ビラを次々に電信柱に張り歩くのが見える、降りて確認すると、自分の似顔絵と“捕まえろ!”の文字が書いてある。

やっとの思いでポールはトムと再会する、追われているが自分は泥棒ではないと説明をする。トムはキーを取りに行くといって出る。そこに、モヒカンの女がクラブ・ベルリンのビラを配布しポールに渡す。

外に出たトムは自警団に通報し、ゲイルを先頭に自警団がダイナーに入ろうとする。

中年女のジューンがポールを匿い、思いかけずも泥棒に運ばれていく。

クラブベルリンに着いたポール、そこはもう誰もいない。ただ一人、中年女のジューンが飲んでいた。
ポールはジューンに、ただただ話し相手になってほしいと気持ちを吐露しダンスに誘う。

そこに、自警団が押し寄せる。ジューンはポールを地下室に匿う。

ジューンも石膏細工のアーティストで、地下はアトリエになっていた。慌てて彼女の部屋に飛び込んだポールは、石膏の液を頭から被ってしまう。自警団はジューンのいる地下室まで迫ってくる。

ジューンは一計を案じ、ポールを隠すために紙粘土と石膏で人間像を創っていく。やがてポールは目穴だけを残したオブジェになった。

ゲイルたち自警団が乗り込んできたが、すんでのところで助かった。

様子を見に階上にジューンがいった隙に、ニールとペピの泥棒二人組が入ってきて、石膏細工のポールを担いで盗みだしていった。

ニールとペピの車は、石膏細工になったポールを乗せて、早朝のマンハッタンをソーホーからハドソン通り、八番街と走りマディソン街まで来てカーブの勢いで落としてしまい固めた石膏がこなごなに壊れた。

落ちた場所は、ポールのオフィスの前。石膏だらけのポールは、たいへんな一夜を過ごして、早朝に自分のデスクについてパソコンをオンにした。

“おはよう”というメッセージが流れる。新しい一日が始まった。

解説/ここが見どころ!

好奇心で踏み入れたソーホー、奇妙な夜から抜け出せない

タイトルは、アフターアワーズだから“勤務時間後”に起こるお話です。

パソコンのプラグラマーのポールに起こったブラックユーモアたっぷりの悪夢のような出来事。

単調な就業時間を終えてカフェで女性と出会い、そこから夜を通して 因果が重なり次々に起こる不運な出来事。帰りたいけれども、どうしても帰れない、奇妙な夜から抜け出せない。ニューヨーク派のマーティン・スコセッシが贈る洗練されたブラックなコメディ。

舞台はニューヨークのロウアーマンハッタンのソーホー。今では高級ブティックやレストランが居並ぶが、この時代のソーホーは芸術家が住むエリアで、前衛的なアーティストが多いお洒落なスポットでした。倉庫を改造したクラブなどもありました。ただ別の言い方をすれば、家賃が安いというのもアーティストが多く集った理由でアトリエに兼用したりしていました。

ポールがタクシーで乗り着け、踏み入れたのはこのソーホーです。マディソン街とは住人が異なります。

古く残る建築様式(キャスト・アイアン建築)が、夜の光に浮かぶと悪夢の舞台としては最高のダウンタウンの景色でもあります。カフェで出会った女性から、因果が巡って連鎖していく面白さ。

最初に、石膏と粘土の細工で銅像をつくるキキを手伝うところと、最後に、自身が石膏と粘土に包まれる細工になり、夜を徘徊する泥棒のニールとペピや、トムとマーシーの恋人関係。そこに住む個人的あるいは都会の孤独な事情の人々がつくる自警団、ポールとソーホーの人々が集団となって絡まっていきます。

人との出会いは、マーシー→キキ→トム→ジュリー→ゲイル→ジューン。トムのアパートの人々は自警団の主要メンバーで、ニールとペピは泥棒だけど、キキとは友達。石膏の細工だけはお金を払って買っているので執着している。またキキはジュリーも知っている新進の前衛芸術家で彼女はパンの形をした文鎮を持っている。マーシーとトムは恋人同士。

そう考えるとソーホーの人々は皆、繋がってしまい、 その異界へ、ほんのアバンチュールを求め踏み入ったポールに、因果が結び付き、いつまでも帰れないシェッとコースターのような悪夢が連続します。

一夜の冒険が奇想天外な結果に、坩堝と化すニューヨークの真夜中

1985年の作品ゆえ、パソコンのディスプレイの画面なども古めかしい感じですが、時代的には、マンハッタンは、まさに人種のるつぼでエキサイティングな時期です。

ポールの働くマディソンアベニューはリッチな場所だし、ソーホーはクリエティブな場所。

退屈な日常から冒険をしようと思ったポールに起こる奇想天外な出来事。

ある意味、日常の延長で起こるアクシデントは、冒険や体験でもあり、ある種のリスクは含んでいる。
美しく不思議な女性が出会いだったことで、恋人のいない退屈なアフターアワーズを過ごすポールは、
深夜にもかかわらず冒険に臨むことを決意する。

不幸なのは土砂降りの中、猛スピードのタクシーに20ドル札を飛ばされ、ソーホーに着いた時には小銭しかなかったこと。次は地下鉄が深夜料金で割増しになり残金では乗れなかったこと。

これで、自力の帰還の道は断たれてしまいます。

さらに軽い気持ちの女性への興味と、あまり女性との付き合いが無いポールは、その会話が、ぶっきらぼうでうまくいかず、それぞれに出くわす女性たちの逆鱗に触れ、女難として災いの元となっていく。

マーシーは、意味も分からず睡眠薬を多用して自殺してしまい、65年の髪型のジュリーは自尊心を傷つけられ、似顔絵のうまさで、手配ビラをつくり柱に貼られる始末、ゲイルには中途半端な会話に切れられて自警団の先頭に立たれポールは追われてしまう。何とかジューンのアトリエで自身が石膏細工の人間になることで、ペピとニールに盗まれ運ばれて、マディソン街のオフィスのゲートの前で降り落ちる。

うまい具合に登場人物が、それぞれの文脈に役割をもち、づーっと話を飽きさせず、繋がり、振出しに戻る。この退社後の出来事は、24時間、眠らない街マンハッタンの醍醐味でもあります。

流れる音楽も、冒頭のバッハに始まり、最後はモーツアルトで終わりますが、途中に、ブラックミュージックやフォークソング、ポップス、エスニック、ニュークラシックなど種々のジャンルが組み込まれ、終盤の疲れ果てたポールがクラブベルリンで最後のコインを投げ入れ“Is That All There is/Peggy Lee”の語りかけは、音楽すらも一巡りした感じです、まさにメルティングポットなニューヨークの気分を楽しませてくれます。

マーティン・スコセッシ監督、グリフィン・ダン制作・主演
映画『アフター・アワーズ』1985年のアメリカ映画
1985年カンヌ映画祭 パルムドールノミネート、監督賞受賞
ゴールデングローブ主演男優賞ノミネート
スコセッシ監督の珍しいブラックなユーモア・コメディア映画として楽しめます。